サイエンス

NASAが「クマムシ」や「光るイカの赤ちゃん」を宇宙に打ち上げる予定


アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間の2021年6月3日、スペースXの商業用打ち上げロケットであるFalcon 9による国際宇宙ステーション(ISS)への第22回貨物補給ミッションを実施する予定です。このミッションではさまざまな科学研究用の物資も補給されることとなっており、新たに驚異的な生命力を持つことで知られる「クマムシ」やハワイ近海に生息する発光イカ「ハワイミミイカ(Euprymna scolopes)」の赤ちゃんなどが、ISSに送りこまれるとのことです。

SpaceX’s 22nd Commercial Resupply Mission to Space Station | NASA
https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/spacex-22-research-highlights

Glow-in-the-dark baby squid and tardigrades to be blasted into space | Live Science
https://www.livescience.com/baby-squid-and-tardigrades-launched.html

クマムシは体長50マイクロメートル~1.7ミリメートルほどの非常に小さな動物であり、湿った地面から水中、深海から高山まで多様な環境に生息しています。そんなクマムシは非常に生命力が高いことで有名であり、マイナス270度という超低温から150度という高温を耐え抜き、体の水分が3%になっても死ぬことがなく、人間だったら死亡するレベルの放射線や真空状態にも耐えることが可能です。


2019年にはクマムシを搭載したイスラエルの探査機が月面に墜落し、「搭載されていた数千匹のクマムシが月面で繁殖する可能性もある」とささやかれる事態も発生しました。

月面に墜落した月探査機に数千匹のクマムシが乗っていたことが発覚、月面で繁殖する可能性も - GIGAZINE


新たな研究では、ISSの微小重力下で繁殖させたクマムシにおける遺伝子発現を調査し、高ストレス環境に対する適応と生存に関与する遺伝子の特定作業が行われるとのこと。実に5000匹ものクマムシをISSに送りこんで行われる実験により、長期の宇宙旅行が健康に与える影響についての洞察が得られると期待されています。

ワイオミング大学の分子生物学准教授で実験の主任研究者を務めるThomas Boothby氏は、「宇宙飛行は地球の環境で進化してきた人間を含む生物にとって、非常に困難な環境になる可能性があります」とコメント。クマムシが宇宙空間に適応して繁殖するために使用するシステムを理解することが、宇宙飛行士を保護する方法の開発につながる可能性があるとのことです。

by Philippe Garcelon

また、別の実験で用いる動物として、発光するイカとして知られるハワイミミイカの赤ちゃん128匹もISSに送りこまれます。ハワイミミイカは体内に発光器官を有していますが、この器官が発光するのは生物発光特性を持つアリイビブリオ・フィシェリという細菌のおかげです。

ハワイミミイカとアリイビブリオ・フィシェリは共生関係にあり、ハワイミミイカが栄養を与える代わりにアリイビブリオ・フィシェリが発光して、外敵からのカモフラージュに一役買っているとのこと。動物と細菌の共生関係におけるモデル動物としても使われるハワイミミイカを利用して、研究チームは宇宙環境における有益な微生物と動物の相互作用を調査したいと考えています。

フロリダ大学の微生物学者で実験の主任研究者であるJamie Foster氏は、「人間を含む動物は、健康な消化器系と免疫系を維持するために、私たちが持つ微生物に依存しています。こうした有益な相互作用が宇宙飛行によってどう変化するのかは、まだ十分に理解されていません」とコメントしました。

なお、ハワイミミイカは生まれた時からバクテリアを有しているわけではなく、海に生息しているアリイビブリオ・フィシェリを捕獲して発光器官に蓄えます。そのため、研究チームはISSでハワイミミイカの赤ちゃんにバクテリアを与え、共生関係を確立する様子を観察するとのこと。この共生関係を築く過程で生成される分子を研究することで、研究チームはハワイミミイカが宇宙で共生関係を確立するためにどの遺伝子をオンにしたのか、あるいはオフにしたのかを知ることができると考えられています。

by Jamie S. Foster/University of Florida

さらに今回の補給ミッションでは、「携帯型超音波を用いたモバイルコンピューティングデバイス」「ロボットアームなどの遠隔操作用インターフェース」「宇宙飛行中に腎臓結石ができる仕組みを調べるための実験キット」「水や農薬の使用を減らすタフなワタ(綿)の開発を目指す実験キット」「船内活動に利用可能なエネルギーを増やすための新たなソーラーパネル」なども、ISSに送られる予定となっています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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