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日本でもAppleのApp Storeが独占禁止法の調査を受ける、開発者からはその他の問題も指摘


人気バトルロイヤルゲームのフォートナイトやゲームエンジンのUnreal Engineを開発するEpic Gamesが、Appleの運営するApp StoreおよびGoogleの運営するGoogle Playがあまりに高額な手数料を徴収しているとして訴訟を起こしました。これを受け、日本の独占禁止法を運用している公正取引委員会の杉本和行委員長も、独自の調査を進めると明言しました。Bloombergは日本のゲーム開発者からのいくつのかの声を挙げ、「日本ではAppleによる独占以外の部分での不満が噴出している」と報じています。

Apple App Store Draws New Scrutiny in Japan, Epicenter of Gaming - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-09-03/apple-app-store-draws-new-scrutiny-in-japan-epicenter-of-gaming

フォートナイトの開発元であるEpic GamesはApp Storeが売上の30%を手数料として徴収している点を挙げ、独占禁止法に違反していると主張しています。公正取引委員会の杉本委員長も、App Storeについて独自に調査を行うと発言しているわけですが、Bloombergはそれとは別に日本のゲーム開発者から「App Storeガイドラインの一貫性のなさ」や「Appleによる予測できない決定」「コミュニケーションの欠落」などの問題が指摘されていると指摘しています。


モバイルアプリ市場は日本のゲームメーカーにとっても非常に大きな収益源となっており、ファイナルファンタジーシリーズやドラゴンクエストシリーズでおなじみのスクウェア・エニックスは、同社の売上の40%をスマートフォン向けアプリに依存しています。また、ソニーの子会社であるアニプレックスの人気アプリである「Fate/Grand Order(FGO)」は、2019年に711億円を売り上げており、ソニーの決算説明会の中でFGOの売上に関する質疑応答がされるほど重要なコンテンツとなっています。

Q: モバイルゲームの売上減、FGOのことだと思うが、一時的なものなのか、それともピークアウトしたのか
A: 1Q2Qと好調に推移したが3Qは前年実績を下回った。ユーザー数は減っていないが一人あたりの課金額が減っている。ユーザーエンゲージメントを大切にし、ライフタイムバリューを大切にしたい。 pic.twitter.com/twD2lcdokI

— Takashi Mochizuki (@6d6f636869)


最新の調査データによると、日本のApp Storeエコシステムにおける2019年の売上は370億ドル(約3兆9000億円)と推定されており、内訳は物理的な商品やサービス(通販サービスなど)の売上が240億ドル(約2兆5000億円)、デジタルコンテンツの売上が110億ドル(約1兆2000億円)、アプリ内広告が20億ドル(約2100億円)です。


日本のゲーム開発者にとっても重要なプラットフォームとなっているApp Storeですが、ゲーム開発者によると、App StoreよりもGoogle Playの方が審査プロセスがよりスムーズになり、コミュニケーションが改善されつつあるそうです。つまり、日本のゲーム開発者にとってApp Storeは改善がみられず、多くの問題を抱えたままとのこと。

複雑な審査プロセスやコミュニケーションの難しさが指摘されているApp Storeですが、そんな困難を解決するために、日本でも審査プロセスの通過を支援するサービスが登場しています。このサービスを提供しているのはアプリ開発企業のプライムセオリーです。同社の東海林誠代表は、Bloombergに対して「Appleのアプリ審査はあいまいで主観的で不合理なことがままあります」「アプリ開発者へのAppleの対応は、しばしば唐突かつ陳腐なものであったりしますが、それでも開発者側がAppleに『次はどのような対応をすればよいでしょうか?』と丁寧に対応していく必要があります」と述べ、App Storeの審査プロセスの通過を支援するサービスの重要性を説いています。

プライムセオリーは日本に拠点を置く1400人のアドバイザーやカスタマーサービスの従業員により、開発者に電話やメールで質の高いサポートを提供しているとのこと。また、App Storeのレビューガイドラインを翻訳したり、開発者向け年次会議の映像に日本語字幕をつけて配信したりもしているそうです。


Bloombergは「そもそも日本のゲーム業界は、1980年代に任天堂のファミリーコンピューターのカートリッジから始まったため、App Storeが売上の30%を手数料として徴収している点を気にしている開発者はそれほどいません。それよりも、Appleからより良いサービスを受けたいと考えている開発者の方が多いです」と記しています。

あるゲームスタジオはAppleがゲームアプリのアップデート審査リクエストに1カ月以上応答しなかったため、期間限定イベントの開催を断念したそうです。プライムセオリーの東海林氏は、「Appleは審査段階にあるアイテムを単に忘れて放置してしまったり、間違った態度の開発者に対しては制裁措置として意図的にアップデートを放置しておいたりすることもあります。ただし、Appleがそういった措置を取っていると認めることは決してありません」と述べています。

Appleによると、App Storeのアプリレビューチームは2つのタイムゾーンにまたがっているため、日本語に対応する担当者が日本企業の営業時間内に開発者と電話で直接話し合うこともできるとそうです。しかし、2019年11月にAppleのサーバーが1日以上ダウンした際には、問題が発生したことが開発者に通知されることはなく、サポートページ上のシステムステータス画面でも問題を表示するまでにかなりの時間がかかった模様。Appleのサーバーがダウンしている間、アプリ開発者はアプリを配信できないため経済的な負担を負うこととなるわけですが、Appleはそういった負担に対する補填は一切行っていません。


また、日本のゲーム開発者からは「適切なコンテンツに対する解釈や方針の変更に関して、事前に通知することなく、時には相反するような処置を取られることもある」という声も挙がっています。いくつかのゲームスタジオは「水着に身を包んでいる」という解釈で承認されたはずのキャラクターが、その後に「下着を着た性的なもの」として承認を取り消されたことがあるとのこと。また、一度はApple側に承認されたはずのゲーム内コードが、別のオペレーターによりガイドライン違反と判断され削除を求められることとなったケースもある、と別の開発者は語っています。なお、AppleはApp Storeのガイドライン上で「あからさまに性的またはわいせつなコンテンツ」を禁止していますが、その解釈はあいまいであり、Appleが自身にとって有利になるように解釈するケースがあると指摘されているわけです。

さらに、ある開発チームがリリース前にゲームの収益を上げるための戦略をAppleに数回確認し、了承を得ていたにもかかわらず、リリースから数週間後にアプリをブロックされたこともあるそうです。東京を拠点に活動するゲームコンサルタントであるヒラバヤシ氏は、「Appleは保安官のようなもので、自らの利益のためにガイドラインを自由に解釈することができます」と述べています。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ゲーム, Posted by logu_ii

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