有名プログラマーが「AppStoreの審査はもっと厳しくするべき」と主張する理由とは?
by Miguel
AppStoreは「ユーザーの利益になっていない」といわれるほど厳しい事前審査を設けていることで知られています。そんな中、UNIX系OSなどでよく利用されるデスクトップ環境・GNOMEの開発者として知られるプログラマーのミゲル・デ・イカザ氏が、AppStoreにおけるアプリの審査を「厳格化すべき」と主張し、その理由を説明しました。
AppStore Reviews Should be Stricter - Miguel de Icaza
https://tirania.org/blog/archive/2020/Sep-24.html
iOS向けアプリの配信プラットフォームであるAppStoreでは、アプリ公開前に専門のチームが審査を行って、アプリに問題がないかどうかをチェックしています。この審査は「ユーザーの利益になっていない」と批判されるほど厳格なものとのこと。
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by YunHo LEE
こうした厳しすぎる審査や高額な手数料を嫌って、iOSアプリの開発者の中には、ベータテスター向けの配信サービスである「TestFlight」をアンダーグラウンドのアプリストアとして利用する人まで存在しています。
Appleのベータ版アプリ配信サービス「TestFlight」がアンダーグラウンドのアプリストアになっている - GIGAZINE
「AppStoreの審査は厳しすぎる」との声が大勢を占める中、デ・イカザ氏は2020年9月24日にブログを更新し、「AppStoreの審査は甘過ぎです」と主張。AppStoreの審査の改善や、新しいルール作りが必要と訴えました。
デ・イカザ氏が、AppStoreの審査を厳格化すべきだと考えている理由は、「iOSユーザーの保護」です。デ・イカザ氏は、「一部の開発者はAppStoreの審査の厳しさに閉口していますが、それでもなお、既存のルールを守りつつユーザーの心理を平然と操って大金を稼ぐような、悪質な行為が横行しています」と指摘。AppStoreは非常に大きな市場であるため、多くのユーザーを保護するためには厳しい審査も必要であるとの見方を示しています。
デ・イカザ氏が特に懸念しているのが、子どもをターゲットにした詐欺や搾取です。デ・イカザ氏自身、3人の子ども持つ親ですが、ゲーム中に表示される30秒間も続く広告や外部サイトに誘導する広告に子どもが困らされて泣いてしまい、心を痛めたことが何回もあるそうです。
また、デ・イカザ氏の家では「課金制の無料ゲームやアプリは基本的に禁止」というルールが存在するとのこと。デ・イカザ氏は、「評判がいいゲームなら、お小遣いの範囲で課金をしてもOK」という例外も認めていますが、露骨に課金をさせようとするゲームが子どもに与える悪影響には、強い懸念を抱いています。
こうした経験を踏まえて、デ・イカザ氏はAppStoreに対し、以下のようなアプリを規制するよう求めました。
・「1週間は無料」とうたって翌週に法外な料金を請求するような、ダークパターンを使用したアプリ。
・課金しなければ楽しめないゲームアプリような「設計からして欠陥」のアプリ。
・度が過ぎるほど広告まみれのアプリや、長時間広告を見なければ使えないアプリ。
・子どもをだまして不良アプリをインストールするよう誘導するアプリ。
・新商品や値引きなどの通知を頻繁に行うアプリ。
・第三者にデータを販売するアプリ。
また、デ・イカザ氏はAppStoreのユーザーインターフェースについて、以下のような改善案を提示しています。
・有料アプリの試用期間をAppStore側で正式にルール化して、ユーザーが高額請求に直面するのを防ぐと同時に、まっとうなアプリ開発者が課金ワークフローに手間をかけずに済むようにする。
・「有料で機能のロックを解除」「サブスクリプションサービス」「仮想コインやアイテムの販売」など、課金内容を明示したラベルの新設。
・フィルタリング機能の向上。
・ユーザーから不正行為の通報を受け付ける。
デ・イカザ氏は「私は、開発者がAppStoreの審査プロセスに不満を抱いている理由を深く理解しています。私も開発者として、単純なミスを見逃したり、規制の限界に挑んだりして、AppStoreからのリジェクト(差し戻し)に苦しんできました」と述べて、AppStoreの厳格な審査に苦しむ開発者に理解を示しました。
しかし、その上でデ・イカザ氏は、「AppStoreにアクセスするデバイスは15億台もあります。大切なのは、15億人のアクティブユーザーの安全であって、500万人の開発者ではないはずです」と述べて、アプリ開発者に理解を求めました。
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