一世を風靡した「スカンジウム」の自転車は一体なぜ姿を消してしまったのか?
普通の人は「スカンジウム」という金属にはあまりなじみがありませんが、スカンジウムを材料にした自転車は一時期サイクリストの憧れの的でした。そんなスカンジウムフレームの自転車が、サイクリストからもてはやされなくなってしまった経緯について、自転車やサイクリングを専門とする業界人向けニュースブログのbike blog or dieが解説しています。
What Ever Happened to Scandium Bike Frames? | bike blog or die
https://www.bikeblogordie.com/2016/11/what-ever-happened-to-scandium-bike.html
スカンジウムは、ウクライナの鉱山などでウランと共に採掘されることがある金属です。スカンジウム自体は柔らかい金属ですが、アルミニウムに少量混ぜることで、驚くほどの強度を持った合金を製造することが可能となります。最初にこの合金を発見したのは、冷戦時代のソ連で兵器を研究していた金属工学の専門家でしたが、ソ連崩壊と共に民間企業の製品にもスカンジウム合金が使われるようになりました。
bike blog or dieによると、スカンジウムがアルミニウムの強度を上げるのは、スカンジウムがアルミニウム粒子の再構成を促すからだとのこと。また、スカンジウムが含まれたアルミニウム合金は、熱処理後に冷えても割れにくいという特徴を持つようになります。これは、自転車を製造する上では非常に重要なことでした。というのも、軽さと強度から自転車用パーツとして注目を集めていた7005番アルミ合金には、「溶接するともろくなるのでフレームには使えない」という欠点があったためです。そこで、素材に使うアルミニウムにスカンジウムを添加することで、アルミパイプとアルミパイプを溶接して自転車のフレームにすることができるようになりました。
こうして、スカンジウムを使用していることをうたった自転車が数多く製造されるようになり、サイクリストの間でブームとなりましたが、流行は長続きしませんでした。その原因の一端はスカンジウムが高価なことだとされていますが、高級志向のサイクリストであれば自動車よりも高い自転車を購入することも珍しくないので、ただ高いというだけでは市場から消える理由にはなりません。
決定打となったのは、「偽造スカンジウムフレーム」が市場を席巻してしまったことでした。粗悪なフレームはすぐにヒビが入ったり割れたりしてしまうため、スカンジウムにはネガティブなイメージが付きまとうようになってしまったとのこと。
しかし、だからといってスカンジウムが自転車に使われなくなったわけではありません。むしろ、自転車業界は記事作成時点でも最大のスカンジウム市場の1つです。このことから、bike blog or dieは「スカンジウムを使用した自転車は消えたのではなく、ただブランドとしてもてはやされなくなっただけです」と述べました。
なお、bike blog or dieは「お気に入りの自転車フレームであるSalsa Podioはスカンジウムを使用していて、フォーク込みで確か600ドル(約6万3000円)未満で買ったと思いますが、軽さは2000ドル(約21万円)するカーボン製フレームと同じで、乗り心地は同等かそれ以上でした」と評しています。
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in 乗り物, Posted by log1l_ks
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