サイエンス

植物学者は「きれいな花」を研究対象に選びやすいバイアスを持っている

by xulescu_g

多くの人は地味な花よりも美しい花の方が好きであり、庭の花壇やベランダのプランターに植えるなら色鮮やかな花がいいと考えています。同様の傾向は植物学者の間にも存在するようで、オーストラリア・カーティン大学の植物学者であるキングスリー・ディクソン氏が、「植物学者は見た目がきれいな花を研究対象に選びやすいバイアスを持っている」と指摘しています。

Plant scientists’ research attention is skewed towards colourful, conspicuous and broadly distributed flowers | Nature Plants
https://www.nature.com/articles/s41477-021-00912-2

Scientists are more likely to study bold and beautiful blooms, but ugly flowers matter too
https://theconversation.com/scientists-are-more-likely-to-study-bold-and-beautiful-blooms-but-ugly-flowers-matter-too-160601

ヨーロッパ南西部に広がるアルプス山脈は生物多様性がひときわ豊かな場所であり、約200年にわたる植物研究の主要なフィールドになっています。ところが、近年では気候変動による影響を受け、希少な植物が危機に陥っているとのこと。


アルプス山脈の花として有名なものと言えば、花を中心に星のように白い葉を広げるエーデルワイス(セイヨウウスユキソウ)、鮮やかな青い花を咲かせるリンドウデルフィニウムなどが挙げられます。

その一方、小さなカヤツリグサ科の植物やAlchemilla alpina(lady's-mantle/女性のマント)といった小さく地味な植物も存在します。これらの注目されにくい植物の中には、希少だったり生態学的に重要だったりする種類があるものの、これらの植物は見過ごされがちだとディクソン氏は指摘しています。


そこでディクソン氏らの研究チームは、1975年~2020年に発表されたアルプス山脈に生息する植物についての論文280件を調査し、どのような植物が研究対象として扱われているのかを調べました。研究チームは論文の中で焦点が当てられる頻度と、植物の色や形、目立ちやすさといった特性との関係を分析したとのこと。

分析の結果、白・赤・ピンクといった色鮮やかな花や大きくて目立つ植物が研究で取り上げられやすく、緑色や茶色をしている地味で目立たない植物は取り上げられにくい傾向が明らかとなりました。なお、最も注目されやすかったのは、自然界でも珍しい青色の花を持つ植物だったそうです。一方、興味深いことに「植物の希少性」は研究対象として取り上げられる頻度にそれほど大きな影響を与えなかったとのこと。


種の重要性は徹底的に調査するまでわからないことも多く、たとえきれいな花を咲かせたり食用として有用だったりしない植物でも、動物たちの貴重な生息地や食料源となっているケースがあり得ます。また、性質について調査することで初めて、人間にとって有用な特徴を持っていることが明らかになる場合もあります。

植物学者に根ざしているこの偏見は、視覚的に目立たないものの生態系にとって重要だったり、緊急の保全が必要だったりする植物を見過ごすことにつながりかねないとディクソン氏は指摘。「緊急的な種の保全が叫ばれる現代において、植物科学における私たちの偏見をコントロールすることは重要です」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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