陰謀論者グループ「QAnon」に関連するフレーズがTwitterやFacebookからどんどん消えている
by Anthony Crider
海外の匿名掲示板である4chanの書き込みをルーツとするアメリカの極右陰謀論者グループ「QAnon」は、ソーシャルメディアなどで陰謀論やフェイクニュースを拡散する活動で知られています。そんなQAnonに関連する多くのスローガンやフレーズが主流のソーシャルメディアから消えつつあることが、アメリカのシンクタンク・Atlantic Councilの研究機関であるDigital Forensic Research Lab(DFRLab)の調査で判明しました。
QAnon’s hallmark catchphrases evaporating from the mainstream internet | by @DFRLab | DFRLab | May, 2021 | Medium
https://medium.com/dfrlab/qanons-hallmark-catchphrases-evaporating-from-the-mainstream-internet-ce90b6dc2c55
QAnon slogans disappearing from mainstream sites, say researchers | Reuters
https://www.reuters.com/technology/qanon-slogans-disappearing-mainstream-sites-say-researchers-2021-05-26/
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中にソーシャルメディアでの存在感を高めたQAnonの支持者らは、「The Storm(嵐)」「The Great Awakening(大いなる覚醒)」といったキャッチフレーズを頻繁に使用しました。ところが、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが厳しくQAnonを取り締まったり、2021年1月にはQAnon支持者らが熱狂的に支持してきたドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領を退任したりといった影響で、QAnonの影響力にも陰りが出ているとのこと。
そこでDFRLabの研究チームは、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームにおけるQAnon関連の発言を、2020年1月1日~2021年4月1日の期間で収集しました。収集に使用したツールはMeltwater Explore・Social Media Analysis Toolkit (SMAT)・Parler Archive・GabLeaksであり、Twitterをはじめとする主流のソーシャルメディアからParlerなどの代替SNSまで、幅広いプラットフォームが対象となりました。
研究チームが着目したのはQAnon支持者が広く使用する13のフレーズや言葉であり、「WWG1WGA(Where we go one we go all)」「the storm」「great awakening」「trust the plan」「dark to light」「future proves past」「disinformation is necessary」「the military is the only way」「we are the news」「save the children」「Pizzagate」「Seth Rich」「there’s Q and there’s anons」といったもの。研究チームはスペルミスや微妙なバリエーションも考慮し、検索ワードを増やして収集を実施したそうです。
今回の調査では発言した人物の情報については分析せず、あくまでも抽出された発言数やプラットフォームに着目した分析が行われました。収集した発言の中にはQAnonについて言及したジャーナリストなど、QAnon支持者でない人々による発言も含まれている可能性があると研究チームは認めていますが、その誤差が分析に有意な影響を与えるほど多くはないと考えているとのこと。
複数のソーシャルメディアから発言を収集した結果、合計で4000万件近い発言が収集されました。各フレーズの発言数を縦軸で、時間の流れを横軸で示した以下のグラフを見ると、フレーズの中でも「WWG1WGA」や「there’s Q and there’s anons」が特に多く、COVID-19のパンデミックによる外出制限が始まった2020年3月から増加している傾向が見られます。その後もジョージ・フロイド氏の死亡事件などに関連して発言数が増えていたものの、8月を過ぎたころから次第に発言数が減少し始め、2021年1月にトランプ支持者によるアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件が発生してプラットフォームの取り締まりが強化されるとさらに減少したことがわかります。
2020年の夏以降の期間に着目したグラフがこれ。「TwitterによるQAnonアカウントの停止」「FacebookにおけるQAnonの利用禁止」「YouTubeにおける陰謀論流布の禁止」「TwitterによるQAnonコンテンツを共有するアカウントの永久BAN」といったイベントと共に、QAnon関連の発言が減っていることがわかります。また、プラットフォームの取り締まり以外にも、「Q」を名乗る人物からの書き込みが途絶えたり、QAnonコミュニティで取り締まられるような発言を控える動きが起こったり、トランプ氏が選挙で敗北したりといった出来事が発言数の減少と関連している可能性があるとのこと。
なお、TwitterやFacebookといった主流のプラットフォームにおける発言数を緑色、ParlerやGabなどの代替プラットフォームにおける発言数を赤色で示した以下のグラフを見ると、基本的には代替プラットフォームより主流のプラットフォームにおける発言数が大幅に上回っていることがわかります。連邦議会議事堂の襲撃事件が起きた後、Twitterなどで大量のアカウントBANが起きた時は一時的に代替プラットフォームの勢いが増しているものの、その後はParlerの締め出しなどもあってすぐに勢いは収まりました。
今回の分析で収集された発言のうち、およそ97.6%が主流のプラットフォームで発言されたものであり、代替プラットフォームでの発言は全体の2.4%に過ぎなかったそうです。
今回の研究結果から、「QAnonの支持者は主流のプラットフォーム以上の勢いで代替プラットフォームを利用している」という考えは事実ではなく、実際にはそれほど代替プラットフォームにQAnon支持者が集まっていないことが示唆されています。代替プラットフォームにおけるQAnon関連フレーズの発言数が最も多かったのは、2021年1月9日の約21万1000件でしたが、主流のプラットフォームにおける発言数が最も多かった2020年5月30日には、なんと65万件以上の発言が確認されたとのこと。
プラットフォームの取り締まりはQAnon関連の発言数減少と強く関わっていましたが、QAnon内部でも特定のフレーズ使用を回避する動きもあることから、発言数の減少と同じ勢いでQAnon支持者が消滅しているわけではないと研究チームは指摘しています。研究チームのJared Holt氏は、研究が「QAnonの特徴としてこれまで考えられてきたもの」に限定されている点にも言及しています。
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