サイエンス

「懸念される変異株」に指定された変異株「B.1.617.2」とはどのようなものなのか?


イングランド公衆衛生庁は2021年5月6日に、インドで初めて発見され、イギリスの首都ロンドンなどを中心に感染が拡大しつつある新型コロナウイルス感染症(COVID-19の)変異株B.1.617.2を「懸念される変異株」に指定しました。まだ不明な点が多いこの変異株について、学術系メディアのThe Conversationが取材結果をまとめています。

B16172 Q&A: all you need to know about this SARS-CoV-2 variant
https://theconversation.com/b16172-qanda-all-you-need-to-know-about-this-sars-cov-2-variant-160903

The Conversationの取材を受けたバーミンガム大学のウイルスの専門家ザニア・スタマタキ氏は、B.1.617.2についての質問に対し以下の通り回答しました。

◆B.1.617.2とはどのようなものなのか?
B.1.617.2は、インドで初めて発見された3種の変異株の1つで、E484QL452Rという2つの変異を持つことから「二重変異株」とも呼ばれています。スタマタキ氏によると、この呼び方はウイルス学的には不適切なものの、従来の変異株に対する抗体では中和されにくいことを強調するためにしばしば用いられるそうです。

イギリスでB.1.617.2への懸念が高まっているのは、B.1.617.2の症例数が増加傾向にあり、またこれまで流行していたB117より感染力が強い可能性があるため、「都市封鎖や規制を段階的に解除する計画に狂いが生じるおそれがあるから」だと、スタマタキ氏は話しています。

◆B.1.617.2に対するワクチンの効果はいつ分かるのか?
変異株に対する新型コロナウイルスワクチンの効果は、ワクチン接種により増加した抗体やT細胞を検査し、それらが変異株を抑制できるかどうかを調べることで確認されます。

スタマタキ氏は、「イングランド北部のボルトンなどでB.1.617.2の感染が拡大しているため、入院者数や死亡者数が増加しているかの調査を検討しています。感染が本格化してから2~4週間後には数字が出るでしょう」と回答し、ワクチンの効果が判明する時期は今後の調査次第との見方を示しました。


◆B.1.617.2が規制解除計画を狂わせる可能性は?
イギリスが他国に先んじて都市封鎖の解除を始めることができたのは、早い時期に広範なワクチン接種を行ったからです。そのため、変異株に対するワクチンの効果に疑念が生じるようなことがあれば、新しいワクチンができるまで都市封鎖を続けるしかないとのこと。

こうした点から、スタマタキ氏は再開計画への影響について「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のようなRNAウイルスの場合、変異株が出現するのは自然なことなので、政府が計画変更などの対応策を講じるのも当然と言えます。もし、この変異株がワクチンの防御機能を回避するおそれがあれば、計画は見直されリスクが再評価されることでしょう」と述べました。


◆B.1.617.2対策として「流行地でのワクチン接種キャンペーンや地域単位での都市封鎖」は適切か?
この質問に対し、スタマタキ氏は「新しい変異株が定着して国民生活に影響が及ぶのを防ぐためには、厳しい措置を講じて局地的な感染拡大への対応力を高めなければなりません。このような感染拡大は地理的に限定されているため、ターゲットとなる地域を絞った制限が必要です」と回答し、地域単位での厳しい対策が重要だと強調しました。

地域を絞ったワクチン接種キャンペーンは、変異株対策として有効ですが、ワクチン接種から免疫ができるまで約2週間かかる点には注意が必要とのこと。また、学校や企業、地域や都市に限定した小規模かつ局所的な都市封鎖は、感染の拡大を即座に抑制しアウトブレイクを防ぐ上で有効だと、スタマタキ氏は指摘しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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