サイエンス

「普通の風邪のウイルス」が新型コロナウイルスを駆逐することが判明


培養された人の細胞に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と風邪の代表的な原因ウイルスといわれるライノウイルスを同時に感染させる実験の結果、「ライノウイルスの存在がSARS-CoV-2の複製を阻害する」ということが判明しました。ウイルスとウイルスの相互作用に関する新発見により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策がさらに進展すると期待されています。

Human rhinovirus infection blocks SARS-CoV-2 replication within the respiratory epithelium: implications for COVID-19 epidemiology | The Journal of Infectious Diseases | Oxford Academic
https://academic.oup.com/jid/advance-article/doi/10.1093/infdis/jiab147/6179975

University of Glasgow - University news - Infection with common cold might provide some protection against COVID
https://www.gla.ac.uk/news/headline_781603_en.html

ライノウイルスは風邪の代表的な原因ウイルスの1つで、33度という温度でしか増殖しないことから、上気道にある細胞にしか感染しないといわれています。これまでの研究により、ライノウイルスと他の呼吸器系ウイルスの相互作用が、感染症の重症度や感染の広がり方に影響を与えることが分かっていましたが、SARS-CoV-2との相互作用については不明なままでした。


そこで、イギリス・グラスゴー大学のパブロ・ムルシア教授らの研究チームは、人間の呼吸器系の細胞にSARS-CoV-2とライノウイルスを同時に接種して培養し、SARS-CoV-2が増殖する様子を観察するという実験を行いました。その結果、SARS-CoV-2は急激に減少し、48時間後には全く検出されなくなりました。この傾向は、先にライノウイルスに感染させてから、その24時間後にSARS-CoV-2を投与した場合でも同様でした。さらに、先にSARS-CoV-2に感染させてから、24時間後にライノウイルスを投与した場合でも、SARS-CoV-2はライノウイルスが投与された直後に急激に減少し、すぐに消滅してしまったとのことです。

この結果について、ムルシア教授は「今回の研究により、ライノウイルスが人間の呼吸器の細胞の自然免疫反応を誘発し、SARS-CoV-2の複製を阻止することが明らかになりました。つまり、軽い風邪を引き起こすウイルスに感染することによって起きる免疫反応が、SARS-CoV-2に対する一時的な防御となり、SARS-CoV-2の感染を阻止したりCOVID-19の重症化を抑制したりする可能性があるということです」と述べました。


ムルシア教授はさらに、「次の段階の実験では、今回確認されたウイルスとウイルスの相互作用について分子レベルで研究し、この現象がCOVID-19に与える影響をさらに深く理解するつもりです。そして、この知見を応用して、COVID-19への対策や感染症を抑制する戦略を立てることができればと考えています。それまでは、新型コロナウイルスワクチンがCOVID-19から身を守る最善の方法となるでしょう」と述べて、今後の研究に意欲を見せると同時に、ワクチンの有効性を改めて強調しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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