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わずか数秒の食品コマーシャルを魅力的にするロボットの働きとは?


食品を宣伝するコマーシャルでは、ごく短いCM時間の間にその食品を最大限においしそうに、魅力的に見せなくてはなりません。そのために、食欲をそそる料理を用意して、それをきらびやかに飾り付けるだけではなく、撮影やエフェクトを助けるロボットが活躍することがあります。そんなロボットがどのように用意されて力を発揮しているのか、アメリカのニュースメディアVoxのYouTubeチャンネルが解説しています。

How robots made this food commercial look effortless - YouTube


アメリカのウイスキー・ブランデーのメーカー
ジャックダニエル(Jack Daniel's)のコマーシャル。黄色い背景にウイスキーのビンが映り……


氷たっぷりのグラスに満たされたところに、ライムが落とされて水しぶきが上がります。みずみずしく涼しいイメージを感じさせる短いCMです。


この撮影に必要なのは、黄色い背景の板に……


グラスを回転させて撮影するためのターンテーブル


グラス、そしてライム。


最低限必要そうなものを集めて撮影してみても、やはり物足りないものになってしまいます。


実際のCMのように、ライムをキレイに着水させ、水しぶきを爽やかに立てるにはどうすればいいのでしょうか? また、回転させて撮影するのに、ドリンクや氷が飛び出てしまわないのは、どういった仕組みになっているのでしょうか?


その正体は、撮影のために組まれたロボットです。グラスを挟んでカメラと黄色い板を設置するのは先ほどと同様ですが……


回転するのはグラスを置いたテーブルではありません。カメラと背景の板がグラスを置いたテーブルの周りを高速回転しながら、撮影を行っています。


ムービーでは、映像ディレクター兼ビジュアルエンジニアのスティーブ・ジラルト氏にインタビューを行っています。ジラルト氏は、飲食品のテレビコマーシャルを数多く手掛けているとのこと。


ジラルト氏は、ジャックダニエルにハニーのテイストを加えたウイスキー、テネシーハニーのコマーシャルを一例として紹介しています。


CM作成にあたり、クライアントからジラルト氏のもとに、「回転させて撮影する」「超スローモーションを使ってシズル感を出す」「ドリンクをキレイに仕立てる」「ライムを落下させグラスに入れる」という4つのアイデアが提案されたそうです。


まず「回転させて撮影する」というアイデアは、固形の食べ物なら可能でも、飲み物をグラスに入れて回転させると飛び散ってしまいます。そのため、グラスを置いた机は動かさず、まわりにカメラと背景を回転させるロボットを設置。


土台となる重しに真ん中のテーブルを固定し、土台から伸びた約6フィートのアームにカメラがボルトで固定されています。このアームが4馬力のモーターでぐりんぐりん回転します。


ジラルト氏は、ここで乗り越えるべき3つの挑戦があったと語ります。カメラなどを固定したモニターアームが高速回転する中で、「どうやってカメラに動力を供給するか」「どのようにカメラの映像を取得するか」「どのようにライトに電力を供給するか」という問題を解決するため、回転する土台となる位置に大きなバッテリーを設置して回転速度を確保したとのこと。


次に、「超スローモーションを用いた撮影」について。カメラを高速回転させながらスローモーション撮影をするため、撮影には10万ドル(約1000万円)もする、4K解像度で毎秒1000フレームを撮影出来るPhantom VEO4Kを使用しています。このカメラは、撮影スイッチを押したタイミングから6秒さかのぼって記録が行われるため、CMに使いたい瞬間を映すことが可能になるそうです。


カメラ以外の部分でも、3つ目の課題である「商品をキレイに撮影する」という点が工夫されています。


背景に使われた黄色の板は曲がった合板で作成していたものの、撮影中に回転の影響で壊れてしまったとのこと。そこで、天板に使うような板を薄く加工して配置しています。


また、フードスタイリストの手によって、飲み物自体の見栄えを良くする調整も行われています。


CMのアイデアの最後は、「ライムを上からグラスに落とす」というもの。


そのために、遠隔のボタンでライムを落下させる「ライム落とし」も製造されました。


ボタンを押すとL字型のレバーのような装置にライムが補充され、カメラの回転が始まってスピードが十分に速くなるとレバーが下がり、グラスにライムが落とされるという仕組み。こうやって、みずみずしいしぶきを上げるムービーを撮影しています。


ジラルト氏はもともと、静止画を専門とする写真家として活動していたと話します。


その上で趣味として、ミグ溶接TIG溶接、木工プラスチック、樹脂、集積回路、システムソフトウェア、3Dグラフィックを学んでいたそうです。さまざまな知識が創造的なブレイクスルーにつながり、「好き」へ向かって進歩していく情熱の中核には「問題と解決」があると語っています。

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in 動画, Posted by log1e_dh

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