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着実に人気を集めて支持を広げるドイツ生まれのボードゲーム「ユーロゲーム」の魅力とは?

By boB Rudis

コンピューターゲームが全盛のこの時代において、昔ながらのアナログなボードゲームへの支持が広がりを見せています。その多くは「ユーロゲーム」または「ドイツゲーム」と呼ばれるタイプのゲームで、アメリカでも愛好者が着実に増加しているとのこと。その背景には、アメリカ製ゲームとは全く異なる世界観やゲームの目的などの要素が隠されています。

Settlers of Catan and the Invasion of the German Board Games - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/business/archive/2018/01/german-board-games-catan/550826/?single_page=true

2010年代に入ったころから、アメリカでは昔ながらのボードゲームの売り上げが好調に転じています。直近のデータでは、アメリカ国内におけるボードゲームの売り上げの伸びが2016年から2017年の1年で28%もあったという統計も発表されているとのこと。この状況についてあるアナリストは、ゲームのターゲット層が「子供から大人に変わった」という理由を挙げており、この流れは2020年ごろまで続くと予測しています。

この成功の背景には、大人が子どものように楽しめるゲームの出現が関連しているとみられます。「史上最悪のカードゲーム」とも呼ばれる人権侵害カードゲーム「Cards Against Humanity」や、ヒトラーを首相につけようとするとファシストとそれを阻止しようとするとリベラル側が戦うボードゲーム「Secret Hitler」、「子猫が爆発したら負け」という謎の設定が人気を呼ぶ「Exploding Kittens」などのゲームがクラウドファンディングのKickstarterなどから誕生し、ファンを着実に増加させています。今やKickstarterの最大のプロジェクトカテゴリは「ゲーム」で、ボードゲームはこれらのプロジェクトの約4分の3を占めるほどの規模に成長しています。

ボードゲーム市場がクラウドファンディングの出現で急成長を遂げ市場規模を拡大中 - GIGAZINE


同じように成長しているのが、ドイツ生まれの「カタンの開拓者たち」のようなホビー系ジャンルのボードゲームです。このジャンルのゲームは、多大な人気をほこる「モノポリー」や前出の「Cards Against Humanity」に比べると比較的小さな勢力ではありますが、その成長速度は目を見張るものがあります。ポップカルチャー・ギークカルチャー系メディアのICv2によると、ホビー系ボードゲームの売上高は2013年から2016年にかけて7500万ドル(約83億円)から3億500万ドル(約338億円)に増加しました。それに伴い、ファンの熱気も着実に高まっています。インディアナポリスで開催される北米最大のホビーゲームコンベンション「Gen Con」では、2017年の来場者が20万人を超え、イベントの歴史の中で初めて出展者バッジが売り切れるという事態を生んでいます。

しかしこのムーブメントは、ヨーロッパにおけるボードゲーム人気とは比べものになりません。ドイツでは以前からボードゲームの人気が高く、さまざまな名作ゲームが生みだされています。その最たる例が「ドイツゲーム」であり、「カタンの開拓者たち」はその代名詞と呼べるゲームです。

カタン (CATAN) 日本語版公式ページ
http://catan.jp/

アメリカ生まれで、20年以上のゲームデザイン歴を持つフィル・エクランド氏は、活躍の場をアメリカからドイツに移しています。エクランド氏は子どものころからゲームづくりに魅せられていたそうですが、アメリカで最も人気があり広く支持されている「子ども向けゲーム」の状況に失望を隠せていなかったとのこと。そのため、エクランド氏は自分で作りたいゲームを作り、それを求める人たちに送り届けるという活動を続けてきたそうです。

地道な努力を続けてきたエクランド氏によると、その努力は必ずしも報われることばかりではなかったとのこと。ボードゲームはアメリカの「オタク界隈」でも底辺に位置づけられることが多く、ゲームのコンベンションに出展したときに多くの観衆を集めるのはコンピューターゲームのブースで、会場のかたわらで小さなブースを構えるエクランド氏のところに来る来場者はとても少なかったそうです。

しかし、それは今やエクランド氏にとって過去の話です。エクランド氏は活躍の場をドイツに移し、カルト的な地位を確立しています。エクランド氏はもうアメリカに戻るつもりはないとのことで、「私がこの国に来た理由の1つは、人々がボードゲームを真剣に受け入れる場所であることを知っていたからです。デザイナーはステータスを持っています。彼らは自分の名前を箱に入れ、人々はその名前を見てゲームを買うかどうかを決めます」と語っています。

By sidkid

アメリカとヨーロッパ、特にドイツのゲームには実は非常に大きな考え方の違いが存在しています。エクランド氏や、他のユーロゲームのクリエイターはこの違いの根源を第二次世界大戦の時代にさかのぼって説明しています。

アメリカで20世紀後半に作られたボードゲームは、典型的に「戦争」をシミュレートするものとなっていました。戦略ゲームの「リスク」や、映画「スタートレック」のスピンオフ作品ともいえる「Star Fleet Battles」、艦隊系ウォーゲームの「Victory in the Pacific」などのボードゲームはいずれも、プレイヤーは軍の師団をマップ上に展開して戦う指揮官の役目を担います。

しかし、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツでは、この類いのゲームが人々の間で共鳴することはほとんどありませんでした。その替わりにドイツをはじめとするヨーロッパで人気を集めたのが、「コミュニティ」や「文明」、「農業」などをキーワードにしたボードゲームだったとのこと。そして結果的に、このようなジャンルであることが男性のみならず女性のボードゲームファンを開拓するという結果を生むことになりました。

By P M M

エクルンド氏はこの点について、「私が若い時に作った最初の作品の1つは、人間が宇宙で他の人種と戦うスタートレック型のゲームでした。しかし、私はそれが多かれ少なかれ人種差別主義の概念を含むことに気がつきました」と述べています。ドイツに移り住んだエクルンド氏は、アメリカのゲームとは正反対の世界観を持つ「Pax Renaissance」などのゲームを生みだしてきました。

「Ameritrash」とやや軽蔑的に呼ばれることもあるアメリカのボードゲームは、明確な攻撃性を備える内容となっています。他のプレイヤーと競い合い、時にはつぶし合うことで財を築く「モノポリー」をプレイすると並々ならぬ高揚感に襲われることもありますが、これがマイナスに作用すると、ヘタをすれば友人関係にヒビが入ってしまう事態も起こりかねません。一方、ユーロゲームでは「資本主義」や「略奪」と直接的につながる要素は排除されていることが多くあります。例えば、スペインをテーマにしたゲーム「El Grande」では、プレイヤーが相手を直接攻撃することが認められていません。そのかわり、プレイヤーは「騎士」を相手国の周辺に配置することで戦いを有利に進める戦略をとります。このように、ヨーロッパのゲームは「受動的な攻撃性」を持つものが多いという特徴があります。

By Patrice

このスタイルのゲームでは、数多くの物資を入手したり使ったりすることで、別のものを生みだすといったプロセスを経ることがあります。そのため、ゲームになじみがない人にとっては「木材」「レンガ」「鉱石」「家畜」「小麦」などの要素が非常に複雑に思えることがありますが、ひとたびこのスタイルに慣れて「成長させる」という概念を理解できるようになると、ゲームの奥深さがわかるようになってその魅力に取りつかれてしまうとのこと。その結果、ゲームプレイの内容は「他者との争い」から「自分との戦い」へとシフトし、激しい衝突が鳴りを潜めるようになることで、友人・家族関係にヒビが入ることも少なくなるという結果にたどり着きます。

このように、ひと口に「ボードゲーム」といっても、そのテーマや考え方によってさまざまなスタイルが存在しており、実に奥深い世界が広がっていることがわかります。ボードゲームは子どものころに「人生ゲーム」などで遊んだきりだという人もいると思いますが、進化して魅力を深めている現代のボードゲームの世界を垣間見てみるのも面白いかもしれません。

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in ゲーム, Posted by logx_tm