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YouTubeを相手に急成長を遂げる「Vimeo」のCEOが自社戦略について語る


動画共有サービスとしてYouTubeが世界の覇権を握る一方、「クリエイター向け」をうたうVimeoが急成長を遂げています。この急成長の要因とは一体どのような点にあるのか、Vimeoのアンジャリ・スッドCEOがIT系ニュースサイトのThe Vergeのインタビューに答えています。

How Anjali Sud reinvented Vimeo - The Verge
https://www.theverge.com/2021/4/20/22392228/vimeo-ceo-interview-streaming-software-business-anjali-sud

2017年にCEO就任を果たしたスッド氏が行った改革が、「クリエイター向けサービスの強化」です。この改革以前ではVimeoは動画共有サービス市場において「劣化YouTube」という立ち位置しか確保できていなかったものの、改革以降はクリエイター向けに強い訴求力を発揮し、2020年度終了時点で有料会員150万人を突破。2020年度第4四半期には有料会員だけで8380万ドル(約90億円)という収益を確保するという急成長を遂げ、「節税のために再投資を行って赤字決算にする」という戦略を打ち出したにもかかわらずうっかり黒字を出すという、うれしい誤算も生じています。


2014年にマーケティングディレクターとして入社したスッドCEOは、当時を振り返って「オリジナルコンテンツに年間170億ドル(約1兆8300億円)を投じると発表したNetflixには太刀打ちできないと考えていました」と語り、自社の強みについて考えた際に「常にプロの映像クリエイターをターゲットにしてきた点」だと再認識したとコメント。スッドCEOは、当時は大企業だけでなく中小企業までもがウェブサイトだけでなく、「ムービーを使ったコミュニケーション」に目を向け始めていると感じたそうです。

また、Netflixや、それに「Disney+」で対抗するディズニーといったコンテンツ拡充のために大金を投じている会社ではなく、YouTubeに焦点を合わせたとスッドCEOは語ります。スッドCEOは「YouTubeとの差別化」を考えた結果、YouTubeはユーザーが投稿したコンテンツに表示される「広告」に対して資金を投じているため、広告の表示量に最も影響を与える「サービスの利用時間」を主眼に据えていると感じたとのこと。


これに対し、Vimeoは広告が一切存在しない点が特徴で、広告収益ではなくサブスクリプションによって利益を上げているサービスです。つまり、YouTubeが「視聴者側にエンターテイメントの場を提供することで収益を上げる」サービスであるとするならば、Vimeoは対照的に「クリエイター側にビデオコンテンツ作成ツールと、作成したビデオの配信場所を提供することで収益を上げる」サービスだったとのこと。

スッドCEOは、VimeoはFacebookやYouTubeだけでなく、企業向けポータルサイトや企業の公式ウェブサイトにムービーを挿入するためのツールを提供していることから、文章や画像のような強力なコミュニケーション手段としてビデオを用いられるようにするサービスとしてVimeoを位置づけていると語っています。これはYouTubeと全く異なるビジネスモデルであるため、「もし何年も前から現在の方向にかじを切っていた場合には、YouTubeと業界を二分する存在になれたかもしれません」とスッドCEOは語っています。

by Collision Conf

The Vergeの「YouTubeクリエイターに意見を聞いていると、『YouTubeはクソ』という意見が聞こえてきます。こうしたクリエイターは『YouTubeに腹を立てたときにどのサービスを使えばいいんだよ』と言うわけですが、こうした『YouTubeの代替』からVimeoは距離を置き続けているように見えるのはどういう理由でしょうか?」という質問に対し、スッドCEOは「そういう意見はたくさん聞いていますが、実際に私たちはYouTubeの代替から距離を置いています」と返答。Vimeoはあくまでクリエイターや企業向けに最高のサービスを提供するもので、多くのクリエイターが望むような「YouTubeではない場所で広告収益を得たい」という声には応えるつもりはないという姿勢を示しました。

一方で、こうしたYouTubeクリエイターの望みと自社の姿勢をすりあわせた結果、Vimeoは「クリエイターが自分自身の『Netflixのようなサービス』を立ち上げる」というコンセプトのツールセット&サービス「Vimeo OTT」を提供しています。Vimeo OTTは動画コンテンツを本格的なサブスクリプションに変えられるサービスで、ある程度成功したYouTuberの「広告収入だけでなく、フォロワーの一部に定額課金をしてもらえるならば、もっと稼げるのでは」という声に応えられるものであり、その売れ行きは「絶好調」とのこと。

動画とOTTで収益化 | 動画サブスクリプションプラットフォーム (VHX)
https://vimeo.com/jp/ott/home


スッドCEOはVimeo OTTの利点について、「仮に『自力でNetflixのようなサービスを構築したい』と考えた場合、そのコストは天文学的に高くなります」と説明しています。Netflixのようなサービスの場合、エンジニアを雇ってウェブサイトとアプリを構築させ、デザイナーを雇ってテンプレートを作成させ、さらにはカスタマーサポートを常駐させなければならない上に、ビジネスが順調なのかを調べるためのアナリストまでもが必要で、換算すれば数十万ドル(数千万円)ほどが必要とのこと。一方で、Vimeoは開発したサービスを有料会員150万人に並列的に提供するため、手作りから工場での大量生産に移行するかのような価格破壊が可能だとスッドCEOは述べています。

インタビューの中で、スッドCEOが再三強調しているのは、映像クリエイターや作成したコンテンツを配布する企業のような「コンテンツを提供する側」にサービスを提供するという姿勢です。スッドCEOはビデオを娯楽でも収益化の方法でもなく「コミュニケーションの方法」と捉えており、フォーチュン500にランクインしている大企業だけでなく中小企業も含めた「ビデオを用いたコミュニケーションを社内・社外を取らず採用したい」という声こそが最大の商機であると語っています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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