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巨額インフラ法案の「仮想通貨取引のブローカー」の範囲を制限する超党派の修正案が否決される


アメリカでは2021年7月から、総額1兆ドル(約110兆円)をインフラの整備や拡充に投じるインフラ投資計画法案の採択に向けた審議が行われています。そんなインフラ法案に記された「暗号資産取引のブローカー」の定義について懸念の声が挙がる中、超党派の上院議員グループが「ブローカー」の範囲を制限する修正案を提出しましたが、議会の全会一致を得られず否決されました。

Bitcoin Lobby Loses: Senate Rejects Revised Crypto Tax Provisions in Infrastructure Bill - Decrypt
https://decrypt.co/78116/bitcoin-lobby-loses-senate-rejects-revised-crypto-tax-provisions-in-infrastructure-bill


Late effort to revamp cryptocurrency rules in infrastructure deal fails in Senate - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/us-policy/2021/08/09/senators-reach-agreement-revamp-cryptocurrency-rules-it-may-prove-too-late-change-bill/

Senate Fails to Amend Crypto Tax Provision in Infrastructure Bill - Blockworks
https://blockworks.co/senate-fails-to-amend-crypto-tax-provision-in-infrastructure-bill/

Crypto compromise amendment blocked in Senate infrastructure vote
https://www.cnbc.com/2021/08/09/senators-make-deal-on-crypto-amendment-treasury-wont-oppose-it.html

アメリカ国内では過去数十年で最大となる投資を行うインフラ法案には、経済基盤強化の一環として暗号資産関連企業からの税金徴収を強化する項目が含まれています。この項目では、暗号資産取引における「ブローカー」が、内国歳入庁に対してユーザーの情報を報告する義務を負うことが定められています。

ところが、暗号資産取引における「ブローカー」の定義が曖昧であるとして、暗号資産業界から批判の声が挙がっていました。そこで民主党のロン・ワイデン上院議員や、共和党のパット・トゥーミー上院議員およびシンシア・ルミス上院議員らの超党派グループは、8月4日にブローカーの定義を制限する修正案を提出しました。新たな修正案では、ブローカーという用語から暗号資産のマイナー、取引に関連するノードやネットワークの管理を行うバリデータ、ソフトウェアおよびハードウェアの開発者、取引に利用されるプロトコルの開発者を除くことが保証されています。

巨額インフラ法案の「暗号資産取引のブローカー」の定義について業界から懸念の声、上院議員らが修正案を提出 - GIGAZINE


一方、ワイデン上院議員らのグループとは別に、民主党のマーク・ウォーナー上院議員やキルステン・シネマ上院議員、共和党のロブ・ポートマン上院議員もブローカーの定義に関する修正案を提出。この修正案は暗号資産のマイナーについての定義に問題があるとして、暗号資産業界から非難されていました。

2つの修正案についての議論は難航していましたが、インフラ法案が通過する直前の8月9日に妥結し、両者が合意した新たな修正案を決定したとの声明を発表しました。新たな修正案では両グループの妥協点として、「対価と引き換えにデジタル資産の取引を定期的に実施している事業体」にのみ、税金に関する報告義務が適用されるとされています。

Toomey, Warner, Lummis, Sinema, Portman Announce Agreement on Digital Asset Reporting Requirements in Infrastructure Bill | United States Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs
https://www.banking.senate.gov/newsroom/minority/toomey-warner-lummis-sinema-portman-announce-agreement-on-digital-asset-reporting-requirements-in-infrastructure-bill

新たな修正案の作成にはアメリカ財務省も協力したとのことで、ジャネット・イエレン財務長官も声明を発表。「ウォーナー上院議員、ポートマン上院議員、シネマ上院議員、トゥーミー上院議員、ルミス上院議員に感謝します。また、ワイデン議長のリーダシップとこれらの重要な問題への関与に感謝します」と述べました。

Statement from Secretary of the Treasury Janet L. Yellen on the Cryptocurrency Compromise | U.S. Department of the Treasury
https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy0317

すでにインフラ法案の審議は8日の夕方に終了していたため、修正案が採用されるには上院の全会一致が必要でした。9日の審議では、共和党のリチャード・シェルビー上院議員が暗号資産の修正案に便乗し、500億ドル(約550億円)の軍事費増大を行う修正案を追加しようとしましたが、これに無所属のバーニー・サンダース上院議員が反対を表明。軍事費に関する修正案を含めずに暗号資産関連の修正案の採決を行ったところ、シェルビー上院議員が反対を表明したため、修正案は否決されました。

なお、シェルビー上院議員は記事作成時点で87歳であり、今の任期が終わると引退するとのことです。


インフラ法案はブローカーの定義に関する修正案を含めないまま、現地時間の10日に上院を通過して下院へと送付される見込みです。暗号資産の政策に関する非営利団体であるCoin Centerジェリー・ブリトー事務局長は上院での審議終了後に、「よいニュースは、私たちがあきらめないということです」とツイート。インフラ法案が下院に送付された後も、再び新しい修正案を盛り込むことを目指すと述べました。

なお、バイデン政権は議論の当初から、税務情報を持っていないマイナーや開発者に規則を適用する意図はなかったとしており、インフラ法案の可決が暗号資産業界にどのような影響を引き起こすのかは不明です。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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