人類は200万年にわたり食物連鎖の頂点捕食者だった
現生人類の祖先が、かつて200万年にわたって、地球上の頂点捕食者だったことが400以上の科学論文を経た新たな研究によって明らかになりました。
The evolution of the human trophic level during the Pleistocene - Ben‐Dor - - American Journal of Physical Anthropology - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1002/ajpa.24247
Humans Were Actually Apex Predators For 2 Million Years, New Study Finds
https://www.sciencealert.com/real-paleo-diets-may-have-been-far-more-carnivorous-than-anything-we-d-eat-today
Humans were apex predators for two million years | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-04/tu-hwa040421.php
研究を行ったのはイスラエル・テルアビブ大学のミキ・ベンドール氏、ラン・バーカイ氏、ポルトガル・ミーニョ大学のラファエル・シルトリ氏。
これまで行われてきた石器時代の食生活を復元する試みは、20世紀の狩猟採集生活との比較に基づくものでした。しかしベンドール博士らは、生態系全体の変化により単純な比較ができないと考え、人間の体に残されている痕跡から、当時の食生活の復元に挑みました。
まず、胃の酸性度が高かったことから、当時の人類は肉食であったと考えられるとのこと。強酸性の物質の生成・維持には大量のエネルギーが必要であることが、動物性食品を摂取していた証拠となるためです。また、胃の酸性度が高いのは、肉に含まれる有害なバクテリアから身を守るためであったとも考えられます。
肉食であったと考えられるもう1つの理由は、体内の脂肪細胞の構造にあるとのこと。雑食の動物だと、脂肪は比較的少数の大きな脂肪細胞に蓄えられますが、人類のように肉食だと小さな脂肪細胞が大量に存在します。このことはゲノムからも確認可能だとのこと。
さらに、考古学分野で行われた、人類の骨に含まれる安定同位体や狩猟方法の研究から、人類が中型・大型動物を専門に狩猟を行っていたことがわかっています。現代の大型動物捕食者がエネルギーの70%以上を狩猟対象から得ていることを考えると、人類は大型動物狩猟に特化した「超肉食動物」だったと考えられるそうです。
以下は、ベンドール氏らが更新世における人類の栄養レベルの進化をグラフ化したもの。左から右に137まで数字が並んでいますが、これは1つ1つが哺乳類種1つを表して、植物の相対消費量が多い順に並んでいます。つまり、左にあるほど草食、右にあるほど肉食となります。グラフ中で「E. hominins」となっている初期人類から「H. habilis(ホモ・ハビリス)」、「H. erectus(ホモ・エレクトス)」とどんどん動物性食品の摂取が増加しますが、これをピークとして再び植物性食品の摂取量が増えていく、ということが示されています。
動物性食品の摂取が減少していったのは、世界各地で大型動物が減少したことによるものとみられ、このあと人類は植物と動物の両方を家畜化し「農民」化していったと考えられています。
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