新型コロナによるアメリカでの死者数がついに1918年のスペインかぜを超える
2019年末に中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に感染拡大し、記事作成時点でもその勢いはとどまるところを知りません。増え続ける新型コロナウイルスのアメリカにおける死者数が、人類史上最大規模のパンデミックといわれる1918年のスペインかぜの死者数を超えたと報じられています。
Covid overtakes 1918 Spanish flu as deadliest disease in U.S. history
https://www.statnews.com/2021/09/20/covid-19-set-to-overtake-1918-spanish-flu-as-deadliest-disease-in-american-history/
H1N1亜型インフルエンザによるスペインかぜは第一次世界大戦でヨーロッパに渡ったアメリカ軍の兵士から始まったと考えられ、諸説はありますが世界全体で4000万人以上が、アメリカに限定するとおよそ67万5000人が亡くなったといわれています。
人類を幾度となく襲ってきた「パンデミック」の歴史 - GIGAZINE
医療関連のニュースサイトであるSTATによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者・死者トラッカーによれば、記事作成時点でアメリカでの死者数は608日間で67万5975人と、スペインかぜの死者数に並びました。
ただし、1918年当時のアメリカの人口は現在のおよそ3分の1だったとされており、「死亡率」で見るとスペインかぜの方がCOVID-19を上回っているとのこと。また、COVID-19の場合は死者の多くが高齢者であるのに対して、スペインかぜによる死者の平均年齢は28歳とかなり若かったことも異なるポイントです。
一方で、STATは「現代医学は1918年よりもはるかに進んでいます。COVID-19で肺が機能不全となった患者には体外式膜型人工肺(ECMO)を使うことができますが、1918年にはECMOはありませんでした」と述べています。また、アメリカでは2020年末から新型コロナウイルスワクチンの接種が始まっているのも、スペインかぜとは違う状況の1つです。
STATによれば、南北戦争での死者数は2011年の研究で約75万人とされていることから、COVID-19パンデミックが南北戦争に次いでアメリカ史上多くの命が失われた出来事になるだろうとしています。
ミシガン大学公衆衛生学部医学史センターの所長であるハワード・マーケル氏は「COVID-19パンデミックでこれだけ多くの人が犠牲になったのは、アメリカが感染拡大初期に十分に対応できなかったからです」と指摘。国立アレルギー感染症研究所のデビッド・モレンス医師も「パンデミックの初期段階で、アメリカがあまり良い仕事をしなかったことは世界中にも知られていると思います」と、マーケル氏の意見に同意しています。
モレンス氏は「1918年のパンデミックは2年以内でそれほど致命的なものではなくなりました。しかし、このCOVID-19がどうなるのかはわかりません。アメリカにおけるCOVID-19の実際の死者数は、おそらく発表されている死者数よりも多いでしょう」と指摘。一部の研究によれば、COVID-19によるアメリカでの死者数は実際よりも10%ほど多いのではないかと推測されています。
マーケル氏は「本当のことを言うと、私たちが置かれている現在の状況は歴史的に前例がないということです。現在の行動の指針として1918年を参考にするのをやめて、将来の行動の指針として2021年から前向きに考えるべきでしょう」と語りました。
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