サイエンス

偽造ウイスキーをボトルに入れたまま判別する手法が開発される


スコッチ・ウイスキーは世界中の多くの人々に愛されていますが、近年ではビンテージもののスコッチ・ウイスキーの需要増加に伴い、製造年数が偽造されたスコッチ・ウイスキーが市場で多く出回っています。偽造ウイスキーかどうかをボトルに入ったままの状態で判別する方法を、スコットランドにあるセント・アンドルーズ大学の研究チームが開発しました。

Through-bottle whisky sensing and classification using Raman spectroscopy in an axicon-based backscattering configuration - Analytical Methods (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/AY/D0AY01101K

It’s now possible to detect counterfeit whisky without opening the bottle | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/09/its-now-possible-to-detect-counterfeit-whisky-without-opening-the-bottle/


近年では希少なビンテージ・ウイスキーの偽造が横行しており、ウイスキーに含まれる炭素14という放射性同位体に着目して放射性炭素年代測定を行った2020年の研究では、調査対象となったボトルのうち半分以上がラベルに記載されているほど古くないことが判明。1863年製造とされていたボトルが、実際には2007年~2014年の間に蒸留された可能性があるとの結果も出たそうです。

核実験のおかげで「ビンテージ・ウイスキーは半分以上が偽造品」であることが判明 - GIGAZINE


こうした現状から、ビンテージ・ウイスキーの調査・鑑定などを行うRare Whisky 101の共同創設者であるDavid Robertson氏は、「1900年以前のものだとされているボトルは、それが本物だと証明されるまで『偽物である』と推定しておくことが、私たちの本当の信念です」とまでコメントしています。そこで科学者らは偽造ウイスキーの問題に対処するため、ウイスキーを化学的に分析する手法について研究しているとのこと。

水とオオムギ、または他の穀物が原料となっているウイスキーは、独特の色や香り、風味を構成する何千もの化合物を含んだ化学的に複雑な液体です。それぞれのウイスキーがどのように製造されるのか、どれほど熟成されたのかによって化学的特徴は異なるため、ウイスキーの化学物質を調査することで偽造ウイスキーを見抜けるのではないかと期待されています。


2019年には、スコットランドにあるグラスゴー大学の研究チームが、1辺が100nmしかない微細な金とアルミニウムの小片200万個を格子状に敷き詰めた「人工舌」と名付けられたセンサーを開発しました。

センサーの上にウイスキーなどの試料を垂らして光を当てると、金属片や金属片の表面に塗布された化学物質が、試料中の分子の種類に応じて微妙に異なる波長の光を反射します。この光の波長を分析してデータベースと照合することで、試料がどのような液体なのかを判別できるとのこと。研究チームが行った実験では、同じ蒸留所のウイスキーですが熟成年数や熟成に使用したタルが異なる3種の銘柄「グレンフィディック12年」「グレンフィディック15年」「グレンフィディック18年」を、全て区別できたと報告されています。

99.7%の精度で偽造ウイスキーを見抜ける「人工舌」が開発される - GIGAZINE


しかし、ウイスキーが本物かどうかを判別するためにウイスキーをボトルから出す必要があっては、購入前にウイスキーを識別することはできません。そこでセント・アンドルーズ大学の研究チームは、ボトルに入ったままのウイスキーを鑑定する方法について研究を行いました。

レーザー光を物質に照射して透過・反射・吸収される光のスペクトルから対象に含まれる成分を分析する分光法は、直接物体に触れなくても化学成分を調査できます。しかし、ボトルに使われているガラス自体がスペクトルを生成することから、内部の液体を分光法で調査することが難しいという問題があったとのこと。

研究チームはこの問題を解決するため、「円錐状のレンズを使ってレーザー光線を環状にしてボトルに照射し、ボトルの内部で光を集中させる」という手法を考案しました。これは以下の図Aのように、円錐形のレンズを通って環状になったレーザー光がレンズ(L2)を通過すると縮まっていき、数センチ先で収束する仕組みです。図Bを見ると、光の輪がレンズから離れるにつれて縮まり、やがて1点に集まることがわかります。


以下の図Aは、ウイスキーのボトルに当たるレーザー光をよりわかりやすく示したもの。ボトルの表面に当たった時点のレーザー光は環状ですが、ボトルの内部で光が集まることで、ガラスそのものが生み出すスペクトルの影響を回避できるとのこと。


この方法を用いることで、ウイスキーのボトルを開けることなく内部の化学成分を調査できるとのことで、ウイスキーの信頼性をテストする新たな手法として期待が寄せられています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
99.7%の精度で偽造ウイスキーを見抜ける「人工舌」が開発される - GIGAZINE

核実験のおかげで「ビンテージ・ウイスキーは半分以上が偽造品」であることが判明 - GIGAZINE

ウイスキー専門家は香りや味だけで高級なウイスキーを見抜けるのか? - GIGAZINE

スコッチウイスキーのエキスパートがアメリカ生まれのお買い得ウイスキーをレビューしたらこうなった - GIGAZINE

「伯爵のようにウィスキーを味わう方法」をリアル伯爵風のウィスキー専門家がコミカルに解説 - GIGAZINE

「ウイスキーに水を少し入れるとおいしくなる」と科学的に証明される - GIGAZINE

in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.