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製品開発を成功・拡大させるには「トップダウン型の営業」が必須、どのように取り入れるべきか?


組織の運営方法には意志決定が上から下に降りていくトップダウン型と、下から上への発議で意思決定が行われるボトムアップ型が存在します。近年のテクノロジー企業やスタートアップでは「製品開発」が主導になるボトムアップ型のイノベーション戦略が多く取られますが、企業の拡大には、どこかの時点で「トップダウン型の営業」を加える必要があるとベンチャーキャピタル・a16zのSarah Wang氏とDavid George氏は述べています。ボトムアップ型の開発現場に、どのようにしてトップダウン型の営業を加えればいいのか、詳細が解説されています。

The "$20M to $500M" Question: Adding Top Down Sales - Andreessen Horowitz
https://a16z.com/2020/12/03/adding-top-down-sales-bottom-up-enterprise-startup/

◆なぜトップダウン型の営業が必要なのか?


成功したボトムアップ型の企業の初期の成長は、製品をフライホイールで開発していったことによるものです。つまり、魅力的な商品を使ったユーザーが口コミを投稿し、その口コミがバイラルとなり、開発チームが新しい機能をどんどん追加しアップグレードを重ねることで、規模を拡大していきます。しかし、個々の顧客を通じて製品が拡大していくと、いつかは商品を発見し、使いたいと考える人の「限界」に当たることになります。ここで会社を始めた時と同様の「ユーザーに見つけてもらう」、言い換えるとセルフサービス型のやり方を続けていると成長曲線が平坦化し、悪化することすらあります。

しかし、個人ではなく企業規模で展開していくことで、新たな顧客やユースケースを作りだすことが可能です。個人レベルでは必要とされてなかったアクセス制御や大規模なグループコラボレーション機能が追加されることになります。テクノロジー企業の多くが個人レベルの製品開発から出発し、ある時点でより複雑かつ広範な展開を行う企業向け製品を販売・サポートする形に変化していきました。この過程で、トップダウン式の営業が必要になるとのことです。

a16zのゼネラルパートナーであるPeter Levine氏は「ボトムアップ型のプロダクトの価値に完璧にあうユーザー集団は限られています」と述べており、GitHubの営業担当であるPaul St. John氏も「ボトムアップ型の勢いとトップダウン型の営業が合わさった時だけに、お金をかける価値がある加速が起こります」と強調しています。

◆いつトップダウン型の営業が必要になるのか?


ではトップダウン型の営業をスタートアップに組み込む最適な時期はいつかというと、これはビジネスによりけりとのこと。ただし、トップダウン型の営業が加わる時、少なくとも「ボトムアップ型のフライホイールが機能している」「ビジネスがトップダウン型の解決策を求めている」という2要件が満たされれている必要があります。

また、ボトムアップ型の売り上げが年間経常収益(ARR)が2000~3000万ドル(約2~3億円)に達することは、1つの指標になる様子。GitHub、TwilioSendGridといった企業はARRがこの額に達した時にトップダウン型の投資を開始したそうです。あまりにもトップダウン型の展開が速すぎると、規模が十分でないためにユースケースの価値を測ることに失敗し、顧客を失いかねないため注意が必要です。

また、「顧客のニーズが変化しだすこと」も1つの指標です。個人レベルのユーザーはセキュリティの向上やアクセス制御、トランザクションレポートの強化などを評価しませんが、企業レベルでは要求されます。このような要求が生まれた時に、「個人や小規模チーム向けの製品」を超えた開発が必要になるとのこと。個人ではなくビジネス顧客ための機能開発は、製品主導の企業にとって大きな転換点となる可能性があります。この時、開発第一で考えるエンジニアと販売主導型のスタッフの間で衝突や葛藤が生まれる時期であることにも注意が必要です。

◆トップダウン型の営業を行うリーダーに必要な能力は?


それまで製品主導で開発を行っていたボトムアップ型の企業に、突然トップダウン型の営業が組み込まれた時、当然ながら衝突が生まれます。この衝突はボトムアップ型の成功に根差しているため、トップダウン型の営業リーダーは、「これまで成功を導いたやり方とは違うやり方が必要である」と開発サイドを説得できる人物である必要があります。a16zが数々の企業とやり取りする中で、トップダウン型の営業リーダーに必要な能力は、以下の4つだと述べています。

1:協調的な意志決定ができること
2:分析的かつ技術的なプレゼンテーションを行う能力
3:長期的なオリエンテーションで営業チームを構築できること
4:企業向けの営業を行った経験を持つこと

特に、エンジニアリング指向の企業は「販売はスキルではない」と考えがちですが、予測管理や適切な機会を設定すること、継続的な指導、チームをまとめることなど、営業や販売に関する能力と技術は依然として重要であることを、しっかりと認識する必要があります。

◆営業チームの報酬は?
a16zが話を聞いた企業の多くは、営業リーダーの報酬を「基本給50%、コミッション50%」と定めており、これが適切な例とのこと。上記の例は典型的な報酬システムと言えますが、「企業はイノベーティブなことをやりたがりますが、イノベーションを起こそうとする前に古典の強みを知ってください」とa16zのBen Horowitz氏は語っており、報酬に関しては古典にのっとり「賞金」の要素を設けることが重要だとしました。一方で、営業チームが互いに協力しあう形を目指す企業では、コミッションの割合を小さめにし、30%と設定するところもあるそうです。

◆トップダウンの移行に必要なGTM戦略とは?


適切な営業リーダーは必要ですが、それ以前に営業のインフラストラクチャーが整っていないと、リーダーシップが失敗する可能性があります。トップダウンの販売モデルをボトムアップ型の文化に適合させるためには、システム全体を根本的にシフトする必要があるとのこと。どんなシステムが必要なのかはビジネスによりますが、a16zは以下の2つのモデルを提案しています。

ハイブリッドモデル:
小規模なセルフサービス型の顧客に向けた価格透明性と、企業向け製品の価格交渉を組み合わせる形。Dropboxはこのハイブリッド型です。Dropboxは当初、企業向けでもディスカウントなしで運営していましたが、ディスカウントがなければ購入しない顧客が多く存在することに気づき、方向を転換したとのこと。

企業向けのセルフサービスモデル:
透明性を持った完全に価格設定を企業向け製品に行い、ディスカウントの例外は一切なしというモデル。一般公開された明確な価格はコンバージョンを促進するための鍵であるため、競争があまりない、新しいユースケースが予想されている製品はこのモデルが向いています。

またボトムアップ型の組織が冒す最悪の過ちの1つは、大規模な解約問題に直面するまで顧客維持を怠ることだとのこと。この点、優れたトップダウン型の営業リーダーの多くは成功を顧客が増えた結果として扱うのではなく、「営業活動」「機能構築」を並行して行い、早い時点で顧客維持に目を向けることがわかっています。また、会社が成熟するにつれて、その成功は製品開発そのものからトラブルシューティング、組織内のアドボカシー推進まで、企業を成長させ続けるためにはさまざまな範囲に及ぶことが予測されるため、より広範なカスタマーサクセスの目標を掲げることも重要だとされています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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