VTuberはなぜ日本だけではなく海外でも受け入れられつつあるのか?
2Dイラストあるいは3DCGのアバターを使って、ゲーム配信やトーク、歌などさまざまな活動を行うのがVTuber(バーチャルYouTuber)です。YouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット」の累計金額ランキングトップ10のうち、上位7人がVTuberになるなど、日本のみならず海外からもその存在が注目されています。世界のさまざまな話題を扱うニュースサイト・Rest of Worldが、海外におけるVTuberの受容について取り上げています。
Japan’s virtual YouTubers have millions of real subscribers — and make millions of real dollars - Rest of World
https://restofworld.org/2021/vtubers/
Rest of Worldのインタビューに応えたブルガリア生まれのIvan(仮名)氏は、母親の母国である日本に3年前に引っ越してきたとのこと。Ivan氏はYouTuberやTwitchで有名なゲーマーをフォローしていたものの、新型コロナパンデミックの中で「Thirst Traps」や「e-Thots」などにうんざりし、次第にVTuberにはまるようになったとのこと。
「Thirst Traps」とは、下着姿や裸の写真をネット上に公開することで注目を集めてお金稼ぎをしようとするやり方のこと。また、「e-Thots」は「electronic that hoe over theres」の略で、「ネット上にはびこる尻軽女」という意味。YouTubeやTwitchでは、自分の性的魅力をアピールしてお金を集める配信が流行しており、実際にTwitchでは「お風呂やビーチからの水着配信」がカテゴリーに追加されるほど人気があります。
Twitchが「お風呂やビーチからの水着配信」をカテゴリーに追加 - GIGAZINE
Ivan氏は「現実のセクシーな体を持つ女性は、いつもバスタブや小さなプールで裸になって見せびらかし、視聴者に欲情してもらおうとしています。しかし、彼女たちは視聴者のことなどどうでもよくて、お金しか見ていません。一方で2次元キャラの場合は心を傷つけることはありません。私は彼女がどんな顔をしているのか分かりませんし、単にかわいい女の子がかわいい声で歌ったりしゃべったりしているのを見ているだけです」と語っています。
日本の大学で2年間勉強したIvan氏は、日本のVTuberの運営企業のパートタイムスタッフとして働き、今ではVTuberの配信の制作や視聴に忙しい日々を送っているとのこと。Ivan氏は「VTuberの配信は、視聴者の夢を封じ込め、視聴者の希望を裏切ることなく最大限に活用するものだと思います」とコメント。Rest of Worldは、VTuberのほとんどが日本のアイドル文化の延長線上にあると指摘しています。
かわいい見た目、練習、勤勉さ、年長者への敬意、理想的な「清楚」の具現化など、「VTuberの文化は日本のアイドル文化の延長線上にある」とRest of Worldは指摘しています。しかし、VTuberの流行は今や日本だけではなく、海外にも及んでおり、特に東南アジアとラテンアメリカに拡大しつつあるとのこと。
たとえば、YouTubeチャンネル「Dengeki Onegai」はラテンアメリカ圏で活動するVTuberグループ。ゲーム配信をしたりピザを焼いたりトークをしたりと、日本のVTuberとやっていることは同じで、キャラクターの見た目も日本のアニメに近いデザインです。
Tarde Casual en Dengeki 7u7 - YouTube
2021年1月下旬には、世界で最も人気のあるYouTuberであるPewDiePieが、VTuberのようにアニメアバターをかぶって動画を公開し、話題となりました。
I Did A DNA Test... (I Guess Im Cancelled Now) - YouTube
また、Netflixは2021年4月末に「個人的かつ直接的にアニメファンコミュニティの一員になる」と述べ、アニメが好きというNetflix社員が演者を務めるVTuber「N子・メイ・黒野」を登場させました。
Say Hello to N-ko | Netflix Anime - YouTube
Rest of Worldは「VTuberは、そのシンプルさゆえに、視聴者は民族的、感情的、さらには弾力的な人種や性別のアイデンティティをデザインに投影することができます。また、この美的なインタラクティビティをさらに一歩進め、画面の中で、現在進行形でプライバシーを確保しています。今や、「アニメのキャラクターとリアルタイムで対話する」という誰もが抱いた子供の頃の夢をかなえることができるのです」と語り、VTuberは世界共通のニーズにフィットするものだと評価しました。
ただし、VTuberの持つ無邪気さとグローバル化の現実との間で、論争が起きないわけではありません。中国でもVTuberの人気は強くありますが、台湾の問題は非常に根強く、日本のVTuberが台湾の国旗を描いたり台湾の存在に言及したことで、中国の民族主義者から猛抗議が寄せられ、問題となりました。
また、VTuberは確かにアバターがあることで永遠に年を取らないキャラクターとなっていますが、実際にはそれを演じる人間が存在しています。演者が引退してもアバターは残り続けますが、声だけ似ている別の人を入れれば解決する話ではありません。アバターの権利を運営企業が握っていても、ファンから人気のあるコンテンツそのものを提供するのは演者です。
Rest of Worldは日本だけではなく海外からも人気の高かったVTuberの桐生ココが引退したことに触れ、日本だけではなく海外でもさまざまな企業がVTuberを展開しようとしている中で、企業側は演者という人材の流出を意識する必要もあると述べています。
VTuber・桐生ココが2021年7月でのホロライブ「卒業」を発表 - GIGAZINE
Rest of Worldは「VTuberのアバターは比較的簡単で安価に作成と複製ができますが、人間的な才能はファンにとってかけがえのないものになっています」と述べました。
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