木材をゴムのように弾力性がある素材に変える方法が開発される
木材は建材や家具などに広く用いられており、比較的軽くて断熱性も高いという特性を持っています。近年では木材を粉砕・圧縮して鋼以上の強度にする方法も開発されていますが、メリーランド大学カレッジパーク校の研究チームは新たに「木材をゴムのように弾力性がある素材に変える方法」を開発しました。
Highly Elastic Hydrated Cellulosic Materials with Durable Compressibility and Tunable Conductivity | ACS Nano
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.0c04298
Chemistry in Pictures: Elastic wood
https://cen.acs.org/materials/biomaterials/Chemistry-Pictures-Elastic-wood/98/web/2020/09
研究チームが開発した木材を基にした素材がどれほどの弾力性を持っているのかは、以下のGIF画像を見るとよくわかります。
.@LiangbingHu and his lab have made an elastic wood with rubber-like proprieties that make it perfect for bouncing like a ball. Check out the procedure in the latest #CENChemPics: https://t.co/ZnNtxznhhX pic.twitter.com/l5BUhSVYRk
— C&EN (@cenmag) September 13, 2020
ゴム手袋がつかんでいる物体は、一見するとキューブ型の木材のようですが……
グッと指に力を入れると変形して押しつぶされました。また、物体の内部からは水がにじみ出している模様。
指の力を抜くと元どおりになり、弾力性があることがわかります。
また、研究者が素材を床に投げつけてみた様子がこれ。
— fiik (@fiikster) September 14, 2020
頭より高い位置に球形の素材を掲げて……
地面に向けて投げつけます。
普通の木材であれば床にぶつかって転がるところですが……
この素材はまるでスーパーボールのようにはねました。
素材は研究者の頭の上まではねており、非常に高い弾力性があることがうかがえます。
Liangbing Hu特別教授の研究チームが開発したこの素材は、バルサ材を水酸化ナトリウムと亜硫酸ナトリウムの溶液で数時間煮沸し、数日間にわたって凍らせた後で、さらに1日間ほど凍結乾燥させることで作成可能だとのこと。
この手順により、細胞壁内部にあるリグニンとヘミセルロースの長い分子鎖を科学的に切断し、木材の堅い構造を破壊できます。すると木材の細胞壁が薄くなると同時に繊維を構成するフィブリルが放出され、木材が軟らかくなり、内部に水を吸収させることでゴムのような弾力性を獲得できるそうです。
弾性を獲得した木材は1万回の圧縮サイクルにも耐えることが可能であり、素材の圧縮率によって導電性を調整することもできるとのこと。研究チームは、木材に弾性と電導性を持たせることによって用途が広がると考えており、センサーやソフトロボット、人工筋肉、エネルギー貯蔵技術などに応用することができると主張しました。
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