Facebookが「ニュース記事を読まなくても内容を理解できるように要約するツール」を開発している
Facebookは新型コロナウイルスのパンデミック中に広告収益と利用者を増加させていることが報じられており、物理的な接触が難しい状況での重要なコミュニケーションツールとして機能しています。2020年12月に実施されたFacebookの全社会議において、「ユーザーがニュース記事を読まなくても内容を理解できるように記事を要約するツール」を開発していることが明らかとなりました。
Facebook Is Developing A Tool To Summarize News Articles
https://www.buzzfeednews.com/article/ryanmac/facebook-news-article-summary-tools-brain-reader
The Facebook overlords are developing tech to read your thoughts
https://www.inputmag.com/tech/the-facebook-overlords-are-developing-tech-to-read-your-thoughts
Facebook plans to read news articles for you and give you its own interpretation of what they say
https://reclaimthenet.org/facebook-tldr/
Facebookは2020年12月15日に大規模な会議を開催し、幹部らが数千人もの従業員へ向けて2020年に起きた出来事や開発中のテクノロジーについて語りました。2020年はパンデミックやジョージ・フロイド氏の死をきっかけに起きたブラック・ライブス・マター運動といった多くの騒動が巻き起こりましたが、Facebookはその中で成長を遂げており、新たに2万人の従業員を雇用したとのこと。
Facebookの最高技術責任者(CTO)を務めるMike Schroepfer氏は、パンデミックによって人々が自宅で過ごす時間が増え、Facebookの使用は記録的に増加していると指摘。特に2020年3月のトラフィックは、通常時のFacebookが最も忙しい年明けと同じレベルだったそうです。また、Schroepfer氏は新たなテクノロジーへの投資によってFacebookのサービスが改善されていると主張し、「私たちは誇張なしで、数十億もの人々の生活を改善する画期的で新しいエクスペリエンスへの道を開いています」とコメントしました。
また、Schroepfer氏は会議の中で、Facebookが押し進める人工知能(AI)開発の進歩と重要性について強調したとのこと。AIが活用される可能性がある分野として注目されているのが、Facebookに投稿される有害なコンテンツの監視です。
Facebookは膨大なコンテンツを監視するために大量のモデレーターを雇用していますが、有害なコンテンツを大量にチェックするモデレーターは厳しい仕事であることが知られています。また、パンデミック中の在宅勤務が終了してオフィスに戻されつつあるモデレーターたちが「利益のために命が危険にさらされている」と主張し、割増賃金や権利の拡大を求める事態も起きています。
Facebookのモデレーターが「利益のために命が危険にさらされている」と主張、割増賃金や権利の拡大を求める - GIGAZINE
Schroepfer氏はFacebookがデータセンターの速度を10~30倍にする新たなシステムを入手したと述べ、AIをトレーニングする速度がさらに向上すると主張。「AIはヘイトスピーチや誤情報、そして私たちが直面する最も難しいコンテンツの問題と戦うために使用している重要なツールです」とSchroepfer氏はコメントし、AIや人間のモデレーターを組み合わせることで、Facebookがプラットフォーム上の悪意ある表現のうち95%を検出しているとコメントしました。
また、Facebookは会議の中で「TL;DR」と呼ばれる新たなAIツールを開発していることも明らかにしました。「TL;DR」とは「too long; didn’t read(長すぎて読まなかった)」を意味するインターネットスラングであり、必要以上に長い文章が投稿された際などに使われます。
Facebookが開発する「TL;DR」はAIを活用してニュース記事を箇条書きで要約するというものであり、ユーザーが記事全体を読まなくても内容を理解できるようにするとのこと。Facebookは「TL;DR」をテキストで表示するだけでなく、将来的には音声ナレーションの提供も目指しているそうです。
メディアが公開するニュースの全文を読まなくてもFacebook上で理解できるようにする新たな仕組みは、オンラインニュースの配信によって利益を上げるFacebookとメディアの対立を悪化させる可能性があります。アメリカのラジオ局・WNYCの編集長であるAudrey Cooper氏は「TL;DR」の構想について、「私は時々、Facebook本社の中に『アメリカ人の知性を完全に破壊する新しい方法』を考える仕事に就いている人がいるのではないかと感じます」と批判しました。
I feel sometimes like there is someone in FB HQ whose job is trying to come up with new ways of completely destroying any semblance of intelligence in America. https://t.co/snHhTRHcdC
— Audrey Cooper (@audreyhasnews) December 16, 2020
さらにSchroepfer氏はスタートレックに登場する「宇宙翻訳機」のような万能翻訳機や、ソーシャルVRワールドの「Facebook Horizon」について述べたほか、Facebookが注目する「人の脳波を読み取る技術」についても紹介しました。
Facebookは2019年に脳の電気信号をコンピューターに入力する装置を開発する企業・CTRL-Labsを買収するなど、脳とコンピューターで信号をやり取りするブレイン・コンピューター・インターフェイスに注力しています。
「テレパシーでの会話」など脳とPC間で情報をダイレクトに伝達する技術の展望をFacebookが発表 - GIGAZINE
Schroepfer氏はFacebookが未来を形作っていると主張し、「私たちは成長する権利と信頼を得るため、新たなテクノロジーを責任を持って構築する必要があります。世界中の人が新しいテクノロジーをマイナス面を経験せずに手に入れられるように、正しく実行しなければなりません」と述べました。
・関連記事
ネットでニュース記事を読む人は要約を読んだだけで内容を完璧に理解したと思い込みやすい - GIGAZINE
「難解な論文をわかりやすく要約してくれるAI」が開発される - GIGAZINE
「テレパシーでの会話」など脳とPC間で情報をダイレクトに伝達する技術の展望をFacebookが発表 - GIGAZINE
Facebookが脳波でのコミュニケーションを可能にするテレパシー技術の開発を進めている可能性 - GIGAZINE
Facebookがユーザーによるニュース共有を禁止する可能性、オーストラリアの新法案を受けて - GIGAZINE
GoogleやFacebookがニュース収集・配信で得ている収益を既存メディアに分配するルールを作るよう政府が動く - GIGAZINE
「GoogleやFacebookによるニュース市場独占」阻止に向けた新たな動き - GIGAZINE
・関連コンテンツ