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ジェフ・ベゾスがNASAのアルテミス計画で使う有人宇宙船について「Blue Originを採用するなら2200億円の割引を行う」と申し出る


Amazonの創設者であり、宇宙開発企業・Blue Originの創業者でもあるジェフ・ベゾス氏が、アメリカ航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン長官に宛てた公開書簡を送りました。ベゾス氏はこの公開書簡の中で、NASAの月面着陸ミッション「アルテミス計画」で使用する有人着陸システム(HLS)としてBlue Originの開発する宇宙船を採用してくれるなら、20億ドル(約2200億円)分の開発費を自社で負担すると述べています。

Blue Origin | Open Letter to Administrator Nelson
https://blueorigin.com/news-archive/open-letter-to-administrator-nelson

Jeff Bezos offers NASA $2 billion to pick Blue Origin’s lunar lander in last-minute plea - The Verge
https://www.theverge.com/2021/7/26/22594038/jeff-bezos-blue-origin-nasa-lunar-lander-2-billion

NASAはアルテミス計画における月面着陸を担う宇宙船「HLS」の開発費を、Blue Originをはじめとする民間の宇宙開発企業に投資するとし、その候補としてBlue Origin、SpaceXDyneticsという3社を挙げていました。HLSの開発費は3社のうち2社に投資される予定だったのですが、NASAは予算の関係からSpaceXのみに投資すると発表。この発表を受け、Blue OriginとDyneticsは「競争の機会が与えられなかった」として、アメリカ会計検査院に抗議しており、同局による調査が終わるまでNASAとSpaceXのHLSに関する30億ドル(約3300億円)の契約は中断されることとなっています。


ベゾス氏は公開書簡の中でBlue Originが開発するHLSの利点について説明しながら、「これらの利点がBlue OriginのHLSに存在するにもかかわらず、最終的にNASAはそれまで頻繁に述べてきた調達戦略から逸脱した選択を行いました。当初は2つの競合する企業にHLSの開発費用を投資すると述べていたにもかかわらず、NASAは最終的にSpaceXのみに数年にわたり数十億ドル(数千億円)もの開発費を投資するという契約を与えるとしています。この決定は、今後数年間において起こるであろう有意義な宇宙開発競争に終止符を打つこと、さらにはNASAの商業宇宙プログラムのあるべき形を壊すことにもつながります」と述べ、NASAの決定を非難しました。

続けて、「NASAは単一の開発元に投資する代わりに、元の複数企業に投資を行う戦略に戻る必要があります。競争は単一の企業がNASAに対して大き過ぎる影響力を持つことを防ぐことにつながります。また、1社としか契約を結んでいない場合、NASAは納期の遅れや設計変更、コスト超過といったさまざまなリスクにつながる交渉を迫られた際に、取ることができる選択肢がないことに気づくこととなるでしょう。競争が存在しなければNASAのアルテミス計画は遅れ、最終的により多くのコストがかかることとなるため、国益にもつながらないはずです」と語り、独占的な契約がもたらすであろう弊害を挙げています。

さらに、「HLS入札者のSpaceXだけが開発費と資金調達のプロファイルを修正する機会を与えられており、これが最終的にNASAがSpaceXを投資先に選ぶことにつながったことは明らかです。Blue Originは同じ機会を与えられませんでした。それは間違いであり、珍しいことであり、機会の逸脱です。しかし、これらの間違いを正すのに遅すぎるということはありません。我々はNASAが技術的リスクを緩和し、予算上の制約を解決し、アルテミス計画をより競争力があり信頼性が高く持続可能な道に戻すための支援をする準備があります」と述べ、NASAには問題を修正するチャンスがあると強調しました。


具体的な提案として、最初の2年間に開発費として支払われる金額の最大20億ドル分を放棄する用意があるとベゾス氏は述べています。また、Blue OriginはHLSの開発において開発費が超過しても追加の費用をNASA側に求めない固定価格での契約を受け入れるとしています。加えて、Blue Originは地球低軌道で行われる試験機による無人での着陸試験を自費で行うことで、「宇宙飛行士を月に送り出す上でのリスクを減らしていく」とも述べています。

海外メディアのThe VergeがNASAにコメントを求めたところ、「進行中の調達プロセスおよびアメリカ会計検査院による問題の裁定における完全性を維持するためにコメントを拒否する」という返答があったそうです。


NASAの元副管理者であるロリ・ガーヴァー氏はThe Vergeに対して、「ベゾス氏の申し出を利用するために契約内容を修正することは簡単ではない」と指摘。NASAがBlue Originと契約するためにSpaceXとの間の契約を微調整すれば、「新たな法的問題が発生する可能性がある」としています。

なお、Blue OriginとDyneticsの抗議を受けてアメリカ会計検査院が行っている調査の最終的な結果は、2021年8月2日(月)に発表される予定です。

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in メモ, Posted by logu_ii

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