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「App Storeのアプリ審査はユーザーの利益になっていない」とティム・クックCEOに訴えるメールが話題に

by YunHo LEE

iOS向けアプリの配信プラットフォームであるApp Storeは、アプリ公開前に専門のチームが厳格な審査を行って、アプリに問題がないかどうかをチェックしています。そんなAppleのアプリ審査について、iOSアプリの開発者が「App Storeのアプリ審査は強力すぎである上に、ユーザーの利益になっていない」とティム・クックCEOに訴えるメールが発見され、インターネット上で話題となっています。

iOS evangelist giving up apps based on appreview team | 015127.pdf
(PDFファイル)https://judiciary.house.gov/uploadedfiles/015127.pdf


発見されたメールの日付は2015年1月25日となっており、メールの筆者である人物はiOSアプリの開発企業を運営しているとのこと。筆者は2008年の時点でウェブに見切りを付け、これからはアプリの時代だと信じて、iOSアプリを通じて人々の生活を改善するための開発に注力してきたと記しています。

iOSのソフトウェア開発キットすら存在しない時期から数年にわたってiOSアプリ開発を続けた結果、筆者の会社がリリースしたアプリは多くのユーザーにダウンロードされることとなりました。ところが、2014年にアプリの審査を行うApp Reviewチームが、会社の主力アプリを削除してしまったそうです。

筆者の会社はこれ以前にも、Appleがアフィリエイトプログラムのルールを変更したことに伴い、収益が半分以下になるという大きな痛手を受けていました。この際は「お金ではなくユーザーに提供するアプリこそが自分たちのコアミッションだ」という考えで耐え忍んだそうですが、肝心のアプリがAppleの手によって削除される事態は大きな衝撃だったとのこと。


レビューチームは、筆者のアプリが「他のアプリをオススメしている」という点が、App Storeの規則に違反していると指摘。健全なビジネスを進めてきたという自負がある筆者は困惑したそうですが、アプリをApp Storeで再公開するための修正に取り組みました。ところが、完璧に修正できたと思っても定型文により申請が却下されるばかりで、筆者はアプリの再公開をあきらめるしかなかったと記しています。

仕方なく筆者はかつて見切りを付けたはずのウェブに回帰しましたが、サービスをiOSアプリではなくウェブで提供することによるユーザーエクスペリエンスの低下や、リーチできるユーザー数の減少は免れないと主張。得られる収益もアプリよりはるかに少ないため、会社の規模を縮小せざるを得ないとメールには記されています。


筆者は自分たちのアプリがユーザーから高い評価を得ており、感謝のメールも数え切れないほど届いていたと主張しています。「AppleにはApp Reviewの役割について真剣に考えてもらいたいと思っています」「私にはApp ReviewがApp Storeの繁栄を助けるとは信じられず、ユーザーエクスペリエンスを妨げていると思います」と筆者は記し、App Storeのアプリ審査が大きな力を持ちすぎていることは問題だと訴えました。

このメールがインターネットで話題となった後、ソーシャルニュースサイトのHacker News上で、「mhafez17」というユーザーネームの人物がこのメールの筆者だと名乗り出ました。mhafez17氏は、Appleによって突然アプリが削除されてしまったのは自分たちだけではなく、多くの同業者がアプリ審査により多くの損害を被ってきたと述べています。

Wow. I am the author of this email. I have no idea how it resurfaced after 5 yea... | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=24190694


このメールを送信してから数年後、mhafez17氏は2009年から2016年までAppleでアプリの審査を担当してきたPhillip Shoemaker氏に話を聞く機会があったそうです。Shoemaker氏は、「あなたのアプリは別のアプリのダウンロード数を押し上げました。Appleは外部のソースがアプリの評価を上げることを望んでいません。ですから私たちは、全ての『アプリを推奨するアプリ』を排除しました」と回答。Shoemaker氏自身はこの方針を不公平だと感じていたそうですが、Appleの決定をShoemaker氏が覆すことはできなかったそうです。

また、アプリが排除される以前のmhafez17氏とAppleは、非常に良好な関係を築いていた模様。mhafez17氏はAppleが主催する新製品発表会などのイベントに招待され、App Storeの今後の取り組みについてiTunesチームと話し合ってきたとのことで、いきなりApple側の対応が180度変わったことは未だに理解できないと述べています。

Hacker News上ではmhafez17氏に同情的なコメントが寄せられる一方で、「なぜウェブを避けたのか?」「特定のプラットフォームだけに注力することは危険だ」といったコメントも寄せられています。こうした反応に対してmhafez17氏は、「今から考えると、iOSにこだわったことは明らかに間違いでした。私たちは若く、本当にApp Storeを愛していたのです」と述べています。当時はiOS上で独占的にアプリを提供することが強みになると思っており、まさかAppleがApp Storeのアプリを宣伝することに反対してくるとは思っていなかったとのこと。

なお、このメールはアメリカ合衆国下院司法委員会が進めているオンラインプラットフォームによる市場独占の調査の中で、Appleの市場独占に関する資料として公開されたもの。一体どういった経緯でこのメールがアメリカ合衆国下院司法委員会の手に渡ったのかはmhafez17氏にもわからないそうで、事前の連絡もなかったとのことです。

Online Platforms and Market Power | U.S. House of Representatives Judiciary Committee
https://judiciary.house.gov/online-platforms-and-market-power/

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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