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ウェブの父ティム・バーナーズ=リーが「悪いことが起きにくいソーシャルネットワークが必要」だと主張


イギリスの計算機科学者であるティム・バーナーズ=リー氏は、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)に在籍していた際にWorld Wide Web(WWW)を考案した功績から「ウェブの父」とも呼ばれる人物。そんなバーナーズ=リー氏がイギリスの大手メディア・The Guardianのインタビューで、「悪いことが起きにくいソーシャルネットワーク」が必要だと主張しています。

Tim Berners-Lee: ‘We need social networks where bad things happen less’ | Tim Berners-Lee | The Guardian
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2021/mar/15/tim-berners-lee-we-need-social-networks-where-bad-things-happen-less

バーナーズ=リー氏がWWWを発明したのはCERN在籍時の1989年3月12日だとされており、その後の数十年でWWWは世界中に広がって日常生活に必要不可欠なものとなりました。WWWの公開に際してバーナーズ=リー氏は関連する特許を取得しておらず、その後の発展も使用する人々の手に委ねました。


そんなバーナーズ=リー氏が2008年に設立したWorld Wide Web Foundationは、WWWの誕生日である毎年3月12日に年次書簡を発表しており、2021年3月12日にも新たな書簡が発表されました。その中でバーナーズ=リー氏は、多くの才能ある若者がWWWを利用して新型コロナウイルスのパンデミックや差別と戦っている点に触れる一方、およそ22億人もの若者が安定的なインターネットに接続できていない現状を指摘しました。

この中で特にバーナーズ=リー氏が特記しているのが「有毒なインターネット」の危険性についてです。近年の若者はオンラインの虐待や誤情報、その他の危険なコンテンツに直面しており、特に人種・宗教・セクシュアリティ・障害・性別といった面でマイノリティの人々が被害を受けているとのこと。有害なインターネットによって優秀な人々の心に悪影響がおよび、リーダーとなる可能性があった人々の芽が摘まれているとバーナーズ=リー氏は警鐘を鳴らしました。


The Guardianのインタビューでバーナーズ=リー氏は、若者は有毒なインターネットを管理する能力が低く、女性やLGBTQの人々が被害を受けやすいと指摘。こうした問題に対処するため、テクノロジー企業は若者の権利を尊重する製品とサービスを構築する必要があり、若者の目線に立ってサービス説明するべきだと主張しました。

また、バーナーズ=リー氏は「ソーシャルネットワークで悪いことが起きにくくする方法」について言及しており、TwitterやFacebookによる情報のファクトチェックもプラットフォームの悪化を防ぐ手段の1つだとしています。さらに、「百科事典のキュレーションシステムであるWikipediaのように、『コミュニティ』のキュレーションシステムを構築したらどうでしょう」と述べ、文化的な分裂を防いで多様な人々の理解を深めるコミュニティをプラットフォームが提供するシステムの可能性を訴えました。

近年ではソーシャルメディアが選挙や重大な政治的決定に影響を与えることが示されていますが、一方で自分たちが見たいものしか見られなくなる「フィルターバブル」や、閉鎖的なコミュニティでの交流を繰り返して特定の信念が増幅される「エコーチャンバー効果」によって人々の二極化が進んでいることも指摘されています。

SNSなどのアルゴリズムは若者をプラットフォームに引き留めるため、エンゲージメントを最大化するように訓練したAIに基づいた操作を行っています。しかしバーナーズ=リー氏は、「10代の若者のエンゲージメントを最大化するようにAIを訓練した場合、ソーシャルネットワークにおける特定の面ではうまく機能します。しかし、ティーンエイジャーの幸福や能率を最大化するようにAIを訓練すると、全体としてまったく異なる結果が得られます」と述べ、ティーンエイジャーの幸福や能率に目を向けた上で最適化を行うべきだと主張しました。


現代のインターネットにおける問題としては、巨大テクノロジー企業による支配も頻繁に指摘されています。バーナーズ=リー氏は、GoogleやFacebookといった巨大テクノロジー企業を解体するという提案に賛成だそうで、「スタンダード・オイルAT&Tの経験から、アメリカ政府が大企業を解散させることもあり得ると知っています。現在、巨大テクノロジー企業の解体ついて多くの議論があり、それは可能です」とコメント。

また、近年のバーナーズ=リー氏は大企業による中央集権的なウェブの支配に対抗するため、オープンソースプラットフォームの「Solid」に携わっています。Solidは全てのユーザーが連絡帳・To-Doリスト・カレンダー・音楽ライブラリなどのデータを「パーソナル・オンライン・データ・ストア(POD)」に保存し、企業のアクセスを許可するデータをユーザーが制御するというもの。この仕組みにより、大企業が提供するサービスやコンテンツを享受するために個人情報を差し出す現在のモデルを変えることが可能だバーナーズ=リー氏は主張しています。

「ウェブの父」ティム・バーナーズ=リーが新プラットフォーム「Solid」を発表 - GIGAZINE


Solidを開発するスタートアップのInruptは、BBCNHSナショナル・ウエストミンスター銀行などと共にSolidベースのプラットフォーム構築に取り組んでいるそうですが、依然としてSolidの展開は非常に限定的です。

The GuardianがSolidの展開について尋ねたところ、これまでは実際のアプリやサービスよりも技術的な要点に多くの時間が費やされているため、Solidの展開が進んでいないとバーナーズ=リー氏は返答。より広い範囲に展開するには、さらに1~2年かかるのではないかとの見解を示しています。「私たちは非常に前向きです。私たちは明らかに公平で、建設的で、ユーザーに力を与えるシステムを構築しています」とバーナーズ=リー氏は述べ、開発チームはSolidに対してポジティブに取り組んでいると語りました。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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