WHOがアストラゼネカ製ワクチンの利用継続を各国に要請、「メリットがリスクを上回る」と指摘
イギリスの製薬会社であるアストラゼネカが開発したワクチンを接種後に、血栓が発生するなどの副作用が疑われる事例が報告されていることを受けて、EUを中心とした国々で同ワクチンの使用を見合わせる動きが広がっています。この問題に対し、WHOが2021年3月17日に「アストラゼネカ製ワクチンの利点はリスクを上回っている」との声明を発表し、ワクチンの利用を継続することを要請しました。
WHO statement on AstraZeneca COVID-19 vaccine safety signals
https://www.who.int/news/item/17-03-2021-who-statement-on-astrazeneca-covid-19-vaccine-safety-signals
WHO on AstraZeneca: Vaccinations should continue
https://www.cnbc.com/2021/03/17/who-on-astrazeneca-vaccinations-should-continue.html
Amid panic over AstraZeneca vaccine, WHO urges countries to keep using it | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/03/amid-panic-over-astrazeneca-vaccine-who-urges-countries-to-keep-using-it/
ドイツ、フランス、イタリアは3月15日に、アストラゼネカ製ワクチンで副作用が懸念されていることを受けて、「ワクチンの接種を中断する」と相次いで発表しました。このほか、デンマークやノルウェーなど合計で12のEU加盟国が、アストラゼネカのワクチンの使用を停止する意向を示しています。
WHOの主任科学者であるソーミャ・スワミネイサン氏は3月15日の記者会見で、「毎日誰かが亡くなっているので、重要なのはワクチン接種後に亡くなったことではなく、それがワクチンと関連しているかどうかです。そのため、あらゆるデータを精査していますが、これまでのところ報告されている有害事象とワクチンとの関連性は認められません。なぜなら、ワクチンを接種したグループで有害事象が発生した割合は、ワクチンを接種していない別のグループで予想される割合よりも低いからです」と述べました。
さらに、WHOは17日に発表した声明の中で「WHOの諮問委員会は、アストラゼネカ製ワクチンの安全性に関する最新のデータを慎重に評価しており、評価が完了し次第、直ちにその結果を一般に公表します。現時点では、WHOはアストラゼネカ製ワクチンの利点はリスクを上回っていると考えており、予防接種の継続を推奨しています」と述べて、改めてワクチンの利用継続を推奨しました。
また、欧州医薬品庁(EMA)のエグゼクティブディレクターであるエマー・クック氏も、「予防接種の安全性を評価するプロセスが継続中」としながらも、「これまでのところ、ワクチン接種が有害事象を引き起こしたことを示す兆候はありません」と述べて、ワクチンの利用継続を支持しています。
一部のヨーロッパ諸国がアストラゼネカ製ワクチンの利用を見合わせている一方で、ベルギー、ポーランド、チェコ共和国などでは引き続き同ワクチンの接種が実施されています。中でも、ベルギーのフランク・ファンデンブルック保健相は、「いまアストラゼネカワクチンの予防接種を一時停止することは無責任です」と述べて、ワクチンの危険性をあおる動きを非難しました。
アストラゼネカ製ワクチンは、アメリカではまだ認可されていませんが、アストラゼネカはアメリカでの臨床試験を完了しており、間もなくその結果を発表するとのこと。また、日本でも使用が申請されていますが、記事作成時点では承認されていません。
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