一般常識に詳しい人の脳は回路が効率化されているかもしれない
認知能力は人によって大きく異なり、中には「雑学王」と呼ばれるほどに一般常識を詳しく知っている人がいます。研究により、こうした人の脳は回路が効率化されているかもしれないことが示唆されています。
The Neural Architecture of General Knowledge - Genç - 2019 - European Journal of Personality - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1002/per.2217
Are You Excellent at Trivia? Your Brain Could Be Uniquely Wired
https://www.sciencealert.com/are-you-really-good-at-trivia-your-brain-might-be-particularly-well-wired
心理学者のレイモンド・キャッテルとジョン・L・ホーンは「流動性知能」と「結晶性知能」という知能の分類を提唱しました。「流動性知能」は生まれながらに持っている、情報獲得や情報処理・操作などを行う知能で、これまで、神経科学の分野では「流動性知能」に関する研究が主に行われてきました。
対する「結晶性知能」は経験や知識の蓄積、学習から獲得していく知能で、個人の一般常識レベルに関連すると考えられます。しかし、どういった神経基盤なのかはあまり知られていません。
そこで、ルール大学ボーフム校とフンボルト大学ベルリン校のチームは、学生を中心とした324人の被験者にMRI検査を受けてもらい、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や拡散テンソル画像法で分析を行いました。拡散テンソル画像法では、神経線維の経路を再構成することで、脳の構造ネットワークの特性に関する情報が得られます。得られた情報をもとに、被験者には脳の構造ネットワークの個別のスコアが割り当てられました。
また、被験者は「ボーフム知識テスト」と呼ばれる一般常識テストにも回答しました。このテストは化学、生物学、芸術、建築などさまざまな分野から集められた300問以上の設問で構成されていて、平均点は50点以下という難しいものです。
テストでは、年配の男性が好成績を出す傾向がみられたとともに、「NETstruc」と呼ばれるネットワークの効率性に起因する成績の変動が見つかりました。
この結果について、ルール大学ボーフム校の生物心理学者エルハン・ゲンチ氏は「脳のネットワークが効率的になると、情報の断片をうまく統合できるようになるので、一般常識テストでの好成績が得られるのではないかと考えられます」と述べています。
ただし、この研究はサンプル数が比較的少なく、また、脳内ネットワークの効率性に起因する変動は、有意ではあったものの、わずかな差でしかなかったとのこと。ゲンチ氏らの考えが正しいかどうかは、さらなる研究が必要だとのことです。
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