観測史上最大のブラックホールはどれほどの大きさなのか?

光さえも脱出できないほどの強い重力を持ち、直接的な観測すら不可能なブラックホール。これまで人類が観測を行った中で最小・最大のブラックホールは何なのか、そしてそれらはどれほどの大きさなのかを、科学系コンテンツを多数投稿するYouTubeチャンネルの科学系コンテンツを多数投稿するYouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。
The Largest Black Hole in the Universe - Size Comparison - YouTube

古典物理学の観点からは、ブラックホールは周囲の物質を飲み込み続け、質量が無限大に増加していくとされています。

では、ブラックホールはどのように成長し、どれくらい大きく成長するのでしょうか?

最小クラスのブラックホールは、存在するかどうかすらわかりません。

存在するのであれば、それはおそらく宇宙の中で最も古く、ビッグバンの後に生み出された原子よりも古いものだと考えられます。

存在する可能性のある最小のブラックホールは質量は1兆キログラムほどで、大きさは陽子以下。

地球と同じ質量だったとしても、コインより少し大きいほどです。

考えられる最小のブラックホールはそれほど小さなサイズに達しうるため、我々人類はいまだ観測できていないのです。

では、確かに存在が確認されているブラックホールの話に移りましょう。

天体が十分に圧縮され、自身の質量で崩壊するとブラックホールが発生します。元の天体の質量が大きければ大きいほど、ブラックホールも大きくなります。

今日の宇宙においては、中性子星の合体や超新星爆発など、最も苛烈な部類の出来事が発生した場合にのみ恒星ブラックホールという種類のブラックホールが発生しています。

太陽の質量は1.989×10^30kgですが、既知の最も小さい恒星ブラックホールの質量は太陽のおよそ2.7倍、直径は約16kmです。

2番目に小さい恒星ブラックホールは赤色巨星「V723」と連星を成す「ユニコーン」と呼ばれるブラックホール。その直径は太陽の24倍、3000万kmで、幅わずか17.2kmの軌道を周回していると考えられています。

既知の恒星ブラックホールのうち、長らく最も大きいと考えられてきたのがM33 X-7です。このブラックホールは近くの青色巨星を少しずつ飲み込み続けており、ブラックホールの周囲を渦巻く物質が摩擦により高温化し、太陽の50万倍もの明るさの光を放っているとのこと。M33 X-7の質量は太陽のわずか15.65倍、直径は92kmです。

ブラックホールが大きく成長するためには、周囲のたくさんの星を取り込むか、他のブラックホールと合体する必要があります。

ブラックホールの合体を検出するのは非常に困難ですが、検出に成功した事例が存在します。

地球から170億光年離れた銀河で2つの巨大なブラックホール合体し、過去4400年間で天の川銀河の全ての星が発生させた量を上回るエネルギーの重力波を放出。新たな1つの大きなブラックホールを生み出したとみられる重力波イベント「GW190521」が2019年に観測されています。この合体によって生じたブラックホールの質量は太陽の142倍とされています。

ブラックホールはある時期まで、「太陽の150倍まで」という質量のものしか見つかっていませんでした。しかし、突如として「太陽の数百万倍」という超巨大サイズの「超大質量ブラックホール」が見つかるようになります。

宇宙誕生以来、星を取り込んでこれほどまでに大きく成長するだけの時間はなかったはずなので、超大質量ブラックホールは恒星ブラックホールとは異なるプロセスで誕生したと考えられています。

なぜ超大質量ブラックホールが大きくなったかを説明するためには、最大の天体とされる「Quasi-Star」を用います。Quasi-Starが実際に存在したかどうかは分かりませんが、超大質量ブラックホールが生成される過程を説明できるとされています。

Quasi-starは横に並べると太陽を砂粒同然に見せるほどのサイズです。太陽の数千倍の質量にまで成長したQuasi-starでは、形成段階の時点でコアが自重によって崩壊し、超大質量ブラックホールに成り果てたと考えられています。

こうして誕生した超大質量ブラックホールは、太陽よりも重く、地球よりも大きいサイズに達します。

超大質量ブラックホールはほぼ全ての銀河の中心に位置しています。

超大質量ブラックホールの1つが存在するとされるのがいて座A*で、いて座A*に存在する超大質量ブラックホールは太陽の400万倍もの質量を有しますが、直系は太陽のわずか17倍です。

超大質量ブラックホールは銀河の中心に位置していますが、太陽系における太陽のような役割を果たしているのではありません。

太陽は太陽系の全質量の99.86%を占めていますが、超大質量ブラックホールの質量は通常、銀河の全質量の0.001%ほど。銀河は太陽系のように重力により保持されているのではなく、暗黒物質の効果により保持されているとされています。

はくちょう座Aには、太陽の25億倍の質量、直径147億kmの超大質量ブラックホールが存在するとされています。このブラックホールが太陽と置き換わったら、太陽系を丸ごと飲み込んでしまうほどの大きさです。

このブラックホールはあまりにも多くの物質を吸い込んでいるため、噴出される磁気とガスによって形成される電波ローブはおよそ半径50万光年、天の川銀河2.5個分に達するとされています。

もう1つの超大質量ブラックホールは、銀河・M87の中心に存在するもの。太陽の65億倍もの質量を持つこのブラックホールは、初めてその影が写真撮影されたブラックホールでもあります。

なお、これら超大質量ブラックホール(Supermassive black hole)のさらに上をいくブラックホール「Ultramassive black hole」も存在するとされています。

そのうちの1つ「OJ 287」の質量は太陽の約180億倍、その内部に太陽系を3つ並べられるほどの大きさです。

OJ 287よりもさらに巨大なブラックホールが「TON 618」で、なんと太陽の660億倍もの質量で、内部に太陽系を11個並べられるほどの大きさだとされています。

TON 618は地球からはるか遠くに存在するため、100億年前の様子しか観測することができません。観測史上最大のブラックホールですが、宇宙にはもっと大きいものも存在するはずです。

なお、ブラックホールの実際の大きさを観測することはできないため、周囲の物質に対する重力の影響を計算することで導き出されています。今回のエピソードでは、さまざまな論文に基づいて大きさや質量を計算しているとのことです。

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