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自然豊かなリンゴの名産地が「ビットコイン鉱山」の街へと変貌した経緯とは?


アメリカ・ワシントン州にあるイーストワナッチーは、リンゴの果樹園が広がる人口1万5000人弱の街です。そんなイーストワナッチーが、ビットコイン・マイニング事業者に席巻された経緯を、アメリカのニュースメディア・POLITICOが取材しました。

This is what happens when bitcoin miners take over your town – POLITICO
https://www.politico.eu/article/this-is-what-happens-when-bitcoin-miners-take-over-your-town/

POLITICOに記事を寄稿したジャーナリストのポール・ロバーツ氏は、イーストワナッチーでビットコイン事業に携わっている複数の人に取材を行いました。イーストワナッチーでマイニング事業のコンサルタントをしているローレン・ミーエ氏もその1人。もともとは自分自身でマイニング事業を行っていたというミーエ氏が、イーストワナッチーに目をつけたのは、コロンビア川にある5つのダムと水力発電所のおかげで、この地域の電力が非常に安価だったからでした。


イーストワナッチーはリンゴの名産地なので、ミーエ氏は使われていない果物倉庫でマイニング事業を始めようとしましたが、果物倉庫は既に他のマイニング業者に占領されてしまっていました。そこでミーエ氏は、イーストワナッチー中の廃工場や廃業したコンビニの跡地を訪ねては、電気設備がしっかりしている場所を探しました。そして、古い洗車場を手がかりにマイニング向きの立地を見つけ、そこに0.5メガワット規模のマイニングファームを設置しました。ミーエ氏が洗車場に目をつけたのは、洗車場では大きなポンプを動かす必要があるため、近隣に大きな配電所があるはずだと考えたからとのこと。

ミーエ氏のようなマイニング業者が他にも続々と参入したため、イーストワナッチーやコロンビア盆地は2018年には世界有数のビットコイン産地となりました。しかし、同時にマイニング業者と地元住人との摩擦をはじめ、破産、訴訟、贈収賄、さらには地下室などでひそかにマイニングを行う業者とそれを取り締まる電力会社の間の争いなど、さまざまな問題も発生するようになったとのことです。

こうした問題に拍車をかけたのが、「加速度的にマイニングが困難になる」というビットコインの性質です。マイニングファームの建設を仕事にしているデビッド・カールソン氏も、かつては自宅で小規模なマイニングを行っていました。そうして得たビットコインがまとまった金額になることに気付いたカールソン氏は、仲間とともにメガワット級の大規模なマイニング事業を立ち上げようとしましたが、実現しませんでした。


というのも、ビットコインは約4年に1回ごとに新規発行されるビットコインの数が半分になる「半減期」が発生するよう設計されているため、将来的な採算のめどが立たなかったからです。これ以外にも、ビットコインにはマイニングに必要な「採掘難易度(ディフィカルティー)」が時間と共に上昇し、それに合わせて絶えずマイニング用の機器を増設もしくは更新しなければならないという問題もありました。

こうした問題に直面したマイニング業者は、マイニングファームをどんどん拡張していくか、カールソン氏のように別の事業に転向することを余儀なくされました。カールソン氏は、絶え間ない拡大を必要とするマイニングの難しさについて、「生き残った人と敗退した人を分けたのは、ひとえに電気料金の問題だったと思います」と話しました。

マイニングが大電力を消費するという問題に頭を悩ませているのは、マイニング業者だけではありません。ワシントン州・シェラン郡の電力会社で保守作業員のリーダーを務めるジョン・ストール氏は、民家などでひそかにマイニングを行っている業者を「ローグ・オペレーター(ならず者操業者)」と呼んでいます。ストール氏によると、ローグ・オペレーターのような小規模なマイニング業者は、適切な許可を受けたり、十分な機器をそろえたりせずにマイニングを行うため、家庭用の電力網を圧迫してしまうとのこと。また、マイニング業者が負荷をかけすぎたせいで変圧器がオーバーヒートし、山火事が発生したこともあるそうです。


こうしたインフラ面での制約もあり、コロンビア盆地でマイニングを行うのは限界に達しつつあるとのこと。カールソン氏は、ロバーツ氏にあてた電子メールの中で、「もうコロンビア盆地の送電線やインフラは十分ではないので、今後はアメリカやカナダを回ってマイニング場所を探すつもりです」と話しました。

またミーエ氏は、「暗号資産やコロンビア盆地でのマイニング事業の長期的な見通しは明るい」としつつも、マイニング事業者が自己資金でマイニングを行えるような時代は終わったことを指摘。「私には2人の子どもがいるので、借金をするリスクを冒してまで規模拡大競争に加わるつもりはありません。ビットコインはリスクもリターンも大きくなりつつありますが、その戦いの最前線に身を置きたいとは思いませんね」とコメントしました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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