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なぜ「新型コロナの封じ込めに成功した」はずのインドで感染が爆発しているのか?


インドでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数が2020年9月頃をピークに減少へと転じ、「インドはCOVID-19の抑制に成功した」とも言われていました。ところが2021年3月ごろから新規感染者数が急増し、4月19日には1日の新規感染者数が過去最多の27万3810人を記録するなど、第1波を上回る第2波に襲われています。「一体なぜ、一度は封じ込めに成功したインドで新規感染者数が急増しているのか?」という疑問について、ジャワハルラール・ネルー大学の社会医学・地域保健センター局長を務めるRajib Dasgupta氏が解説しています。

After early success, India's daily COVID infections have surpassed the US and Brazil. Why?
https://theconversation.com/after-early-success-indias-daily-covid-infections-have-surpassed-the-us-and-brazil-why-158783

インドは2020年6月に初めてCOVID-19の新規感染者数が1日当たり1万人を突破し、同年9月には1日当たり9万人を超えるピークを迎えました。しかし、その後は新規感染者数が減少傾向となり、2021年1月下旬には「インド全土の2割の地域で1週間連続で新規感染者が報告されなかった」と報じられ、インドのハーシュ・ヴァルダン保健相は「インドは感染封じ込めに成功した」と述べました。

インド、新型コロナ抑制を宣言 2割の地域で1週間新規感染なし | ロイター
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-india-idJPKBN29X1DW

ところが、2021年3月ごろから次第に1日当たりの新規感染者数が急増し始めており、インドは第1波を上回る規模の第2波に襲われています。ロイター通信が公開しているインド国内の新規感染者数および死亡者数を示したグラフが以下。2020年9月ごろにピークを迎えた後に感染者数・死亡者数共に減少し、2021年1月~2月ごろには新規感染者数が2万人を下回っています。一時期は感染が収まったかのように見えましたが、3月中旬ごろから急激に感染者数が増加し、4月上旬には1日当たりの新規感染者数が10万人を突破。記事作成時点では連日のように20万人を超える新規感染者が確認されています。


こうした事態を受けて、インド有数の大都市・ムンバイを州都に持つマハーラーシュトラ州などでは、夜間外出禁止令や週末の都市封鎖などの感染防止対策が復活。また、インドの首都・デリーを中心としたデリー首都圏政府も、4月19日夜から1週間の「小規模な都市封鎖」を行うと発表しました。

Dasgupta氏によると、すでにインドの医療サービスと火葬場は圧迫されており、COVID-19の検査キットも不足しているとのこと。パンデミックの影響はスラム地域の住民や自宅にトイレを持たない人々において特に強く、劣悪な衛生状態や人口密度の高さが感染拡大に貢献しているとDasgupta氏は指摘しています。


一度は感染が抑制されたインドが再び危機的な状況になっている理由については、単純に「過失」だと考える見方もあります。マスクの着用や社会的距離の維持を怠る個人だけでなく、職場や公共空間における規制の欠如も問題視されています。封じ込めが宣言された後のインドでは宗教祭やスポーツイベント、選挙などが感染防止対策なしで実施されていたそうです。

また、イギリスにおける感染拡大をもたらした変異株「B.1.1.7」も、インドにおける感染爆発に影響しているといわれています。2021年3月の調査では、パンジャーブ州で収集された401件のサンプルのうち、実に81%が「B.1.1.7」であることが判明。「B.1.1.7」は新型コロナウイルス変異株の中でも感染力が高いとされており、過去にCOVID-19を経験した人々が再感染する可能性もあるとのこと。

さらに、インド国内で発生した新型コロナウイルス変異株も感染拡大の要因とされています。インドの一部地域で流行している変異株「B.1.617」は、すでにイギリスにも到達していると報じられています。

What do we know about the Indian coronavirus variant? | Coronavirus | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/apr/19/what-do-we-know-about-the-indian-coronavirus-variant


インドはパンデミック初期段階において「COVID-19の死亡率が約1.5%と、世界平均よりも低い」として称賛されていましたが、これは「誤った楽観主義」の可能性があると指摘されていました。インドでは多くの州保健当局が「COVID-19に関連した死亡者数を正確にカウントしていない」との批判を受け、COVID-19による死亡者数を再調査および検証するための専門家委員会を設置。再調査の結果、複数の州で死亡率が世界平均の約3.4%を超えており、いくつかの地域では約5%を超えたと報じられています

これまで、インドにおける症例および死亡例の大半はパンジャーブ州やマハーラーシュトラ州を含む大都市で報告されていましたが、感染は大都市から保健インフラの乏しい郊外や小さな町に移行しつつあるとのこと。Dasgupta氏は、2020年にはCOVID-19対策に動員されていた非保健部門の職員が元の部門に戻されているため、症例追跡や検査、治療に影響が及ぶ可能性があると指摘しているほか、医療従事者には患者の治療に加えてワクチン接種の負担ものしかかっていると主張。インドでは月間1億5000万回のワクチン接種を目標としていますが、記事作成時点では1カ月当たり7000万~8000万回程度にとどまっているそうです。

Dasgupta氏は、ワクチン接種が広範囲で達成されるまで地域の封じ込め措置を強化する必要があり、地域に焦点を当てた強力なリーダーシップが重要だと指摘。言うまでもなく、政治集会や宗教祭といった大規模な会合は開かれるべきではないと述べました。

by Trinity Care Foundation

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in メモ, Posted by log1h_ik

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