核実験のおかげで「ビンテージ・ウイスキーは半分以上が偽造品」であることが判明

by alexbowmore

スコットランドで製造されるスコッチ・ウイスキーは世界中で大きな人気を集めていますが、中でも数十年以上昔に製造されたビンテージもののスコッチ・ウイスキーは、コレクターの間で非常に高値で取り引きされています。そんなビンテージ・ウイスキーを炭素放射性同位体を用いて分析した結果、「多くのビンテージ・ウイスキーはラベルの表示ほど古くない偽造品」であることが判明しました。

USING CARBON ISOTOPES TO FIGHT THE RISE IN FRAUDULENT WHISKY | Radiocarbon | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/radiocarbon/article/using-carbon-isotopes-to-fight-the-rise-in-fraudulent-whisky/75071F4AB4D7A231B714102B0FE8F5C6

Nuclear fallout reveals fake 'antique' whisky | Live Science
https://www.livescience.com/nuclear-bomb-carbon-fraudulent-whiskey.html


近年、スコットランドの単一の蒸溜所で作られたモルト(麦芽)100%のシングルモルト・ウイスキーのビンテージ品が、オークションで強い人気を集めています。2018年にはイギリスだけで10万本以上のビンテージ・シングルモルト・ウイスキーが出品され、落札価格の合計額は4900万ドル(約54億円)を突破。中でも、1926年製の「Macallan Valerio Adami」は110万ドル(約1億2000万円)以上の価格で落札されたとのこと。

The Macallan Valerio Adami 1926 Sets Record at Bonhams Auction – Robb Report


ビンテージ・ウイスキーの人気上昇と同時に浮上した問題が、「製造年が偽造されたビンテージ・ウイスキーの急増」です。主に19世紀~20世紀半ばまでの製造年をうたっている偽造ウイスキーは買い手だけでなく、オークションハウスや小売業者、蒸留業者、ブランドの所有者に対しても悪影響を及ぼします。その一方で、ウイスキー業界には製造年を偽造した製品を識別するための正確な分析手法がなく、たとえ本物のビンテージ・ウイスキーであっても、製造された真の年を識別することができないとのこと。

「投資目的によるこれらの希少な製品への購入意欲が急上昇しているため、検出が難しい不正な製品が増加しています」と、スコットランド大学連合環境研究センター(SUERC)の研究チームは指摘。そこでSUERCの研究チームは、ウイスキーに含まれる炭素14という放射性同位体を用いた放射性炭素年代測定を用いることを考案しました。

1950年代~1960年代に行われた一連の核実験により、炭素の放射性同位体である炭素14が大気中に放出されました。放出された炭素14は植物や生物に吸収され、生物が死んだ後も一定の割合でゆっくりと減り続けます。ウイスキーを作るために収穫されたオオムギの中にも炭素14は存在しているため、製造されたウイスキーに含まれる炭素14の量を測定することで、ウイスキーが製造されたおおよその年代を特定できると研究チームは主張しています。

by MabelAmber

研究チームは収穫された大麦が数年以上にわたって備蓄される可能性を考慮し、「正確な蒸留年がわかっている1950年~2015年に製造されたウイスキー」に含まれる炭素14の量をデータ化し、測定の基準にしたとのこと。

そして、実際に研究チームが1847年~1978年に製造されたとされているビンテージ・ウイスキーを調査した結果、なんと半分近くのボトルがラベルに記載されているほど古い年代のものではないことが判明。たとえば1863年に製造されたとされていた1本のウイスキーは、実際には2007年~2014年の間に蒸留された可能性があるそうです。

研究チームは「私たちの実験から、かなりの数の偽造ウイスキーが販売されていることが示唆されました」とコメントし、ビンテージ・ウイスキーを購入する際には注意が必要だと述べました。

by Piotr Miazga

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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