価格の高い自転車は一体何が優れているのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて自転車に乗る人が急増したり、二酸化炭素排出料削減のために自転車による移動が推奨されたりと、自転車に対する関心が高まっています。しかし、いざ自転車を購入しようとすると、安価なモノから高価なモノまで多様な自転車が存在するため、どれを選べばいいのか迷ってしまいます。そこで、自転車ショップで整備士として働くアダム・ハーン氏が、自転車の各部品ごとの価格による違いを解説しています。
How to choose between a cheap or expensive bike | Popular Science
https://www.popsci.com/story/technology/cheap-expensive-bike-difference/
◆フレーム
自転車の骨格部分を担うフレームの中でも、最も安価なスチール製のフレームは150ドル(約1万6000円)未満で入手できます。スチール製のフレームは材料として使われる合金の種類によって価格が異なり、中でも「クロモリ」と呼ばれるクロムモリブデン鋼で作られたフレームは、その頑丈さから高級志向の自転車ユーザーからも好まれているとのこと。
150ドル以上の予算があれば、スチールではなくアルミニウム製のフレームを入手できます。アルミニウム製のフレームはスチール製のフレームと比べて軽量で設計の自由度が高いことが特徴ですが、軽量性と乗り心地を両立させるためには高い技術力が必要です。そのため、ハーン氏は「安価に手に入るアルミ製のフレームは、乗り心地が悪い場合があります」と指摘しています。
アルミ製のフレームよりも高価なフレームでは、材料としてチタンやカーボンを採用しています。これらの素材は、軽量で強度も高いため、優れた乗り心地を実現できます。
また、ハーン氏は「工場出荷時から、おかしな方向に曲がっている150ドルのフレームを見たことがあります」と述べ、フレームの価格は素材だけでなく品質にも関係すると主張しています。
◆サスペンション
マウンテンバイクなどの一部の自転車には、段差や石などによる衝撃を吸収するためのサスペンションが搭載されているほか、ネジなどでサスペンションの効きを調節することができるようになっているものもあります。
安価なサスペンションはバネの力を利用して衝撃を吸収しますが、高価なサスペンションは油圧ダンパーを備えたエア式のサスペンションによって衝撃を吸収します。ハーン氏によると、比較的安価な自転車に採用されている、バネを使ったコイル式のサスペンションでは、コイルを回して圧縮し反発力を強める調整ができるようになっているとのこと。反発力を強めることで、体重の重いユーザー向けに調整できますが、コイルを圧縮しすぎると小さな段差の時にはコイルがあまり機能しなくなり、荒々しい乗り心地になってしまうそうです。
また、ハイエンドモデルなどに搭載されているエアサスペンションは、一般的にコイル式のものより軽く、チューニングの幅も広い物が多いとのこと。また、その場で簡単に調節できるため「段差が大きい道路を走行する前に、より強い衝撃を吸収できるようにする」といったチューニングも可能になっています。
また、高価なサスペンションには安価なブッシュではなくベアリングが用いられており、よりスムーズな動作が期待できます。さらに、密閉式のベアリングであれば天候や汚れに対する耐久性も非常に高いものになります。
◆ドライブトレイン
自転車の部品のうち、ギアやチェーンなどの部品をまとめて「ドライブトレイン」と呼びます。多くの自転車では、ハンドルから伸びたケーブルで動くディレイラーという部品で変速を行っています。このディレイラーでチェーンを動かすのは繊細な動作なので、ここに高いか安いかの違いが出てくるとのこと。ハーン氏は「95ドル(約1万円)のディレイラーはプラスチック製で、必要なところだけ金属で作られています。安物のディレイラーには工場出荷時からゆがみがあって、6速から7速に変えるのに苦戦しなければならないこともあります」と話しました。
また、価格の違いはギアやチェーンにも表れてきます。ハーン氏は「高価なドライブトレインは、部品ごとに交換することが可能なため、故障した際に全ての部品を取り換える必要はありません」とコメントしました。
◆ブレーキ
自転車のブレーキには、大きく分けて「リムブレーキ」と「ディスクブレーキ」の2種類が存在しています。リムブレーキは車輪のリムを両側から挟んで減速させる仕組みで、長年自転車における主要な減速手法として用いられてきました。
ディスクブレーキは、リムの代わりに車輪の中央付近に取り付けられたディスクローターを挟んで減速させる仕組みです。ディスクブレーキには「雨でぬれたり、汚れたりしてもブレーキ性能が低下しない」という特徴があり、近年、マウンテンバイクやロードバイクのブレーキとして採用されることが増えています。
また、ディスクブレーキには、ワイヤーを引く力でディスクローターを挟む安価な「機械式」と、油圧シリンダーを用いる高価な「油圧式」が存在しています。ハーン氏は「油圧式のディスクブレーキは、機械式のディスクブレーキやリムブレーキと異なり、下り坂でも強力なブレーキ性能を発揮します」と述べ、高価な油圧式ディスクブレーキの性能の高さを強調しています。
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