感染力の強い新型コロナウイルスの英国型変異株がワクチンの有効性を低下させる変異を獲得しつつある
イギリスの研究者が、多数確認されている新型コロナウイルス変異株の中でも「感染力が強い」とされる「B.1.1.7」が、スパイクタンパク質の変異である「E484K」を獲得したという事例を少なくとも15件確認したと発表しました。スパイクタンパク質は新型コロナウイルスの表面にあり、人の受容体に結合してウイルスの媒介を助けるもの。このスパイクタンパク質の変異の1つである「E484K」はファイザー製ワクチンなどの有効性を10分の1程度低下させることが判明しており、もともと感染力の強いB.1.1.7がE484Kを獲得することで、ワクチンの有効性がさらに低下する可能性があります。
B.1.1.7 coronavirus variant is picking up a worrisome new mutation | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/02/new-mutation-spotted-in-b-1-1-7-variants-spells-trouble-for-covid-vaccines/
Will coronavirus really evolve to become less deadly?
https://theconversation.com/will-coronavirus-really-evolve-to-become-less-deadly-153817
2021年2月1日、英国公衆衛生局は「20万を超えるウイルスを調査した結果、E484Kを持ったB.1.1.7はわずか11個だけだった」と述べています。E484Kを持つB.1.1.7は実験の段階で突然変異によってのみ発生することが示唆されているものの、詳しい研究にはさらに多くの研究と臨床データが必要とのこと。
B.1.1.7はこれまで主流だった新型コロナウイルスよりも70%感染しやすく、南アフリカで発見された変異株「501Y.V2」と並んで猛威を振るっています。イギリス政府が設立した新型コロナウイルスについての諮問委員会「NERVTAG」は「E484Kを獲得したB.1.1.7は死亡リスクを30%増加させる」と推定しています。501Y.V2や2021年1月頃に発見された変異株P.1などもE484Kを獲得しており、これらの変異株に対しては既存のワクチンの効果が期待できないとされています。
海外メディアArsTechnicaの記者であり微生物学の博士号を取得しているベス・モール氏は「既存のワクチンは新型コロナウイルスの予防に十分効果的であるが、ウイルスの感染を許す限り新たな変異株の登場は避けられない」と語っています。
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