ネガティブな感情が持続しやすい脳を持つ人は不幸だと感じやすいとの研究結果
人生にはいいことも悪いこともありますが、一部の人々は悪いことがあってもすぐに切り替えられる一方、なかなか気持ちを切り替えられない人もいます。人々の気分や幸福感に加えて脳活動の測定を行ったマイアミ大学の研究により、ストレスを経験した際に脳の一部が反応する方法がより長期的な幸福を左右することが判明しました。
Linking Amygdala Persistence to Real-World Emotional Experience and Psychological Well-Being | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/41/16/3721
Don’t let the small stuff get you down
https://news.miami.edu/stories/2021/03/dont-let-the-small-stuff-get-you-down.html
Does Your Bad Mood Stick Around? Neuroscientists Find Key Brain Region Involved
https://www.sciencealert.com/experiment-identifies-key-brain-region-involved-when-you-can-t-shake-a-bad-mood
ネガティブな感情の持続しやすさは個人差があり、コーヒーのカップを落としてしまった後に同僚へ爽やかにあいさつできる人もいれば、同僚に悪態をついてしまう人もいます。ところが、ネガティブな感情の持続しやすさと全体的な幸福度の関連について調べた研究は少ないとのこと。
そこでマイアミ大学の研究チームは、1990年代にスタートした縦断的研究である「Midlife in the US」のデータを用いた分析を行いました。Midlife in the USは、数千人のアメリカ人を対象にした身体的・精神的健康についての調査であり、心理的ウェルビーイング(PWB)も測定している点が特徴です。
Midlife in the USの被験者らはPWBを測定するアンケートに回答したほか、約1週間にわたって電話調査で「その日に経験したストレスの多い出来事」や「ポジティブおよびネガティブな感情」を報告しました。さらに、一部の被験者は磁気共鳴機能画像法(fMRI)で脳活動を測定する実験に参加し、ポジティブな画像・ネガティブな画像・ニュートラルな画像を60枚ずつ見た際の脳活動を測定したとのこと。
全ての調査に参加した52人のデータを研究チームが分析した結果、脳の中で感情の処理や記憶について主要な役割を担っている扁桃体の活動が、日常生活におけるネガティブな感情やPWBに影響を及ぼしていることが判明しました。
研究チームによると、暴力やグロテスクな要素を連想させるネガティブな画像を見た際に左の扁桃体で見られる反応が持続しやすい人ほど、日常生活においてネガティブな感情を覚えやすくPWBも悪いとのこと。一方、ネガティブな画像を見た際のストレス反応が持続しにくい人ほど、日常生活でよりポジティブな感情を経験しやすく、長期的な幸福感も高かったそうです。
扁桃体は不安や恐怖に反応して活性化するという精神状態に重要な役割を果たしている部位として知られていますが、今回の研究結果は扁桃体の能力には一種の「波及効果」があることを示唆しています。扁桃体の持続性が高い人の場合、危険そうなものを察知した際のネガティブな感情が増幅または継続し、その後の脅威とは関係ない物事の捉え方に影響を与える可能性があるとのこと。
論文の筆頭著者であるNikki Puccetti氏は、「基本的に、人の脳がネガティブな刺激を持続的に保持するかどうかが、日々の感情的経験がよりネガティブになったり、ポジティブさが低下したりする傾向を予測することがわかりました」とコメント。研究チームの一員であり、マイアミ大学で心理学の助教を務めるAaron Heller氏は、ネガティブな経験が他の出来事に波及する効果について理解することが、個人間の感情や幸福感の違いなどを理解する上で重要だと主張しました。
・関連記事
人はハッピーエンドに固執するあまり自分に不利な決断をしてしまいがち - GIGAZINE
「不幸な人」の声を30年聞き続けた精神科医が学んだ「人を幸福から遠ざけること」 - GIGAZINE
人間の脳に関するあなたが知るべき7つの事実 - GIGAZINE
ネガティブな感情はメンタルヘルスの健康と幸せの鍵になっている - GIGAZINE
人が悲しみを感じる時、脳はどのような反応を示すのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ