Appleは「金儲けのチャンスを無駄にしないように」Apple TVのサブスクリプション料金設定時に交渉していたことが明らかに
Appleのセットトップボックスである「Apple TV」が発表されたのは2006年のこと。その後、AppleはiTunes経由での映像レンタルサービスや特定のチャンネルだけをサブスクリプション登録できるようなサービスを拡充し、iPhoneやApple TVで映像コンテンツを視聴することは当たり前のこととなっていきました。このApple TVにおける特定チャンネルとのサブスクリプションについて、Appleは「金儲けのチャンスを無駄にしないように」交渉を進めていたことが明らかになっています。
Apple execs discussed not ‘leaving money on the table’ when setting Apple TV subscription fees - The Verge
https://www.theverge.com/2021/1/26/22250363/apple-tv-subscription-fees-emails-percentage-cut-epic-lawsuit
AppleはApp Storeで配信されるアプリに対して、売上の30%を手数料として支払うように求めています。この手数料があまりにも高いということで、フォートナイトやUnreal Engineの開発元であるEpic GamesはAppleを訴えました。
この法廷闘争に関する資料として提出されたApple幹部のメールから、Appleが「金儲けのチャンスを無駄にしないように」と、慎重に取引先とサブスクリプション料金の設定交渉を進めていたことが明らかになっています。
法廷闘争の資料として公開された「Apple幹部のメール」は、2011年にAppleがApple TVのサブスクリプション料金をどのように設定するかについて議論していた際のもので、ソフトウェアおよびサービス担当のヴァイスプレジデントであるエディ・キュー氏らによるやり取りであることが明らかになっています。
AppleはApple TVのサブスクリプション料金を設定する際、どのように手数料を徴収するかについて、さまざまなオプションを検討していました。また、NBAやMLBといった人気コンテンツと個別に取引を行う可能性についても検討していたことが明らかになっています。
その中で、Appleはサブスクリプションサービスを提供してくれるコンテンツパートナーをさまざまな形式で分類しており、どのパートナーが継続的に手数料を支払ってくれるか、どのパートナーが継続的な手数料の支払いに否定的であるか、などが明確に記されています。資料によると、ケーブルTVや衛星放送などは継続的な手数料の徴収に反対していた模様。
その後、AppleはiTunes経由で配信される映像コンテンツに対してかかるトランザクションやサブスクリプションは、App Storeと同じ30%の手数料を徴収する必要があるという結論に至ります。また、Apple TV向けのアプリケーションから配信サービスのウェブサイトへ飛び、顧客が直接サービスに有料会員登録するといった「Appleの支払い構造をバイパスするような行為」についても、どのように対処すべきか議論が繰り広げられました。
当時のAppleにとっての懸念は、「App Storeで設定した支払い構造を損なわないように料金を設定すること」でした。Appleの幹部によるメールのやり取りの中には「手数料が30%未満の取引はしたくありません。App Store上に存在するのは手数料30%の取引のみであり、Apple TVのサブスクリプションで別の取引を行うことは不可能です。手数料30%での取引が不可能な場合、1度限りの契約金を支払ってもらうということも考えられますが、こういった取引がApp Store側に波及しないように十分に注意する必要があります」という記述もあり、Apple側がApp Storeの支払い構造を崩さないために「30%の手数料」にこだわっていたことがよくわかります。
なお、2011年の時点ではApple TV向けのApp Storeは存在しておらず、Appleはサービスごとに個別のパートナーシップを結んでいたという事実を覚えておく必要があります。
海外メディアのThe Vergeは、「Appleはプラットフォームを成功させるために必要な任意の定義されたアイデアを持っているようには思えません。あくまでも利益を最大化し、最高の成果を挙げるためにプラットフォームのルールを形成しているように思えます」と記し、Epic Gamesとの法廷闘争の中で「App Storeの手数料30%というルールは、アプリ経済における公平性に不可欠である」と主張するAppleに対して疑問を呈しています。
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