サイエンス

特定の細菌のみを殺すホーミングミサイルのような細菌「テイロシン」の働きとは?


特定の種類の細菌のみを破壊する細菌「テイロシン(ファージ尾部様バクテリオシン)」について、ローレンス・バークレー国立研究所の微生物学者、Vivek Mutalik氏が解説しています。

Systematic discovery of pseudomonad genetic factors involved in sensitivity to tailocins | The ISME Journal
https://www.nature.com/articles/s41396-021-00921-1

The incredible bacterial 'homing missiles' that scientists want to harness
https://phys.org/news/2021-04-incredible-bacterial-homing-missiles-scientists.html


「テイロシンは細菌によって作られる強力なタンパク質ナノマシンです」とMutalik氏は語ります。「テイロシンはバクテリオファージのように見えますが、「頭」の部分であるカプシドがありません。テイロシンは標的の細胞膜を突き破り、イオンなどの内容物を流出させる働きを持っています」とMutalik氏は続けます。

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テイロシンは標的の受容体タンパク質に結合し、細胞を死滅させます。多種多様な細菌がテイロシンを産生することができるとのことですが、細菌がテイロシンを生成するとテイロシンが細菌の細胞膜を突き破り、その細菌は死滅してしまうとのこと。ただし、一度放出されたテイロシンはその後も特定の細菌のみを標的とするため、他の細菌や細胞を攻撃することはありません。このような「特定の種類のみに働く」という性質から、テイロシンは「バクテリアホーミングミサイル」というニックネームが付けられています。

Mutalik氏らが「テイロシンがどのように細胞を判別するのか」を調査したところ、テイロシンは細菌の外膜に付着していたリポ多糖の違いを見分けているということが分かっています。


科学者はこのテイロシンを従来の抗生物質の代わりに使用することができないか研究を行っています。テイロシンは抗生物質と違い、人間にとって有益な細菌を死滅させることがないため、医療の分野で力を発揮することが期待されています。しかし、細菌が自然環境下でどのようにテイロシンを生成するのか、なぜ標的を選ぶのかなど、まだまだ未解決の問題があるとMutalik氏は述べています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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