仮想通貨が「移民労働者が故郷に送金する手段」になりつつあるとの報道
暗号資産は秘匿性の高い送金が可能なことから「仮想通貨の多くが犯罪組織に使われている」との批判がありますが、一方で決済技術大手のVisaやMastercardが相次いで「暗号資産決済の導入を検討する」と発表するなど、身近な決済手段としても急速に普及しつつあります。そんな暗号資産が、発展途上国から先進国に移住した労働者が故国に送金する手段として活用され始めていると、非営利の報道機関・Rest of Worldが報じています。
Bitcoin’s most recent adopters are working-class migrants - Rest of World
https://restofworld.org/2021/crypto-remittances/
Rest of Worldによると、アメリカに移住したラテンアメリカ人の間では、暗号資産を送金手段に利用するケースが増えているとのこと。メキシコ出身のマリア・サルガド氏もその1人。1996年、メキシコが経済危機に見舞われたのを契機に渡米したサルガド氏は、以来24年間ロサンゼルスのアパレル工場に勤め、娘を育て上げつつ、メキシコに残してきた腎臓病を患う家族に収入のかなりの割合を送ってきました。
サルガド氏は、これまで故郷への送金にはWestern Union、MoneyGram、Vigoなどの国際送金サービスを利用してきました。こうした国際送金サービスはいずれも、200ドル(約2万2000円)ごとに10ドル(約1100円)前後の手数料が請求されます。これに比べて、メキシコの暗号資産取引所・Bitsoでは、1000ドル(約11万円)ごとに1ドル(約110円)しかかかりません。以前は、暗号資産は半分詐欺のようなものだと考えてきたサルガド氏も、身近にいる移民たちが次々と暗号資産を使い始めたのを見て、暗号資産に乗り換えました。
こうしたアメリカからメキシコへの送金は、パンデミックに苦しむメキシコの人々にとっては重要なものでした。というのも、パンデミックの影響で何百万人もの人々が失職したにもかかわらず、メキシコ政府は目立った救済策を講じなかったからです。一方、アメリカは巨額の景気刺激策を打ち出していることから、多くのメディアが「メキシコ政府から給付金を受け取ったメキシコ人より、アメリカの経済刺激策のお金を送金してもらったメキシコ人の方が多いのではないか」と報じました。
またラテンアメリカでは、地域経済の不安定さも暗号資産の普及を後押ししています。例えば、ベネズエラの通貨であるボリバルは6500%もの年間インフレ率を記録したことがあるほか、経済制裁により外貨も不足しているとのこと。自国の通貨が不安定なため、多くのベネズエラ人が暗号資産に目を向けているそうです。
2020年1月から暗号資産での送金を始めたサルカド氏は、記事作成時点では暗号資産のマイニングと投資で生計を立てています。また、暗号資産についてオンライン講座で教える事業も始めました。サルカド氏は、工場を辞めてビットコイン投資家になった時のことを「鶏小屋に閉じ込められた鶏が、ワシみたいに飛び立つような思いでした。最低賃金で働いていては、何もできないということが分かったからです」と振り返りました。
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