サイエンス

99.7%の精度で偽造ウイスキーを見抜ける「人工舌」が開発される

by exbowmore

まるで人間の舌のように偽造ウイスキーを見抜くことができる小型のセンサーが開発されました。このセンサーはウイスキーではないものを見抜けるだけでなく、ウイスキーの熟成年数や熟成させたタルの違いまで判別することで、その銘柄まで高い精度で特定することが可能だとのことです。

Whisky tasting using a bimetallic nanoplasmonic tongue - Nanoscale (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/NR/C9NR04583J

Scientists develop 'artificial tongue' to detect fake whiskies | Society | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2019/aug/06/scientists-develop-artificial-tongue-to-detect-fake-whiskies

Artificial 'tongue' can distinguish between whiskies
https://phys.org/news/2019-08-artificial-tongue-distinguish-whiskies.html

近年のウイスキー人気の高まりに伴い、市場に出回る偽造ウイスキーも増加しています。希少ウイスキーの評価や販売を手がける仲介業者Rare Whisky 101の調査によると、市場に流通していたビンテージもののスコッチウイスキー55本のうち21本は、ラベルに記載された年代とは別の年代に蒸留された偽造ウイスキーだったとのこと。

この調査では高度な放射性炭素年代測定法が用いられましたが、イギリスのグラスゴー大学工学部のアラスデア・ウィリアム・クラーク氏率いる研究チームは、携行可能な小型のセンサーでウイスキーの銘柄や熟成年数を判別できる技術を開発しました。

センサー部分の拡大モデルを掲げるクラーク氏。


クラーク氏が「人工舌」と名付けたこのセンサーの表面には、1辺が100nmしかない微細な金とアルミニウムの小片200万個が格子状に敷き詰められています。その上にウイスキーなどの試料を垂らして光を当てると、金属片や金属片の表面に塗布された化学物質が、試料中の分子の種類に応じて微妙に異なる波長の光を反射します。この光の波長を分析してデータベースと照合し、試料が一体どんな液体なのかを特定するというのが、「人工舌」のメカニズムです。

「人工舌」は特定の化学物質を検知することはできませんが、液体中に含まれる物質の違いは極めて高い精度で判別することが可能です。クラーク氏が行った実験で人工舌は、同じ蒸留所のウイスキーでありながら、熟成年数や熟成に使用したタルが異なる3種の銘柄「グレンフィディック12年」「グレンフィディック15年」「グレンフィディック18年」をすべて区別することができたとのこと。

by eitamasui

これについてクラーク氏は、「私たちの舌はコーヒー中の成分の名前は分かりませんが、コーヒーの味の違いは分かります。それと同じ原理です」と説明し、各ウイスキーの銘柄に含まれる香り成分である芳香族化合物の種類や量のわずかな違いを検知しているのではないかとの見解を述べました。

スコッチウイスキーの業界人で組織されたイギリスの団体Keepers of the Quaichのアナベル・ミクル氏は「うちのマスターブレンダーがはだしで逃げ出すとは思っていませんが、偽造ウイスキーの撲滅に寄与する新発明には心底感謝しています」と語っています。

「人工舌」は既に登録した液体を高精度で検知することが可能なので、ウイスキーの鑑定だけでなく、食品の品質検査や毒物の特定、河川の水質検査に至るまで、幅広い用途に応用することが可能だとのことです。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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