DOOMの開発元による幻のPC版「スーパーマリオブラザーズ3」が歴史博物館に収蔵される

遊びに特化したアメリカ初の歴史博物館・The Strong National Museum of Playが、DOOMの開発元として知られるid Softwareが1990年にMS-DOS向けに作成した「スーパーマリオブラザーズ3」を入手・収蔵したと発表しました。

Museum obtains rare demo of id Software’s Super Mario Bros. 3 PC port | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2021/07/museum-obtains-rare-demo-of-id-softwares-super-mario-bros-3-pc-port/

Id's Super Mario Bros. 3 PC Port Donated To Video Game Museum
https://kotaku.com/id-s-mario-pc-port-discovered-in-museum-donation-1847290095

「スーパーマリオブラザーズ3」がアメリカで発売されたのは1990年のこと。ゲームスタジオのIdeas from the Deep(IFD：現在のid Software)は発売されたばかりの「スーパーマリオブラザーズ3」のPC移植ライセンスを取得するために、MS-DOS向けの「スーパーマリオブラザーズ3」のデモを作成して任天堂に送付しました。

IFDが任天堂に送付したPC版「スーパーマリオブラザーズ3」のデモの特徴は、id Softwareの共同設立者であるジョン・D・カーマック氏がコーディングしたスクロールアルゴリズムにあります。このアルゴリズムは1980年代後半のDOSゲームでよく見られた「背景の動きの乱れ」を克服しているそうで、The Strong National Museum of Playでデジタルゲームのキュレーターを務めるアンドリュー・ボーマン氏は、「当時のPCゲームを見ると、任天堂のヒット作に見られるようなスムーズなスクロールを備えたタイトルはありませんでした」と語っています。

ただし、任天堂はIFDから提案された「スーパーマリオブラザーズ3をPCに移植する」というアイデアを受け入れませんでした。しかし、IFDはカーマック氏の開発したスクロールアルゴリズムをのちの「Commander Keen」で利用しています。

IFD版「スーパーマリオブラザーズ3」の存在は、2015年にジョン・ロメロ氏が動画で紹介するまで、一般の人の間では広く知られていませんでした。ロメロ氏が公開したPC版「スーパーマリオブラザーズ3」のデモムービーは、以下の記事にまとめられています。

PC版「スーパーマリオブラザーズ3」のデモ映像を開発者が公開 - GIGAZINE

ボーマン氏によると、PC版「スーパーマリオブラザーズ3」はあるゲーム開発者が寄贈したゲームソフトの山の中に紛れていたそうです。この人物は実際に開発に携わったわけではなく、「仕事中にデモを受け取った人物」だとのこと。2015年にロメロ氏が公開したPC版「スーパーマリオブラザーズ3」のムービーを見て存在を知っていたボーマン氏は「寄贈されたソフトの中にPC版『スーパーマリオブラザーズ3』があるのを見つけたときは本当に驚きました」と語っています。

ボーマン氏が実際にIFDによるPC版「スーパーマリオブラザーズ3」をプレイしてみたところ、ワールド1-1にはスターとキノコで「IFD」の文字が描かれているなど、正式版にはない特徴があったり……

ワールド1-4に本来は存在しないはずのコインで飾られたピラミッドが存在したりと、正式版を完全に再現したものにはなっていません。これについて、ボーマン氏は「これはあくまでもデモ版なので、IFDが任天堂の協力を得られていたなら、より完全なスーパーマリオブラザーズ3を再現することができたでしょう」と語っています。

ボーマン氏によるとPC版「スーパーマリオブラザーズ3」は当面は博物館では展示せず、研究者や関係者からの要望があった際にのみ限定的に提供される模様。ただし、「展示する機会はいくらでもある」とのことなので、将来的には展示される機会が来るかもしれません。