サイエンス

国際宇宙ステーションから未知の細菌が発見される


目に見えない細菌やウイルスと私たち人類の間には切っても切れない関係にあり、人類の存在する場所には必ず細菌やウイルスが存在するともいえます。地上から高度400kmを飛んでいる国際宇宙ステーション(ISS)から4つの細菌株が発見され、そのうちの3つはこれまで未発見だったことが判明しました。

Frontiers | Methylobacterium ajmalii sp. nov., Isolated From the International Space Station | Microbiology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2021.639396/full

Three bacterial strains discovered on space station may help grow plants on Mars | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-03/f-3bs031521.php


Microbes Unknown to Science Discovered on The International Space Station
https://www.sciencealert.com/four-bacterial-strains-discovered-on-the-iss-may-help-grow-better-space-plants

ISSでは細菌の増殖が6年にわたって監視されており、これまで1000種以上のサンプルが採取され、地球で分析が行われています。NASA・ジェット推進研究所のKasthuri Venkateswaran氏やNitin Singh氏らの研究チームは、ISSの異なる場所で得られたサンプルから4つの細菌株を発見しました。


4つの菌株のうち3つは2015年~2016年に採取されたサンプルから分離されたもので、それぞれISSの研究モジュールにある天井パネル、観測用モジュールのキューポラ、食事用のテーブルの表面から発見されました。また、4つ目は交換済みの古いHEPAフィルターのサンプルから2011年に分離されています。

4つの菌株はいずれもMethylobacteriaceae(メチロバクテリウム科)に属していることがわかりました。メチロバクテリウム科は土壌や淡水に見られる細菌の1種で、窒素固定や植物の成長に関わることで知られています。土壌や淡水に見られる細菌がISSで発見された理由について、研究チームは「ISSには栽培実験用に地上から植物が持ち込まれていたため」としています。


このうち、HEPAフィルターから発見されたものはMethylorubrum rhodesianumという既知の種として同定されました。そして、他の3つは未知の細菌株であることが判明し、それぞれ「IF7SW-B2T」「IIF1SW-B5」「IIF4SW-B5」と名付けられました。これら未知の3株について、研究チームはインドの著名な生物学者であるAjmal Khan氏にちなんで、「Methylobacterium ajmalii」と名付けることを提案しています。

さらに研究を重ねた結果、未知の3株の中で、特にIF7SW-B2Tのゲノムには、植物の根や芽の細胞分裂を促進する「サイトカイニン」の生成に不可欠な酵素の遺伝子が含まれていることがわかりました。

研究チームは「資源がほとんどない極地で植物を育てるには、ストレスの多い条件下で植物の成長を促進するのに役立つ新しい微生物の単離が不可欠です」と述べ、今回発見された未知の細菌株が、将来の火星の有人探査任務や宇宙での農業に大きく役立つ可能性があるとみています。

by Aslam Z., Lee C. S., Kim K.-H., Im W.-T., Ten L. N., Lee S.-T.

Venkateswaran氏は「言うまでもなく、ISSは清潔に保たれた極限環境です。乗組員の安全性は最優先事項であり、ヒトや植物にとっての病原体の理解は重要ですが、今回見つかったMethylobacterium ajmaliiのように有益な微生物も必要です」と語りました。

なお、研究チームは「分析のためにISSで採取されたサンプルを地球に送るのではなく、宇宙でサンプルの収集・処理・分析をすべて実行可能な、統合された微生物モニタリングシステムが必要です。この技術はNASAや他の宇宙開発国が長期間にわたって安全で持続可能な宇宙探査を達成するのに役立つでしょう」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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