サイエンス

スマホで自撮りするだけで簡単に血圧を測定する技術が開発される

by laura6

血圧はさまざまな病気や健康状態に関連する重要な人体の指標であり、正常範囲を超えた高血圧は生活習慣病の一つに数えられています。そんな血圧を手軽に測定するため、「スマートフォンのカメラで自分の顔を撮影する」だけで血圧を測定する技術が研究者によって開発されました。

Smartphone-Based Blood Pressure Measurement Using Transdermal Optical Imaging Technology | Circulation: Cardiovascular Imaging
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCIMAGING.119.008857

Preventative health at your fingertips: U of T researchers accurately measure blood pressure using phone camera
https://www.utoronto.ca/news/preventative-health-your-fingertips-u-t-researchers-accurately-measure-blood-pressure-using

トロント大学のオンタリオ教育学研究所で応用心理学教授を務めるカン・リー氏とポスドク研究員のポール・チャン氏は、もともと非接触のウソ発見器の開発を行っていました。リー氏らは経皮光学イメージング(TOI)という手法を用い、人間がウソをついているかどうかを見分けるシステムを作ろうとしていましたが、ある時「自分たちが開発しているシステムを、血圧の測定に利用できるのではないか?」と気づいたとのこと。

血圧が基準を大きく外れていると、心臓発作や脳卒中といった健康上の問題につながる可能性が高くなり、簡単に血圧が測定できるようになれば多くの人々にとって利益となります。「ウソ発見器は少数の人にとってのみ有益ですが、血圧の測定はより多くの人々に利益をもたらします」とリー氏はコメント。2人はTOIをウソの検出ではなく、血圧測定のために利用する方法を探り始めました。

TOIは顔の皮膚が半透明性を持っている点に着目しており、光が顔に当たった際に皮膚を透過し、血管内に流れる血液に含まれる赤色のヘモグロビンに当たって赤色光が反射されることを利用しています。スマートフォンで顔を撮影し続けることで、スマートフォンに搭載されている光学センサーがヘモグロビンからの赤色光をキャッチし、皮膚の下の血流を測定できるそうです。

by qimono

研究チームは開発したシステムの有効性を実証するため、合計で1328人のカナダ人および中国人の成人を被験者にした実験を行いました。被験者らは2分にわたってiPhoneで自身の顔をムービー撮影し、リー氏らが開発したシステムで血圧を測定しました。システムによる測定結果は既存の血圧測定装置の結果と照合され、どの程度正確だったかをチェックしたとのこと。

その結果、研究チームが開発したシステムは95~96%の精度で収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧を測定することができたと判明。リー氏は「新たに開発されたテクノロジーでキャプチャされたムービーから、顔のさまざまな部分でどのように血液が流れているのかを見ることができます」と述べています。


リー氏らの開発したシステムを紹介したムービーがこれ。

Preventative health on an app: U of T researchers measure blood pressure using a phone camera - YouTube


人々が行うべき操作は、自分の顔をスマートフォンで撮影するだけ。


TOIを利用すると、皮膚の下の血流を検出することが可能で……


血流の変動から血圧を測定できます。


スマートフォンによる血圧測定は非常に実用的なシステムであることから、リー氏はトロント大学や起業家のマルツィオ・ポッツォーリ氏らと協力して、Nuralogixというスタートアップ企業を設立しています。すでにNuralogixはリー氏らの開発したシステムをもとに「Anura」という血圧測定用のスマートフォンアプリを開発・リリースしており、記事作成時点でAnuraは30秒間のビデオ撮影からストレスレベルおよび安静時心拍数を測定可能とのこと。2019年秋には、血圧測定を含む中国語版アプリもリリースする予定だそうです。


スマートフォンアプリによる手軽な血圧測定を可能にすることで、医療へのアクセスが限られている人々に医療サービスを提供することができます。リー氏はヘルスケアアプリに関してはデータのプライバシーが重要だと指摘し、Anuraは人々が撮影したムービーから測定結果だけをクラウドに送信し、ムービーそのものはクラウドに収集されないようになっているとのこと。


スマートフォンによる血圧測定は非常に便利なものですが、リー氏らはTOIによる測定精度を向上させるためにさらなる研究が必要だとしています。現段階での調査サンプルには極端な高血圧の人や低血圧の人は含まれておらず、被験者の肌の色も極端に色の暗い人や白い人がいなかったため、より多様な人々を調査することで正確性が向上するとリー氏は主張。その一方で、かなりの高血圧でありながら薬を服用していない患者を探すのは困難であり、高血圧の人に「測定前には高血圧の薬を飲まないでください」とお願いすることも倫理的に不可能であるため、適切な調査対象を見つけるのは少々難しいとの見方を示しました。

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in モバイル,   ソフトウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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