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AIによって新素材の発見が爆速&効率化、いずれは「AIやロボットだけで実験する未来がやってくる」

By UCL Mathematical & Physical Sciences

材料科学の分野では、過去数百年もの間、科学者は試行錯誤や運、偶然などの要因で新しい素材を発見してきました。しかし、人工知能(AI)の登場により、新しい素材を発見するプロセスが省略されつつあるため、将来的に大きく進歩することが期待されています。

How AI is helping us discover materials faster than ever - The Verge
https://www.theverge.com/2018/4/25/17275270/artificial-intelligence-materials-science-computation

過去の材料科学の研究者たちは新しい化合物を作成するときに、過去の実験で得た経験や直感に基づいて材料を混ぜ合わせ、何が形成されるかをよく観察するという方法をとっていました。しかし、2018年現在では、経験的な知識や直感を使用する代わりに、データベースやコンピューターによる演算処理が使用されるようになりました。これにより、どの材料を組み合わせれば、どんな素材が生成できるかを予測できるようになり、効率的に素材を作り出せるようになったそうです。


材料科学の分野でAIを活用した例として最初に挙げられるのが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のニコラ・マルザリ氏らの研究です。マルザリ氏らは、グラフェンのような素材を見つける為に化合物のデータベースを使用しました。マルザリ氏らが発表した論文によると、研究で使用されたAIは、データベースに登録された10万以上の素材から、約2000の材料に絞り込むことに成功しています。

また、ノースウェスタン大学のクリストファー・ウォルバートン氏らの研究チームが発表した研究では、金属ガラスの生成にAIを使用して、素材発見までのプロセスを200倍も高速化する方法を発見しました。共同研究者であるスタンフォード大学のアプルヴァ・メータ氏は、「AIの学習アプローチは『人々が新しい言語を学ぶ方法』と似ている」と説明しています。通常、新しい言語を学ぶときの方法には「文法の規則を学ぶこと」と「誰かの話を聞くこと」の2つありますが、研究チームが使用したAIは、この2つのアプローチで学習しているとのことです。

AIに学習させるため、研究チームはまず最初に、さまざまな種類の金属ガラスを作るレシピを公開されている過去の論文から調査し、集めたレシピを「文法規則」として機械学習アルゴリズムに取り込みました。すると、このアルゴリズムは、素材のどの組み合わせが新しい金属ガラスを作り出すかを独自に学習を始めるようになったとのこと。メータ氏によると「このアルゴリズムが行う自己学習こそが『フランス語を学びたいから、フランスに行って現地で語学力を向上させる』という方法に似ている」と述べています。


AIを使用することで一度に何千もの素材を合成し、テストすることが可能になりましたが、「周期表の全ての組み合わせを試すことは、時間がいくらあっても足りません」とウォルバートン氏は話しています。この研究において、AIの役割は「新しい素材を発見することではなく、研究者が調査する範囲を絞り込む」ということでした。このため、機械学習が万能であることを裏付けるものではありませんが、AIからの提案により、研究チームが新しい金属ガラスを発見することができたのは間違いありません。

AIの登場により、材料科学の未来は有望なように見えますが、まだ課題が残っています。マルザリ氏は「コンピューターの予測には誤差があり、現実世界を考慮しない単純なモデルで予測を行います」と語っています。本来であれば、温度や湿度によって化合物の性質が変わることがあるものの、使用されている機械学習アルゴリズムには、これらの情報を含めることができないという技術的な問題があるそうです。

また、ウォルバートン氏は、もう1つの課題として「研究者が全ての化合物について、十分なデータを持っていないこと」を挙げています。つまり、機械学習アルゴリズムが優れていたとしても、そもそものデータが欠如しているため、正確な結果が得られるわけではないわけです。しかし、これらの課題を完全に克服できれば、「人間が実験に参加せず、AIやロボットだけで実験する未来がやってくるでしょう」とウォルバートン氏が語っています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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