「AIが駆け出しの開発者に取って代わることができない3つの理由」をAWSのCEOが説明

近年は生成AIの登場により、「人間の従業員がAIに取って代わられるのではないか」という懸念も強まっています。そんな中、Amazon Web Services(AWS)のマット・ガーマンCEOが、「AIが駆け出しの開発者(ジュニア開発者)に取って代わることができない3つの理由」を説明しています。
AWS CEO Explains 3 Reasons AI Can’t Replace Junior Devs
https://www.finalroundai.com/blog/aws-ceo-ai-cannot-replace-junior-developers

テクノロジー業界では、生成AIが人間の労働者に取って代わるという考えが特に根強くありますが、ガーマン氏は以前から「AIで若手社員を置き換えるのは愚かなことだ」と主張してきました。ガーマン氏は2025年12月に出演したビジネス系メディア・WIREDのポッドキャストでも、AIの導入でコスト削減を狙う企業への警鐘を鳴らしています。
ガーマン氏が主張する「AIがジュニア開発者に取って代わることができない3つの理由」は以下の通り。
◆1:ジュニア開発者はAIツールをよく知っていることが多い
いくつかの企業は若手の従業員を生成AIに置き換えようと試みていますが、ガーマン氏は「私の経験では、最も経験の浅い社員の多くが、実はAIツールの最も経験豊富な人材です。つまり、AIツールを最大限に活用できるのは、実は彼らなのです」と述べています。
若者は新しいテクノロジーとともに育ってきたため、生成AIツールのような最先端のテクノロジーにも素早く適応できます。実際、多くの新卒開発者は在学中やインターンシップ中にAIツールを学んでおり、新しい機能の探求や素早いコードの生成、AIエージェントから最良の結果を引き出すといった作業に慣れているとのこと。
ナレッジコミュニティのStack Overflowが2025年に開発者を対象に行った調査では、キャリア初期にある開発者の55%が「開発プロセスにおいてAIツールを毎日使用している」と報告しており、これは経験豊富な開発者よりも高い割合です。ベテランの開発者は、すでに自身のワークフローを確立していることが多く、生成AIのようなまったく新しいツールを導入するには、若手よりも時間がかかる場合があります。

◆2:ジュニア開発者はコスト削減において重要ではない
どういうわけか、企業はAIに置き換える対象として新入社員や若手を想定しがちですが、これらの若い従業員は人件費も安いためコスト削減効果は高くありません。ガーマン氏は、「彼らは大学を卒業したばかりで、一般的に収入も低いため、通常最もコストが安いのです。そのため、コスト最適化を考えるなら、彼らだけを対象にするべきではありません」と指摘しています。
そのため、企業が利益率の向上を語る際は、ジュニア開発者などの若手社員のみを対象にするのは不合理です。真の最適化とは会社全体を見据えて行うべきものであり、経費を削減できる場所は若手の人件費だけではありません。
アメリカのConference Board(全米産業審議会)による調査では、コスト削減を期待して人員解雇に踏み切った企業の30%で最終的に経費の増加がみられたほか、22%の企業では不適切な解雇が行われ、貴重な人材を失ったり再雇用する事態になったりしているとのことです。

◆3:若手社員の解雇は人材のパイプラインを断ち切ってしまう
ガーマン氏は、「3つ目の問題は、ある時点ですべてが自滅してしまうことです。社内で育成している人材パイプラインがなく、育て上げている若手社員もいない時、企業はしばしばそこが最高のアイデアが生まれる場所だったと気付くのです」と述べています。
たとえばスポーツチームの場合、ベテランばかりを雇用して新人選手をまったく採用しなければ、ベテラン選手の引退後に試合の進め方を理解している選手がいなくなってしまいます。これと同じようなことが会社でも発生するというわけです。また、大学を卒業したばかりの人材を採用することで、最新のトレンドに基づいた斬新なアイデアや革新への意欲がもたらされます。
さらに重要なのは、若手が将来の労働力の基盤になるという点です。会社が若手社員の採用をやめてしまえば、自社で育成する人材のパイプラインが断ち切られ、将来のリーダーを社内から選ぶことができなくなってしまいます。会計事務所のデロイト・トウシュ・トーマツのレポートによると、テクノロジー分野の労働力需要はアメリカ全体の約2倍のペースで増加すると予測されており、若手の育成を怠った企業は将来的に人材不足に直面する可能性があるとのことです。

ガーマン氏はNetflixからアメリカの諜報機関まで、あらゆる企業や機関にクラウドコンピューティングサービスを提供する企業のトップとして、企業がどのようにAIを活用するのかを最前線で見てきました。そして、ガーマン氏は短期的な思考でAIだけに頼り、若手の採用や育成を怠った企業が人材不足に陥る可能性を懸念しています。
確かにAIの進歩は人々の仕事や生活を激変させ、今後数年間は波乱を引き起こす可能性があります。それでもガーマン氏は、「中長期的には、AIによって当初失われるよりも多くの雇用が、確実に創出されると確信しています」と述べました。
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in AI, Posted by log1h_ik
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