インタビュー

アニメ制作会社ボンズ・南雅彦代表インタビュー、「ジョゼと虎と魚たち」をアニメ化する意味や生み出した作品への思いを語ってもらった


アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」が2020年12月25日(金)に公開となりました。本作は田辺聖子さんの小説を原作としていて、妻夫木聡さんと池脇千鶴さんが主役を演じた犬童一心監督による実写映画が有名。今回、タムラコータロー監督へのインタビューに続いて、アニメーション制作を担当するボンズの代表である南雅彦さんに、アニメにする意味や、これまでボンズが生み出してきた作品について、大阪芸大~サンライズ~ボンズという南さんの経歴についてなど、多岐にわたる質問をぶつけてきました。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト
https://joseetora.jp/


GIGAZINE(以下、G):
インタビューは公開前なので、いきなりおかしな質問かもしれませんが、プロデューサーの立場として、こうした劇場版アニメを作るとき、どれぐらいのヒットを期待しているものなのでしょうか。

ボンズ代表・南雅彦プロデューサー(以下、南):
たくさんの人に見てもらいたいというのはあります。でも、制作会社としては「どういう作品を残していくのか」というのが楽しいところだと思っています。『ジョゼ』はKADOKAWAの笠原プロデューサーと、うちの鈴木プロデューサー、そしてタムラコータロー監督を中心に制作してもらっています。タムラ監督はうちでは『ノラガミ』という作品を監督してもらったことがあります。ボンズの作品ってアクションとかロボットとか爆発とかミサイルとか、そういうジャンルが多いんですけれど、『ジョゼ』にはまったく出てこない。


G:
(笑)

南:
それをなぜやろうと思ったか。最終判断は自分がしましたが、原作短編を読ませてもらったとき、自分の中の「ファンタジー」というカテゴリの中にすっと入ったんです。ジョゼと恒夫の心が通じ合っていく部分を、ああいったお話にして表現されているのが、自分としてはすごくアニメーションに向いているんじゃないか、と感じたのがきっかけです。監督はまた違うかもしれませんが、自分としては、です。この作品のアニメーションが、リアリティよりファンタジーに寄ってしまうのは、役者さんが演じるのではなく、手で描いた絵で表現する以上は仕方がない部分です。でも、アニメーションによってこの作品を表現するのであれば、うちの会社でやる意味があるのではないかと。


G:
なるほど。

南:
鈴木プロデューサーはずっと『文豪ストレイドッグス』をやっていて、自分で企画を立てるのは『ジョゼ』が初です。『文豪ストレイドッグス』は、先ほど言ったうちのジャンル、サイキックアクションものだったので、「今度はプロデューサーとしてどういうのを作るんだろう」という気持ちが大きかったです。

G:
『ジョゼと虎と魚たち』は実写映画化もされた有名作品なので名前は聞いてわかりましたが、どこの制作スタジオがアニメ化するのか、絵を見ただけでは気付かず「ボンズ」と書いてあるのを見て「マジか!?」と驚きました。

南:
僕の所に来る人は大体そう言います(笑)


G:
今回、インタビューは南さんの出身大学である大阪芸術大学で行っています。


G:
南さんはここの芸術学部映像計画学科、今の映像学科を卒業してサンライズに入社しています。そもそも、なぜ大阪芸大芸術学部映像計画学科を選んだのですか?

南:
選んだ理由?自分は生まれが昭和36年(1961年)でベタベタのテレビ世代であり、生まれた場所は三重県の尾鷲という南の方にある田舎だったので、「映画」というのがすごく特別なものだったんです。だって、近くに映画館が1館しかなかったから。そこから四日市に移ったら、近くに映画館が8つぐらいあったので、映像と一緒に育ったという感じです。それで、そういう映像系のなんかをやりたいなと。「監督になりたい」「プロデューサーになりたい」とかいう気持ちはあまりなかったんですけれど(笑)、選んだ大学はそっちの方面だったという。

G:
当時、好みの映画はどういったものでしたか?

南:
普通に黒澤明さんとか邦画が好きでしたね。

G:
過去のインタビューでもこのころの映画について触れたものがあって……

南:
いやー、覚えてないですね。どんどんください。

G:
大阪芸大の卒業生インタビューでは「僕はもともとデザインとか絵が好きなんだけど、若い頃に映画館でアルバイトするほど映画も好きだった」と答えていて、「サンライズ創業30周年企画『アトムの遺伝子 ガンダムの夢』」という高橋良輔監督によるインタビューでは、高橋監督から「南君が入った時のサンライズの位置付けって他のプロダクションと比べてどうだったのかしら?」と質問されて「自分は映画館とかでバイトしてて[ガンダム]とか[イデオン]とか松竹系のモノとか見てたんです。[イデオン]が大爆笑で」と答えていました。

南:
ひどいこと答えてますね(笑)


南:
「松竹系」って言っているのは、バイトしていたのが近鉄興業という会社がやっていた四日市駅前のグランドとシネマという、今はもうない映画館ですが、松竹・東映系が多かったんです。バイトしていたおかげで映画をタダで見ることができて、ちょうどガンダムやイデオンの映画をやっていた時期だったんでしょうね。だから、大阪芸大は「調べて目指した」というよりは、映画学科が当時は少なかったので、東京よりは近かったから、ということですね。

G:
大阪芸大時代のことについて、ボンズ20周年記念展のころに行われた小森高博さん、川元利浩さんとの鼎談の中で「大阪芸大にいたことがすごく勉強にはなっているんですよ。8ミリ映画でカメラをやっていたんですけれど、カチンコが鳴った瞬間に役者も動くし、カメラも回るし、音も録る。そうやって、みんなで一つのカットを作っていく緊張感がすごく好きでした」という話が出ていました。この当時の経験で、今こうして『ジョゼ』などのアニメを作っていく中で役に立ったこと、やっていてよかったと思ったことはありますか?

南:
大学時代に、いろいろな教授の話を聞いたというのは大きいですし、一緒に映画を作ったというのもありますね。スポーツもテニス部という、どちらかといえば個人競技しかやっていなかったので「いろんな人間が集まって1つのものを作り上げる」というのは、大阪芸大で映画を制作するのが初だったんじゃないかと思います。

G:
どういった映画を作っていたんですか?

南:
やはり自分たちと同世代の青春映画でした。そのころの主流は、根岸さんや森田さん、それに相米さんとかの時代だったから、なんでか知らないけれど「長回しするんだ」「太陽が出るまで待つんだ」とかわけのわからないことを言いながら撮ってて(笑)。面白かったですね。

G:
(笑) それだと、カメラを回すのが大変だったんじゃないですか?

南:
大変でしたね……。卒業制作の時は、テニス部をやっていて多少体力もあったというところもあって「もうカメラは南しかいないんだよ」と梅田という監督に言われて「そんなに上手くないのになあ?」と思っていたら、ずっとカメラを持って走らされるという(笑)

G:
(笑)

南:
カメラを安定させるスタビライザーってあるでしょう。8mm時代にアルミとかで簡易スタビライザーを自作して、ずっと神戸の街とかを走り回ったんですよ。「この役割か!」って(笑)

G:
それで「南しかいない」だった(笑)

南:
そう。でも、面白かったですね。今は学科もすごく増えましたけれど、当時、これだけのいろんな学科が1カ所に集まっている大学って多分なかったんじゃないかと思うんです。他だと場所がいろいろなところにあったりしてね。大阪芸大の一番面白いところは「1カ所で全部そろう」です。映画を撮るのには美術がいるわ、音楽がいるわ、役者がいるわ、ですが、全部そろってる。制作にあたってはいろんなところの学科の人間と仲良くして、一緒に映画制作に関わってもらったりして。「学科の中だけでものを作る」ではなく、大阪芸大の中のいろんな学科の人たちと作るというのが面白かったです。それは、今の仕事にすごくつながっていると思う。ちょっとずついろいろな部分をかじりましたから、音響のこととか、デザインのこととか、なんとなくわかっている。すごく勉強になっていたんだなというのを、後々感じました。


G:
なるほど。それで、大阪芸大からサンライズへ入社したわけですが、いろいろ調べても「なぜいろんなアニメ会社がある中でサンライズだったのか」がはっきりとわからなかったのですが、なぜサンライズだったのですか?

南:
それは「富野由悠季監督が大好きだから」です。それ以外ないです(笑)

G:
それ以外ない(笑)。分かりやすいですね。

南:
分かりやすいでしょ。

G:
富野監督のどういった部分が心に刺さって「サンライズに行こう」となったんですか?

南:
アニメーションであそこまで人物を掘り下げるというか、感情を揺さぶるようなところまで描こうとした人というのが、俺の中では富野さんが初めてじゃないかなと思って。当然、高畑さんや宮崎さんが描いているものも好きですけれど、ガンダムは「しょせんおもちゃのアニメ」と言われつつ、アニメーションという子ども向けのものを作りながら子どもだましではない、「こういう時はこういう感情が動くから、人はこう動いていく」ということをやっているのが自分にはすごく刺さって「富野さん、いいなあ」って。それでサンライズに入社することになりました。

G:
なるほど。富野監督とはどれぐらい仕事をしたんですか?

南:
実は「Ζガンダム」で制作進行を1本手伝ったあと、パイロットフィルムの制作をやりましたが、「ガチで一緒に作品を」というのはないです。ただ、すごく仲良くさせていただいていて、いろいろな話も聞かせてもらいました。とてもいい方ですし、物事を基本的なところからちゃんと見ている人だなと思いました。

G:
なるほど。再び高橋良輔監督によるインタビューの気になった部分に戻るのですが……

南:
はいはい。しかし覚えてないな、なぜ良輔さんとインタビューやっているんだろう?(笑)


G:
(笑) 高橋監督から「ハングリーっていうのはある?自分が何か足りないとか、欲しいとか、あれ捕まえるんだ、とか言葉になり易いことは」という質問があり、南さんは「まだまだアニメーション作りたいですね。具体的に言うと映画もちゃんと作れてない会社なんで、まあ[エスカフローネ]とか[カウボーイビバップ]の劇場版やりましたけど、あれはテレビの2ですから一から劇場映画としては作ってはないと思うんで作っていきたいと」と答えています。『ジョゼと虎と魚たち』はここでいう「劇場映画」ですが、南さんの中で「テレビの2」との線引きはどのようにつけているのですか?


南:
やはり、「映画」というのはすごく特別なものだという気持ちが今でもあるんです。それは何かというと、今はソーシャルディスタンスや三密への配慮が必要ですけれど、1つの空間に、その作品を見るためだけにあれだけの人が集まって、真っ暗なところで作品を見てもらえる、ということです。しかも、1000円も2000円も払ってもらっているというのは、特別ですよね。テレビだったら、家事をやりながらでも、爪を切りながらでも見られますが、映画館で爪を切ってる人はいないじゃないですか。

G:
みんな前見てますよね。

南:
そういう、特殊な空間で見てもらえる特別な映像を作りたいなと。今回の『ジョゼと虎と魚たち』も、試写会の会場に行った時、来た人たちがなんとなくワクワクしている感じが伝わってきました。それも映画の面白さです。見てもらって、出てきたときにいい顔をしてもらいたいし、作品についてしゃべって欲しい。そういうのが映画だと思っているので。たぶん、良輔さんと話をしたのは『ストレンヂア 無皇刃譚』の企画をやっているかいないかぐらいの時だと思うので、そのイメージでしゃべっていると思いますが、『ジョゼ』も田辺先生の原作を預かって約1時間半という長尺のアニメーションにしますというところで、アニメーション映画としてみてもらえるものにどう仕上げていくのか、それがハードルとしてあったかなと。まぁ、僕は1週間に1回ぐらい顔を出して「やってる?」「早く早く」とか、そういうことを言って帰るような感じでしたけど。

G:
(笑) 今度はアニメ!アニメ!に2018年に掲載されたロングインタビューからなんですが、「よく『ボンズを作ってなにがよかったですか』と聞かれて、『いやいや良かねえんだよ、大変なんだよ』って。最初は、リース会社も何も貸してくれないし。コピー機ひとつ借りるのも大変だった。車のリースもさせてくれない」と……

南:
ぼやきだ、ただのぼやきだ(笑)


G:
それで「近所に中古車屋があって、そこの親父と仲良くなって車を買って。スターレットとシャレードの車検付きの中古が大体25万かな。状態悪いのはもうちょっとまけろとか言いながら」というくだりが出てきます。とても今のボンズからは考えられないような状態ですが、この信用がゼロか、あるいはマイナスかというところからマシになったと感じたのは、どういったときでしたか?

南:
それは『ハガレン』がヒットしたときですね。当たらなかったらどうしようかと思っていましたよ(笑)


G:
(笑)

南:
アニメーションの制作という、非効率的な行為を続けているわけなので。たとえば、音響作業をするのに「線撮り」という途中の状態の絵を作りますが、それは基本的に完成したら必要がなくなる絵だったりしますから。ただ、大変ではありましたが「作品が残っていく」というのが好きなので、しょうがない。会社で手がけた全タイトルの名前を言えと言われたら、時間はかかりますが全部言えます。もう70タイトルぐらいになっているかな。それぞれのタイトルに思い入れがあります。「こんなに苦労して……でも、かわいい子だ!」とかもあって(笑)、本当にやってきて良かったです。

G:
苦労の度合いとヒット具合は、やはりあまり関係がないものなのでしょうか。

南:
「全然ない」というと、ヒットしたものはそんなに力を入れてないみたいに聞こえちゃうな。そうではないけれど、「それほどみんなに観てもらえなかったか……というのが悲しい」とかはあったりします。


G:
なるほど。

南:
作品のヒットでいうと、僕は「お客さんも含めて広がっていく」というのを体感している世代です。サンライズに入ったころは、海外への番組販売も今のようなビジネスには全然なってなかったですね。『天空のエスカフローネ』のときに海外の反応があって。それで『カウボーイビバップ』の映画のときにはアメリカのコンベンションに初めて行ったんですが、びっくりしました。「人気あるんだ、日本のアニメ」って体感しました。人からは聞いていたんですが、基本的に人を信用しない人間なので(笑)

G:
(笑)

南:
「すごい人気だよ」と言われても、実際に見て、肌で感じないとなかなかわからないので。それで「Anime Expo」で『カウボーイビバップ 天国の扉』の試写会を初めてやるというので行ってみたら、すごかった。人が集まって大変なことになっているという中で夕食を食べに行こうとしたら「南さん、会場に出てちゃんとあいさつしてもらわないと」って返されて「えー、おなかすいたよ」なんてのんきに言ってました。「6人とか7人とか、それぐらいだろう?」と思っていたから。それが「人が集まりすぎているので、2回まわしにします」となって、最後は夜中まで満員。終わった後も、海外のファンの方達に手をつかまれて「えっ、なに?なに!?」とビビってたら、すごく喜んでくれていた。本当にうれしかったし、「海外の人もこれだけ日本のアニメを見てくれているんだ」と体感しました。どんどん海外で見てもらえるようになる、その見てもらえる国が広がっているということに驚きつつも、「自分たちのアニメーションが多くの人に見てもらえる」というのが一番うれしいですね。作品には思いを込めているので、それを伝えることができているというのは、いい世の中になってきたなと思います。


南:
会社としては、サンライズやよその会社から来てもらった人がいるし、プロパーでうちが採用している人も育ってきているので、「彼らが作りたいものを作れる環境」を作っていくのも僕らの仕事かなとも思っています。自分がサンライズにいたときに、逢坂浩司川元利浩や、渡辺信一郎監督とか、そういった世代で作品作りをやらせてもらっていたので、今のうちのプロデューサーたちにも、自分たちが作りたいもの、生み出したいものをなるべく作らせてあげたいし、そのための環境を整えてあげたいというのがあります。それが今、できてきているところですね。

G:
「環境を整える」というと、会社としての仕組みとかの部分でしょうか、それとももっと現場に近い部分なのでしょうか。

南:
「作品を作れる状況にする」ということですね。スタッフと一緒に作品を作っていける会社であるべきだと思うし、契約なども含めて、作品を生み出せる環境ができることです。あとは、制作スタジオ自体をどう作っていくかという所もあります。いま、ちょうど働き方改革もありますし。あと、こうやって自分がインタビューだとか海外のイベントとか、いろいろなところで話をさせてもらっているのは、ボンズという制作会社のブランディングを大事にしていかなくちゃというところでもあります。ワンマンだと言われることもあるけれど、決してそんなことはないんですよ。

G:
ワンマンは、そんなに言われるんですか?

南:
最初の何年だと、プロデューサーとして名前が出ているのが自分だけなはずなんです。それで「作品を作っているのは南だ」ということでしょう。あと、もともと小さい会社なので、いろんな部署がちゃんとなかった……契約からプロデューサーの仕事から制作から、最初は全部仕切っていた、仕切らざるを得なかったので、そういう意味ではワンマンではありますけどね。いろいろな人とやっていくときの顔が俺だから、というのもありますかね。

G:
『ジョゼ』では、先ほど話に出たように、ボンズでは鈴木さんがプロデューサーを担当していると。南さんから見るとどうですか?

南:
「鈴木プロデューサーだから、こういうフィルムを作るんだ」と、プロデューサーとしての顔が映像の中に見えるところを目指して欲しいですね。

G:
企画を進めるという点では、過去のインタビューで「長年やっていると企画のツボみたいなものは見えてくるんですか?」という質問をされて「ツボっていう捉え方ではないですね。ポリシーみたいなものは多少あります。ただ作るのはスタッフであり、現場、スタジオごとでそれぞれ違う部分が多いと思うんですよね」と答えていました。どういったポリシーなんでしょうか。

南:
む。これ、今まではどう答えていたんだろう。

G:
中身まで書かれているインタビューはなかったと思います。

南:
うーん……多分、言葉にすることじゃないと思ったんだろうね。脚本とかを読んだときに「これは絶対に表現したくない」とか、そういうところはあったりします。ただ、あまり公言するものではないなと。プロデューサーとして持っている部分ではありますね。

G:
作品からプロデューサーの顔が見える、見えないというところにつながるような……。

南:
それが最終的に出てくるんだと思います。最終的に、上がった映像ってウソをつかないんです。監督は当然ですが、プロデューサーのこだわる部分もでてきます。見る人によっては気にならない、つまらないこだわりかもしれない部分ですが、お客さんに我々の作った作品と向き合ってもらう以上、我々もちゃんと向き合っていかなければならない、そういう気持ちは持っていなければいけないんじゃないかな。

G:
ポリシーと似た質問かもしれませんが、2010年に放送された『HEROMAN』のとき、南さんは「子供向けほど、子供をなめたフィルムは作ってはいけないですね」という話をしていました。「子どもをなめない」というのは、どういったことでしょうか。

南:
「自分たちが思っている以上に、子供たちは映像から多くを受け取る、感じ取る」ということだと思います。

G:
具体的ですが、なにか実感するような体験があったのですか?

南:
何だろう、なかったと思うんです。なぜそういう考えなんだろう。真面目な性格だからかな、生まれ持ったものが。

(一同笑)


南:
やっぱり、映像と一緒に育ってきているというのが大きいとは思います。そこから受け取っているものというのが。昔、ちょっとしたアニメーションでも大人からの強烈なメッセージが入っていて、我々がビクビクするってあったじゃないですか。アニメじゃないけど『ウルトラマン』のジャミラだとか、『マグマ大使』の人間モドキとかね。人間モドキは怖くて怖くて仕方がなくって……お母さんに化けるんですよ? 超怖くて「うちのお母さんも人間モドキだったら、俺はどうすればいいんだ!?」って。

G:
それは怖い(笑)

南:
結構強烈でした。

G:
南さんは「作品はなるべくプロデューサーたちに任せたいのですが、オリジナル作品の制作が好きなので、数年に一度、自分がメインになって企画を立てます」という話をしています。2014年が『スペース☆ダンディ』、2018年が『ひそねとまそたん』、そして次が『キャロル&チューズデイ』ということなのですが、このペースだと、次の『南プロデューサー作品(仮)』の企画はすでに進んでいるところでしょうか。

南:
やってはいるんですが、ちょっとスタジオが空かないんです。プロデューサーに任せていくので自分の制作スタジオがなくなってしまう。

G:
「南スタジオ」がない(笑)!

南:
「あれ?俺の会社なのに、俺の作れるものがない。場所がない」みたいな(笑)

G:
ボンズとしてはスタジオはいまいくつあるのですか?

南:
今はAからEまでの5スタジオ。Eは『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』に取りかかっています。おかげさまでヒットしている作品が多くて、特に『僕のヒーローアカデミア』はテレビと劇場というところで、2ラインとはいわないものの1.5ラインくらいでずっと続けていますし、『文豪ストレイドッグス』もKADOKAWAさんが大事にしている作品で原作も続いているところなので、そのことも考えてラインを組んでいくと「俺、やれないじゃん」ということになるんです。

G:
Eスタジオは『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』に合わせて作ったという話がアキバ総研のインタビューにありました。スタジオが増えるきっかけというか、「増やすか、増やさないか」という決断はどのようにしているんですか?

南:
作品が決まったら増やしてますね。それこそ『鋼の錬金術師』の原作が2巻か3巻の段階で「面白いですね」と声をかけたら「やりましょう」ということになって、Cスタジオを作ることになりました。Dスタジオは『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のときだったかな。それで、Eスタが『エウレカ』と。でも、これ以上増やすのは難しいですね。

G:
『ジョゼと虎と魚たち』をその中に組み込むのは大変だったのでは?

南:
そうですね。みんな、前は結構言うことを聞いてくれたんです。……もう、自分が独立するしかないか?(笑)


G:
(笑) 最後、時間だということなので『ジョゼと虎と魚たち』を見る人に向けてのメッセージをお願いします。

南:
とても温かみがあるフィルムができあがりました。制作の中で、ジョゼというキャラクターがどんどん膨らんできた気がします。それは清原果耶さんの演技もありますけれど、絵としても、ジョゼと恒夫が制作していく時間の中で育っていった印象があります。なので自分にとっては、なんだかちょっとお父さん気分で見られるフィルムですね、「2人の行く末に幸あれ」って(笑) コロナの影響があって制作期間は延びましたが、その分、丁寧に、監督のこだわりを最終的に生かし切れたんじゃないかと思います。非常にいいフィルムになりました。幅広い年齢層の方達に観てもらえる作品です。ぜひ映画館に足を運んでください。よろしくお願いします。


G:
とてもすてきな作品になっていると思いました。本日はありがとうございました。

映画「ジョゼと虎と魚たち」は2020年12月25日(金)から全国ロードショー中。YouTubeではPVのほか、冒頭シーンも公開されています。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV - YouTube


【12月25日公開】アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』冒頭シーン大公開!! - YouTube

©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

◆「ジョゼと虎と魚たち」作品情報
・キャスト
中川大志
清原果耶
宮本侑芽
興津和幸
Lynn
松寺千恵美
盛山晋太郎(見取り図)
リリー(見取り図)

・スタッフ
原作:田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫刊)
監督:タムラコータロー
脚本:桑村さや香
キャラクター原案・コミカライズ:絵本奈央
キャラクターデザイン・総作画監督:飯塚晴子
コンセプトデザイン:loundraw (FLAT STUDIO)
劇中画:松田奈那子
プロダクションデザイン:平澤晃弘・片貝文洋・中村章子
画面設計:川元利浩
美術監督:金子雄司
色彩設計:梅崎ひろこ
撮影監督:神林剛
3DCG監督:三宅拓馬
編集:坂本久美子
音楽:Evan Call
音響監督:若林和弘
音響製作:ソニルード
アニメーション制作:ボンズ

主題歌・挿入歌:Eve「蒼のワルツ」/「心海」(TOY’S FACTORY)
配給:松竹/KADOKAWA
製作:『ジョゼと虎と魚たち』製作委員会
©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

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