1万度の超高温にも耐える幻の新素材は家庭にあるもので簡単に再現できるという実験ムービー
イギリスのアマチュア化学者が発明した素材「Starlite」は、軽量かつ丈夫で加工しやすい上に、1万度の超高温にまで耐えることができる夢の断熱素材として期待されました。しかし、StarliteはNASAや多くのテクノロジー企業から注目を集めたにも関わらず、その製法を明らかにしないまま発明者は他界したため、今では幻の超素材となっています。そんなStarliteを台所にあるようなものから再現して実証するムービーが公開されています。
This YouTuber Creates the Almost Indestructible Supermaterial, Starlite in his Kitchen
https://interestingengineering.com/video/this-youtuber-creates-the-almost-indestructible-supermaterial-starlite-in-his-kitchen
Starliteの超性能が一発でわかる伝説のムービーがコレ。
Maurice Ward Starlite The Great Egg test - YouTube
生卵をStarliteで覆い、ガスバーナーであぶります。
Starliteの表面は黒く焦げていきますが、卵そのものには異変がありません。
5分ほどガスバーナーの火であぶり続けたあと、卵を手に取って……
バターナイフで割ります。
高温のガスバーナーの炎を5分以上浴びたにも関わらず、卵白は一切変性しておらず、生の状態を保っています。
殻の内側に固形化した卵白がついている形跡もなく、Starliteが完全に熱を遮断して卵を守っていたことがわかります。
Starliteを発明したイギリスのMaurice Ward氏がイギリス・BBCの取材を受けてこの実験を公開したところ、NASAや技術企業から一気に注目を集めました。しかし、十分な報酬を支払わずにWard氏から権利だけ奪おうとする企業がいくつも現れたことから、Ward氏はStarliteの合成レシピは誰にも渡さないことを決意。そのStarliteのレシピを明らかにしないまま、Ward氏は2011年に亡くなりました。Starliteは「もし合成レシピが公開されていれば、人類の歴史は塗り変わっていたかもしれない」とまでいわれる幻の新素材となりました。
そんなStarliteと同程度の断熱効果を持つ素材がキッチンにあるものから再現可能だという驚きの実験を、YouTuberで発明家のBen Cusick氏が実際にムービーで行い、Starliteっぽい素材の作り方も解説しています。
A Super-Material You Can Make In Your Kitchen (Starlite?) - YouTube
Cusick氏が手にしている白い粘土のようなものが、Starliteを再現した新素材のパテです。
このパテを薄く伸ばして左手の上に広げ……
そのままプロパンガスバーナーであぶっていきます。
普通であれば手は大やけどしてしまうはずですが、Cusick氏はケロリとした顔で手の上にあるパテをバーナーであぶり続けています。
しばらくあぶり続けてガスバーナーの火を消すと、黒く焦げたパテの表面からは白い煙がもくもくと上がっています。
そしてすぐにあぶっていた部分を右手でタッチ。ほんの1,2秒前までガスバーナーの火が当たっていた部分なのでめちゃくちゃ熱いはず……と思いきや、「触ると冷たい」と言いながら平気な顔をしてぺちぺちと素手で触れています。
この新素材の材料は重曹(炭酸水素ナトリウム)・コーンスターチ・接着剤で、どこの家庭にもあるようなものから作ることができるとのこと。
作り方はとても簡単。まずコーンスターチをカップに半分ほど加えます
そして、コーンスターチの10%ほどの量の重曹を加えます。
そこに接着剤を少しずつ加えながら、混ぜていきます。
最初は粉っぽいですが、接着剤を増やして混ぜ続けると……
素材のパテがまるで粘土のような質感になっていきます。これでパテの完成。
本来であれば、このパテを塗ってから乾燥させて、接着剤の水分をしっかりと蒸発させる必要があるとのこと。しかし、水分を含んだ粘土のような状態でも十分に耐熱性が示されるとのこと。例えば練ってすぐのパテを薄いプラスチックコップに貼り付けてバーナーであぶると、パテの周囲は熱で溶けて変形してしまいますが、パテを貼った部分はほとんど変形していないことがわかります。
バーナーの炎が当たるパテの表面をよく見ると、まず表面が黒く焦げ付き、まるで泡が浮き出るように表面がガスで大きく膨らんでいます。コーンスターチが燃えることで炭素になり、パテ中の炭酸水素ナトリウムが熱分解して二酸化炭素が発生します。内部から発生した二酸化炭素が空気を追い出してしまうため、炭素は酸素と結びつくことができません。全元素の中で融点が最も高い炭素と二酸化炭素によるコーティングがこれほどまでに高い断熱効果を生むとCusick氏は解説しています。
今度はWard氏と同じように、コーンスターチと重曹と接着剤で作ったパテで生卵を覆い、ガスバーナーであぶっていきます。
すると、黒く変色したパテの表面が炎の中でゆっくりと盛り上がっていきます。
しばらくバーナーであぶり続けてから火を止めると、卵に貼り付けた新素材がまるで焼いた餅のようにぷっくらとふくらんでいます。
この卵を割ってみると、Ward氏によるStarliteの実験と同様、中身は見事に生卵のままでした。
なお、このStarliteっぽい素材自体はとても簡単に作ることができますが、自分の手にめがけてガスバーナーを噴射するようなことは非常に危険なので絶対にやらないよう、Cusick氏は注意を呼びかけていました。
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