AmazonのAudibleにおけるデジタル著作権管理をSF作家が批判

SF作家のコリイ・ドクトロウ氏は、自身の小説「Attack Surface」のオーディオブックを販売するため、Kickstarterでプロジェクトを開始し資金を募りました。プロジェクト立ち上げの理由はAmazonのAudibleにおけるデジタル著作権管理(DRM)に関する規約に問題があったためで、ドクトロウ氏はAudibleとDRMを痛烈に非難しています。

Attack Surface: audiobook for the third Little Brother book by Cory Doctorow — Kickstarter
https://www.kickstarter.com/projects/doctorow/attack-surface-audiobook-for-the-third-little-brother-book

DRMはオーディオブックを含むデジタルコンテンツの海賊版作成防止のため、オリジナルデータを特定のソフトウェアまたはハードウェア以外で再生できなくするシステムです。DRMが適用されたコンテンツは、特定のプラットフォーム以外で配信したり利用したりすることができなくなります。なお、DRMが適用されたデータから故意にDRMを解除したり、解除のためのツールを提供したりすることは違法です。

AmazonのKindleでは電子書籍にDRMを適用させるかどうかを出版社側が決定できるそうですが、Audibleで配信されるオーディオブックにはすべてDRMが適用されるため、同じオーディオブックのデータを他のプラットフォームで販売・配信することができなくなるとのこと。AudibleにおけるDRMの規約について、ドクトロウ氏は「私たちは、販売されている製品をどのように使うかを一方的に決められてしまうような世界では生きてはいけません」とコメントしています。

また、ドクトロウ氏がTwitter上で独自のオーディオブックを制作するためのKickstarterプロジェクトを発表した際、ドクトロウ氏は「私は1万の太陽の熱でDRMを憎んでいます。DRMはセキュリティとプライバシーの悪夢であり、独占主義者の親友であり、人権への総体的な侮辱です。知っているかもしれませんが、AudibleはDRMがない限り、オーディオブックを提供することはできません」と述べています。

ドクトロウ氏が2020年9月8日にKickstarterで開始したプロジェクトは、記事作成時点で4400人以上の支援者から目標額の7000ドル(約73万円)を超える19万7496ドル(約2074万円)を集めることに成功しています。ドクトロウ氏は「プロジェクトの成功の一部は、Amazonに対する人々の警戒心に起因しています」と語っており、支援者を1万人集めることを目標としています。

一方、ジャーナリストのスティーブン・メレンデス氏は、「ドクトロウ氏のプロジェクト成功の要因は、彼がベストセラー作家であり、インターネット上ではよく知られた活動家であり、何十年にもわたってブロガーとして活動してきた名声によるものです」と分析しました。

ドクトロウ氏がコンサルタントを務める電子フロンティア財団は、「DRMによるデータの保護は、プリンターや自動車のようなハードウェアの修理や部品の製造を行う人々の能力を低下させ、著作権で保護された作品へのアクセスに依存する研究や芸術を制限し、合法的に購入したコンテンツにアクセスしようとする消費者の迷惑になる一方で、深刻な海賊行為を止めるためにはほとんど役に立ちません」と主張しています。なお、メレンデス氏によると、財団の主張に対して「DRMは作家やアーティスト、映画製作者などの産業の収益を大幅に削ってしまうような海賊版の横行を防ぐために必要です」という反論が多く上がっているとのこと。

ドクトロウ氏がKickstarterの支援で制作した小説「Attack Surface」のオーディオブック版は、Amazon以外にもバーンズ・アンド・ノーブルなどの書店で入手可能となっています。