NASAが月面再訪ミッションに参加する機関・企業のためのガイドライン「アルテミス協定」を起草

by NASA Goddard Space Flight Center

NASAが2024年までに人類を再び月面に送り込む「アルテミス計画」に参加する国際宇宙機関や民間企業のための基本的なルールに関する提案書「アルテミス協定」を発表しました。

NASA Artemis Accords
https://www.nasa.gov/specials/artemis-accords/index.html

アルテミス計画は、2024年までに宇宙飛行士を月面に送り込むというプロジェクトです。ニール・アームストロング船長が率いたアポロ11号によって月面着陸はすでに達成されていますが、アルテミス計画ではアポロ11号が達成しなかった「女性宇宙飛行士の月面着陸」も目指します。

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by NASA

このアルテミス計画にはNASAだけでなく複数の国際宇宙機関と民間企業が参加し、それぞれの役割を果たします。そのため、NASAは宇宙探査と科学、そして商業活動を促進する安全かつ透明な環境を形成するための共通原則を確立すべきとして、「アルテミス協定」を起草しました。

今回NASAが発表したアルテミス協定は、あくまで草案といえるもので、アルテミス計画に携わる機関・企業に求める基本的な理念のみを示したもの。アルテミス協定のそれぞれの内容が以下。

◆平和的な目的
アルテミス計画に関する国際協力は、宇宙探査を強化するだけでなく、国家間の平和的な関係を強化することを目的とします。よって、宇宙条約の理念に従って、全ての活動を平和的な目的で実施します。

◆透明性
透明性は民間宇宙探査の重要な原則であり、NASAは常に方針と計画を公表して説明するように注意を払っています。そのため、協定のパートナーは、自国の政策や計画を公に説明することを求められます。

◆相互運用性
アルテミス計画の参加機関の間で、システムを相互に運用できるというのは安全かつ堅牢な宇宙探査を実施する上で重要です。そのため、アルテミス協定ではパートナー国が国際規格を利用するというだけでなく、必要に応じて新しい規格を開発し、相互運用性を最大限に追求することが求められます。

◆緊急援助
求められた際に緊急支援を提供するというのは、責任ある民間宇宙プログラムの要です。よって、宇宙救助返還協定に従って、宇宙飛行士の救出・帰還、宇宙に打ち上げられた物体の回収などにあらゆる手段を講じるという理念を参加機関の間で共有します。

◆宇宙空間上の人工物の登録
宇宙に安全かつ持続的な環境を作り出すために、公共および民間の活動によって生じた人工物の登録が必要です。アルテミス協定では人工物の登録を推進し、参加機関に宇宙物体登録条約への加盟を強く促します。

◆科学的データの公開
科学的データを即時かつ完全に公開するというNASAの原則に沿って、アルテミス計画によって得た科学的データの公開に同意を求めます。

◆遺産の保護
歴史的な場所や遺物の保護は、地球上だけでなく宇宙空間上でも重要です。アルテミス協定では、参加機関は歴史的価値のある遺跡・遺物の保護を約束します。

◆宇宙資源
安全で持続可能な宇宙探査と宇宙開発のために、宇宙条約に基づいて月・火星・小惑星の資源を抽出して利用します。

◆衝突の回避
有害な相互干渉を回避するために「安全地帯」を制定し、安全地帯の規模や範囲などの情報を公開します。

◆軌道上のスペースデブリと宇宙船の廃棄
安全で持続可能な宇宙環境を維持するため、国連宇宙空間平和利用委員会が定めたスペースデブリ削減ガイドラインに基づいて行動することに同意を求めます。加えて、参加機関はミッション終了後に宇宙船を安全かつ効率的に廃棄する計画に同意する必要があります。

以上のように、アルテミス協定は参加機関・企業に求められる「行動規範」を示しています。今後、NASAは協定参加機関・企業と連携して、アルテミス協定を具体化していくとみられています。