SaaSが本当に軌道に乗っているかを理解するための売上継続率・総収入継続率などの求め方一覧
サブスクリプション型のSaaSを運用するには、ビジネスがうまくいっているのかどうかを期間ごとに分析することが重要になります。個人でサービスを運営しているとなかなか「サービスが軌道に乗っているのかどうか」が分かりづらいものですが、正しくこれを評価するための指標と、指標を算出するための計算式を、スタートアップ向けのコンサルティングサービスを手がけるTalkin' SaaSyがまとめています。
Talkin' SaaSy - SaaSy Math
https://www.talkinsaasy.com/saasy-math
◆売上継続率(Net Revenue Retention/NRR)
NRRは、サービスがサブスクリプションのような「繰り返し発生する収益」をどれほど維持し、拡大しているかを示す指標です。一般的には月次あるいは年次で求められることが多いものですが、任意の期間でも算出することはできます。
年間のNRRを求める際は、まず12カ月前の1カ月間で獲得した顧客を調べ、それら顧客の月次経常収益(Monthly Recurring Revenue/MRR)合計とサブスクリプションIDを記録しておきます。そして、直近1カ月のデータにアクセスして、12カ月前のサブスクリプションIDとどれくらい合致するかを調査します。直近1カ月に存在する、12カ月前のサブスクリプションIDと合致する顧客について、アップグレードしたユーザーからの収益・ダウングレードしたユーザー分の減益・解約したユーザーの減益を含めて合計MRRを算出し、その数値を前年の合計MRRで割ると、年間のNRRが求められます。
◆総収入継続率(Gross Revenue Retention/GRR)
GRRはサービスがいかに収益を維持しているかを示す指標ですが、NRRのように「サービスがどれほど拡大しているか」を含みません。一方でNRRと同様に、GRRも特定の期間内・顧客のコホートにおいて、MRRがどれだけ維持されているかを調べるときに利用します。
年間GRRの求め方はNRRと同様に、まず12カ月前にさかのぼって、その月に獲得した全ての顧客の合計MRRと、サブスクリプションIDをメモします。その後、直近1カ月の請求書から、12カ月前の記録と合致するサブスクリプションIDを抜き出します。このときもNRRと同様に直近1カ月の合計MRRを求めますが、NRRとは異なりアップグレードMRRは計算に入れません。計算した値を12カ月前のMRRで割れば、GRRが求められます。
◆顧客離れ(Customer Churn)
顧客離れは、いったんサービスに加入したユーザーが時間の経過と共にどの程度サービスを離れるかを測る指標です。サービスを提供する側としては顧客離れはできるだけ少なく抑えるべきであり、どのように顧客が離れているかを追跡することがサービスの成功のために非常に重要になります。
顧客離れを調べるには、まずサブスクリプションサービスの顧客管理システムにアクセスし、APIからCustomer/Accountテーブルを探します。このテーブルから、その月に作成された全顧客のユニークIDを見られるはずなので、1カ月ずつ調べて、各IDが維持されているか離脱しているかをチェックします。月終わりのIDの数を月初めのIDの数で割れば、1カ月でどれほど顧客離れが起こっているかが理解できます。顧客離れ率は月次・年次で調べられることが多いのですが、できれば毎月の数字がどのように遷移するかも調べるべきとのこと。
◆顧客獲得単価(Customer Acquisition Cost/CAC)
CACは、サービスが顧客1人を得るために必要なコストを示す指標。毎月のCACの遷移を見ることで、ビジネスがうまくいっているかどうかを知ることができます。
CACを求めるにはまず、会計・財務システムにアクセスする必要があります。時間の経過とともに営業やマーケティングのコストがどのように変化しているのかをチェックしたあと、システムで1つの期間内で作成されたユーザーID数を調べ、期間内の営業・マーケティングコストをこの数で割っていきます。これで1人あたりの平均CACが求められます。
◆リテンション利益率(Retention Margin)
リテンション利益率とは、月の収益から売上コストと顧客の維持にかかるコストを引いた残りが収益全体を占める割合のこと。
リテンション利益率を求めるにはまず、粗利益を知る必要があります。このため会計・財務システムにアクセスして数字を把握したあと、カスタマーサービスチームやサクセスチームの支出額を算出します。この数字を収益コストに加算し、全収益からマイナスすると、顧客の維持を行う上での利益が求められます。この数字を全収益で割ると、リテンション利益率がわかります。
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