サイエンス

NASAが火星宇宙船「オリオン」の飛行テストをまもなく実施、新しいイラストも発表


人類の宇宙開発をリードするNASA(アメリカ航空宇宙局)は、アメリカ時間の12月4日(木)に人類を火星に送り込むことを可能にする宇宙船「オリオン(またはオライオン:Orion)」の飛行実験を実施する予定です。これに先駆けて行われたNASAのブリーフィングでは、2020年にも人類を火星に到達させる探査計画についてのイラストが公開されています。

Mars planet facts news & images | NASA Mars rover + mission info
http://mars.nasa.gov/


ブリーフィングで公開されたイラストがこちら。ハッブル宇宙望遠鏡や国際宇宙ステーション(ISS)から近い将来に実現予定の民間宇宙輸送ロケットに始まり、アメリカが開発中の大型打ち上げロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」、惑星探査機に加えて火星へ向かう宇宙船などの姿が描かれています。


この計画で最も重要な部分を担うことになるのが、有人宇宙船のオリオンです。オリオンは、既に計画が終了した「スペースシャトル計画」の後を引き継ぐために開発が進められてきた宇宙船。2014年12月に実施される飛行実験の内容が以下のムービーで詳細に紹介されています。

Orion: Trial By Fire - YouTube


オリオン宇宙船のメインとなるカプセル(クルー・モジュール)がこちら。過去のアポロ計画などで用いられたカプセルと同じような形状ですが、オリオンでは直径が約5メートル・定員4名にサイズが拡大されているのが特徴。


飛行実験は2014年12月4日に実施される予定。打ち上げにはデルタ IVロケットが用いられます。


地球周回軌道への投入が完了したら、上部カバーとロケットの打ち上げ段が切り離され、オリオン宇宙船本体での飛行状態に遷移します。この状態でさまざまな確認が行われ、機体の動作が細かくチェックされる予定。また、地上との通信を断絶しても安全に飛行を継続できるかなどのチェックも行われます。


チェックが完了したら、次のテストへと突入。オリオン本体のエンジンを噴射して、高度約5800kmという軌道に到達させます。これは現在運用中の国際宇宙ステーション軌道よりもおよそ15倍も高い軌道となります。


この高度に達するためには、地球の周囲に存在するヴァン・アレン帯を通過する必要があります。ヴァン・アレン帯は人体や電子機器に悪影響を与える陽子や電子などの放射線が集中するゾーンなのですが、本格的な深宇宙を目指すためには必ず通らなければならない危険な関門と言える部分。オリオンは行きと帰りの2度にわたってヴァン・アレン帯を通過して、その安全性が設計どおりに確保されることを確認する予定です。


飛行実験の最後は、乗組員が乗るクルー・モジュールを無事に地球に帰還させることになります。時速3万kmにも達する宇宙船は空気との摩擦で表面が極めて高温になり、その温度は摂氏2000度以上にも達しますが、オリオンは最新の耐熱装備で保護されています。


超高速からの大気圏突入ということになるので、オリオンは複数のパラシュートを使って安全な速度にまで減速されます。


メインとなる第3段パラシュートは、展開するとアメリカンフットボールのコートと同じぐらいのサイズにもなるとのこと。


時速約40kmにまで減速されたオリオンは、海上に着水して無事に帰還を遂げる予定。


期間後は、本体内の記録装置に記録された膨大なデータを分析して、設計どおりに機体が動作しているか、そして安全性などが確認されることになっています。


なお、NASAではオリオンの打ち上げ実験に際し、事前に登録した人の名前を記したマイクロチップを機体に搭載するプログラムを実施。既に応募は締め切られていますが、130万人を超える応募が寄せられました。

Send Your Name to Mars
http://mars.nasa.gov/participate/send-your-name/orion-first-flight/


応募者の名前が刻まれたシリコン製チップ。わずか8ミリ四方のチップに130万人分の名前が刻まれています。


一人分の名前はおよそ10マイクロメートルという極めて小さなもの。電子顕微鏡を使ってみる必要があるレベルです。


オリオンの飛行実験を示すメッセージも刻まれているようです。


人類の新たな到達点を目指して打ち上げられるオリオン飛行実験機は、アメリカ時間の2014年12月4日午前7時5分(日本時間で12月4日21時5分)にフロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられる予定。その様子はNASAのサイトでもストリーミングされることになっているので、打ち上げの瞬間を目の当たりにしたい人は要チェックです。

NASA Television | NASA
http://www.nasa.gov/multimedia/nasatv/index.html#


NASAによるオリオン宇宙船のガイド「Orion Quick Facts」(2ページ)も要チェックです。

Orion Quick Facts
(PDFファイル)http://www.nasa.gov/sites/default/files/fs-2014-08-004-jsc-orion_quickfacts-web.pdf

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in 乗り物,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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