サイエンス

人間は自然界の500倍の速さで植物を滅ぼす

by cocoparisienne

生物学者によると、新種の動植物を発見する試みは比較的盛んな一方で、既に絶滅した、あるいは絶滅寸前の植物はあまり顧みられていないとのこと。そんな中、既知の植物に対する大規模な追跡調査の結果、人類は自然界の500倍もの速度で植物を絶滅させていることが判明しました。

Global dataset shows geography and life form predict modern plant extinction and rediscovery | Nature Ecology & Evolution
https://www.nature.com/articles/s41559-019-0906-2

World's largest plant survey reveals alarming extinction rate
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01810-6

Plant extinction 'bad news for all species' - BBC News
https://www.bbc.com/news/science-environment-48584515

植物の絶滅に関する調査を実施したのは、スウェーデンのストックホルム大学で環境植物科学を研究するエリーズ・ハンフリーズ氏とイギリスのキュー王立植物園の植物学者らによる研究グループです。ハンフリーズ氏らは、研究グループの一員でもあるラファエル・ガベアーツ氏が1988年から着手している、既知の植物種に関する追跡プロジェクトで作成されたデータベースを手がかりに調査を実施。合計33万種以上にも及ぶ植物に関する研究から、1750年代以降から2019年時点までに571種もの植物が絶滅していることを突き止めました。


571種という数字は、国際自然保護連合のレッドリストに記載された絶滅危惧植物の数の約4倍で、これまで確認されているあらゆる哺乳類・鳥類・両生類の絶滅数を合計した数の2倍以上にものぼります。特に1900年以降は年間約3種が絶滅しており、この絶滅の速度は18世紀の産業革命以前に比べて500倍にも及ぶとのこと。

しかもこの571種という数字は「ひどい過小評価の結果」だと共同研究者のMaria Vorontsova博士は話しています。というのも、この数字には「性別のどちらか片方しか現存していない」「種子を媒介する動物が既に絶滅している」といった形で、現存してはいるが絶滅が確実視されている数千種類の植物が含まれていないからです。また、発見される前に絶滅してしまった種もかなりあると推測されています。

以下の画像は1900年以降に姿を消した種子植物の分布を示すマップで、色が濃いほど多くの植物が絶滅していることを表しています。ハンフリーズ氏は、ハワイ・マダガスカル・ブラジルの熱帯雨林・インド・南アフリカなど、生物多様性が豊かで、かつ人口の増加が顕著な地域で特に多くの植物が絶滅していると指摘しています。


共同研究者のEimear Nic Lughadha氏は植物の絶滅は「あらゆる生物にとっての悲劇」だと説明します。植物は光合成を通じて酸素を供給しているだけでなく、食物連鎖や生態系の土台でもあるため、たった1種の植物が絶滅するだけで、そのほかの生物も連鎖的に絶滅してしまう可能性があるからです。

by byrdyak

イギリスの生態水文学研究所に務めるアラン・グレイ氏はこの研究結果について、「豊かな生物多様性が我々に何をもたらしてくれるかではなく、我々人類が生物多様性にできることは何かを考える時が来ています」とコメントし、加速していく植物の絶滅が地球上の生命にもたらす破壊的な影響についての危機感を募らせていました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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