ハードウェア

「HPのプリンター事業が業界の悪しき慣習をけん引している」という主張


PCにはさまざまな周辺機器が存在しますが、その中でもプリンターのインクは消耗品としてPC周辺機器メーカーにとっては大きなビジネスになります。そんなプリンター市場で大きなシェアを握るHPが、月15ページまでなら無料でインクを補充できるプラン「Free Ink for Life」を中止し、「月15ページ以内でも月額0.99ドル(約104円)を支払わなければプリンターを機能停止する」ことを決定。電子フロンティア財団(EFF)が怒りの声明を発表しました。

Ink-Stained Wretches: The Battle for the Soul of Digital Freedom Taking Place Inside Your Printer | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2020/11/ink-stained-wretches-battle-soul-digital-freedom-taking-place-inside-your-printer

Pluralistic: 06 Nov 2020 – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
https://pluralistic.net/2020/11/06/horrible-products/#inkwars

プリンターにとってインクは必ず補充しなければならない消耗品であり、周辺機器メーカーにとってプリンターのインクは「液体の金」である、とEFF。メーカーにとっては「インクを早く消耗させて大量に購入してもらいたい」という意図があるため、カートリッジに含まれるインクの量を減らしたり、キャリブレーションテストで大量のインクを消耗するようにプリンターを設計したりした、とEFFは主張しています。

また、EFFは2018年に、エプソンが互換インクカートリッジを排除するため、ファームウェアをダウングレードしていたと指摘しました。

エプソンが格安の互換インクカートリッジを排除するダウングレードを行っていたことが判明 - GIGAZINE

by BwDraco

そして、月額有料のサブスクリプションサービスが普及してから、HPは毎月印刷するページ数に基づいて料金を請求する「HP InstantInk」を始めました。HP InstantInkに対応したプリンターをアカウントと紐付けて登録することで、印刷枚数とインクの残量をオンラインで管理し、インクの残量が少なくなったらインクが送られてくるという仕組みで、わざわざインクを買いに行く必要がなくなるというサービスです。

このHP InstantInkには、月15ページまでは無料でプリントすることができる「Free Ink for Life」というプランがありました。しかし、EFFによれば、2020年10月に突如HPから「これまで無料だった月15ページのプランは、毎月0.99ドルを支払う必要がある」とサービスの内容変更を通知するメールが送られたとのこと。プリンターはオンラインで管理されているため、もし支払いがない場合はプリンターが利用できなくなるそうです。


EFFは「新型コロナウイルスのパンデミックの間、家庭用プリンターは私たちの生活にとってはるかに重要になりました。生徒は学校の課題を印刷して記入する必要がありますし、役所の書類や契約書も印刷しなければなりません。学校や会社は閉鎖されていることが多く、自分の家で印刷しなければなりません」と述べ、プリンターの必要性を訴えています。

さらに「テクノロジーを使って一般の人々から価値を没収することに関してはプリンター業界が世界をリードしており、HPがプリンター業界をリードしています」「財布を吸い込むようなインク詐欺師としてのHPの再発明は実に悲しい転換であり、HPの衰退より悪い唯一のものは、HPが触発した多くの模倣者です」と語り、プリンター業界が消費者を食い物にしていると批判しています。


なお、プリンターとインクの問題は日本でも裁判に発展しています。2007年にエプソンが、エプソン製プリンターに互換性のあるインクを発売するエコリカに対し、「エコリカの製造・販売するリサイクルインクがエプソンの保有するインクタンクの特許を侵害している」と訴え、販売差し止めを求める訴訟を提起しました。

セイコーエプソン株式会社との侵害差止等請求判決について -
https://www.ecorica.jp/topics/topics06/061018.html

この裁判では第一審・第二審ともにエプソンの特許を無効にするべきという判決が下され、最高裁判所はエプソンの上告を棄却したため、エコリカの勝訴が確定しました。

エコリカ - 会社情報 -
https://www.ecorica.jp/topics/topics07/071112_01.html

そして、2020年10月27日にエコリカは、エプソンと並ぶプリンターメーカーであるキヤノンに対し、インクカートリッジのICチップの仕様変更による互換カートリッジ製品の締め出しは「インクジェットプリンタ用インクカートリッジに関する独占禁止法違反行為」であるとして、差止等請求訴訟を提起したと発表しました。

株式会社エコリカ、キヤノン株式会社に対する訴訟の提起に関するお知らせ
https://www.ecorica.jp/topics/201027_notice.html

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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