無重力の国際宇宙ステーションで野菜を種から育てて食べる実験が行われる予定
無限に広がる宇宙へ出て遠い星を目指すためにはとてつもなく長い時間がかかるため、宇宙船に乗り込む宇宙飛行士の食糧をどのように賄うのかが大きな課題の一つとなってきます。NASAでは従来のような地上からの補給に頼らずに、宇宙船の中で野菜を栽培して食用にする実験を進めてきたのですが、実際に宇宙空間で野菜を育てて食べてみる試みが行われようとしています。
Crew Members Sample Leafy Greens Grown on Space Station | NASA
http://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/meals_ready_to_eat
この実験は、2015年7月23日にソユーズ宇宙船で打ち上げられた「Expedition 44(第44次長期滞在クルー)」が担当しているもので、国際宇宙ステーション(ISS)の極めて重力が弱い環境下でレタスを種から成長させて実際に食べる一連のプロセスを再現する実験がアメリカ時間の8月10日に行われます。なお、この第44次長期滞在クルーには元自衛隊員の日本人宇宙飛行士・油井 亀美也さんが加わっていることでも知られています。
Expedition 44 | NASA
今回の実験を含む、一連のNASAの取り組みが以下のムービーでも語られています。
Space Station Live: Lettuce Look at Veggie - YouTube
栽培したレタスを扱う宇宙飛行士の様子。栽培されたレタスの品種は「レッド・ロメイン・レタス(red romaine lettuce)」とNASAのページでは書かれており、日本でもよく食べられるサニーレタスの一種となっています。
栽培に使われた装置はこんな感じ。野菜の成長を最も効率よく促進する波長の光を出すLEDを組み合わせて使うことで、少ないエネルギーで野菜を育てられる設備となっています。なお、使われた光は赤と青がメインで、これに緑を加えていたとのこと。野菜が育つためには赤と青の光だけで十分なのですが、そのままでは食欲が湧かない奇妙な色の野菜になるため、緑の光を加えて野菜らしい見た目にする工夫がなされているそうです。
栽培されたレタスはこんな感じで、ツヤがあってみずみずしさがよく感じられます。日本でよく見るサニーレタスよりも赤い部分が多いのは、品種の違いもさることながら、光の影響もあるのかもしれません。
レタスの種子は、「Pillow(まくら)」と呼ばれるパックに入れて宇宙空間へと打ち上げられました。宇宙に到達したPillowは、ミッションクルーが水を注入することでアクティベート(活性化)され、種子の成長が始まります。
装置と一緒に写っているのは、第39次長期滞在クルーとしてISSに滞在していた若田光一さんでしょうか。レタスの種子をのせたPillowは第39次長期滞在ミッションの際に打ち上げられており、まずは無重力状態での発芽を行い、その後は地上に持ち帰って詳細な調査が行われました。今回の第44次長期滞在ミッションでは、初めて種子から食べられる状態まで育て、実際に食べてみるところまでが行われる予定です。
今回の実験により、宇宙の無重力空間の中でも野菜を育て、食糧とするための第一歩が確認されることになりそうです。今後はこの成果をもとにさらに大規模な栽培を行い、長い時間をかけて探査に向かう人間による火星探査の食糧などとして活用するための調査が行われることになるとみられます。
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月や火星に基地を作り、人間が暮らすための食糧を作る野菜工場としての活用も視野に入れられているようです。
さらに興味深いのは、宇宙だけでなく地球上でも応用される可能性を秘めているところといえます。いま関係者が注目しているのは、中東のドバイなど砂漠に近い地域での食糧生産だとのこと。
乾いた大地では、野菜や穀物を育てるには非常に多くの困難を伴うもの。そんな場所に宇宙で野菜を育てるのと同じような装置を持ち込むことで、安定した野菜の生産が可能になるのかもしれません。
・追記 2015/08/11 10:50
NASAが、宇宙空間で育った野菜を実際にクルーたちが食べている様子を撮影したムービーを公開しました。クルーが食べているのはレッド・ロメインという種類のレタスで、宇宙での自給自足の第1歩となりそうです。
Veggies in Space: Astronauts Sample Freshly Grown Lettuce - YouTube
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