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プレイした人が「二度と遊びたくない」とつぶやく「友情破壊ゲーム」の元祖「ディプロマシー」とは?

by Maxime Bonzi

最古のRPGとされる「ダンジョン&ドラゴンズ」、現代ボードゲームの先駆けとされる「カタンの開拓者たち」、世界初のトレーディングカードゲームである「マジック:ザ・ギャザリング」など、ボードゲームの歴史にはエポックメイキングとなるようなゲームが多く存在します。そんな中でも特に歴史のあるボードゲームの1つである「ディプロマシー」について、海外のニュースサイト・Grantlandが解説しています。

» The Board Game of the Alpha Nerds
http://grantland.com/features/diplomacy-the-board-game-of-the-alpha-nerds/


「ディプロマシー」は第一次世界大戦時のヨーロッパが舞台のボードゲームで、プレイヤーはイギリス・ドイツ・ロシア・トルコ・オーストリア・イタリア・フランスというヨーロッパの列強7国になり、56の陸地と19の海域に分割されたボードを奪い合うというゲームです。1回のプレイ時間は4時間以上と、非常に時間がかかるゲームとしても有名です。

by Tom Hilton

「ディプロマシー」は英語で「外交」という意味で、プレイヤーはサイコロやカードなどではなく、外交交渉のみでゲームを進めていくのが特徴。つまり運の要素は一切なく、純粋にプレイヤーの交渉能力がものをいうゲームとなっています。プレイ時間は非常に長く、プレイヤーがお互いを裏切りまくる前提のゲームであることから、「ディプロマシー」は「友情破壊ゲーム」とも呼ばれます。

また、プレイヤーは手番を交代して進めていくのではなく、自分の動きを紙に書き留めて箱に入れ、この紙を読み上げながらボード上ですべてのコマが同時に動いていきます。そのため、実際のボード上だけではなく、郵便やメールをやりとりすることでプレイすることも可能です。


ディプロマシーは、ハーバード大学法学部の学生だったアラン・カラマーが1954年に開発しました。カルマーは1959年に自己資金で「ディプロマシー」を売り出し、ニューヨーク周辺のおもちゃ屋で販売しました。このゲームが1961年にGames Researchという小さなゲームパブリッシャーに取り上げられたことで、「ディプロマシー」は非常によく知られるゲームとなりました。

1964年に、「ディプロマシー」の大ファンでアマチュアSF同人誌の編集者だったジョン・ボードマンが、「ディプロマシー」を手紙のやりとりで行うことを考案し、自身のSF同人誌に「ディプロマシー」のプレイを呼びかける広告を掲載しました。いわば原始的なネットワークプレイともいえるこの方法は「ディプロマシー」の人気に火をつけることとなりました。

by Nacho Facello

また、「ディプロマシー」をあくまでも対面ゲームとしてプレイしたいという人たちは、自分の家の裏庭で集まって非公式な大会を開きました。この非公式大会は少しずつ大きくなり、やがて大学のキャンパスで定期的に開催される「DipCon」と呼ばれるイベントに成長しました。

1976年、「ディプロマシー」の権利は、戦略ボードゲームとウォーゲームの出版社として知られるAvalon Hillに購入されました。Avalon Hillは「Origins」というゲーム関連のイベントを開いており、このOrginsにDipConを招へい。結果としておよそ230人のプレイヤーが「ディプロマシー」を遊ぶために集まったそうです。

アメリカで生まれた「ディプロマシー」ですが、その後イギリスでも人気が急上昇。「ディプロマシー」のプレイ層は主に「SF同人誌の編集者とその読者」というコミュニティに集中しており、郵便によるやり取りでプレイする者が多かったことから、アメリカ国内にとどまらず海外との交流も盛んに行われました。

1988年には、史上初の世界大会である「World DipCon」がイギリスのバーミンガムで開催されました。このWorld DipConは現代でも10カ国が参加し、優勝者は世界チャンピオンとして世界中の「ディプロマシー」ファンから称賛されています。

そんな「ディプロマシー」の問題点は、新規プレイヤーがなかなか増えないということ。「友情破壊ゲーム」とまで呼ばれる「ディプロマシー」は、プレイヤー同士が直接対立しなければならない点で戦術的要素が強く、同じように会話を中心に進めていくテーブルトークRPGのプレイヤーからは敬遠されがちだそうです。

2020年のWorld DipConに参加した女子大生のショバン・ノーレンさんは、父親の影響で「ディプロマシー」にはまったそうです。13歳から「ディプロマシー」をプレイしているというノーレンさんは「『ディプロマシー』はある意味ボードゲームの元祖というような存在で、非常に知的な人を引きつけるゲームです。また、『ディプロマシー』は内向的な人にはむいていません。このゲームは会話が好きな人を引きつけますが、話すことが苦手な人だとすぐに負けてしまいます」と語りました。

by COD Newsroom

ノーレンさんは「ディプロマシー」のコミュニティが偏っていることから、女性プレイヤーを増やそうと努力しているそうですが、難航していると述べています。一度、ノーレンさんは自分の親友を「ディプロマシー」のイベントに連れて行きましたが、あまりにもギスギスするゲーム性のせいで、イベント後の親友は「もう二度と遊びたくない……二度と……」としかつぶやかなかったそうです。「ディプロマシー」を長年遊んでいるというデイブ・マレツキーさんは「新しいプレイヤーを『ディプロマシー』に参加させることは簡単ですが、再び遊んでもらうのは非常に難しいものがあります」と述べました。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk

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